映画「ホームレス ニューヨークと寝た男」と自分のいる場所

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マーク・レイ、52歳、職業はファッション・フォトグラファー。そしてニューヨークで暮らすホームレス。これがドキュメンタリー映画「ホームレス ニューヨークと寝た男」の主人公。

映画の日だったので、何を観るのか悩んでいました。ところが、先日たまたま厚木を訪れたときに、この映画のポスターを見て、興味が湧いてきました。ニューヨークで暮らす、スタイリッシュなホームレス。

さぞかし颯爽としたいい男なんだろうかと思っていましたが、期待は大きく裏切られることになりました。

まだ上映している映画館もいくつかあるようですので、あまりネタバレしないように感じたことをお伝えします。もっともネタバレして困るようなことは何ひとつありません。ただのドキュメンタリー映画ですから。

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信じられないようなことも起こりませんし、ただニューヨークでホームレスをしながら生きている1人の男について映画にしたものが、「ホームレス ニューヨークと寝た男」です。

映画のパンフレットにはこう書かれています。「自由を追求したら、家は必要なくなっていた」わたしが惹かれたのはこの一文でした。ところが、映画の中でのマーク・レイは、自由の中にある不自由さに苦しんでいるように、わたしには見えました。

そして強く感じたことは、わたしとそれほど変わらないなということです。

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ニューヨークでホームレスをしながら、ファッション・フォトグラファーをする。そんな生き方だけで、とても奇抜で面白い生き方をしているのかと思ってしまいましたが、彼はいたって真面目に生きています。

ホームレスであることに対して、強い思い入れがあるわけではありません。

ニューヨークという街で生きていくための選択肢のひとつとしてそれを選んだだけで、家賃2万円のアパートを選んだわたしと変わりません。彼もわたしもミニマリストではなく、生きるために必要なことを選んだ結果、最小限に近い生活をしているに過ぎません。

いつだってこの生活を抜け出したいと思っていますし、このままでいいと思っているわけでもありません。ただ、目の前にある自由な暮らしに満足していますし、足りないものなんて何ひとつないことを理解しています。

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自分に自信がない。

映画の中で彼の言葉です。和訳しているので、実際にどのような英語の表現だったかはわかりません。ただ、この感覚に対して、わたしは共感するものがありました。

わたしも自分に自信がありません。でも、書き物の仕事をするときに不安になることはありません。マラソンを走るときに、いい走りができないかもと不安になることもありません。

きっと彼も写真を撮るときや、俳優の仕事をするときに不安になったりはしないはずです。

でも彼は「自信がない」と言う。そして彼は「愛している」と言葉にしたことがないと言います。彼は自分自身の言動に対しては揺るぎないものを持っていますが、自分に相対する人に対しての自信がないのかもしれないと、わたしは感じました。

それはわたし自身がそうだから。

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わたしも人を好きになることはあります。むしろ女性に対しては惚れっぽいところがあります。でもそれは愛ではありません。好きになることはあっても、愛するということがない。いや、愛するということの意味がわからないのかもしれません。

そして自分が愛されるべき人間であることに対しては、自信がありません。きっとマーク・レイもそう言いたかったのでしょう。愛される自信がないから、愛することができない。

ホームレスを選んだことも、その延長線上にあるのかもしれません。

愛される自信がないなら、愛されない理由があればいい。言葉にすることはなくても、ホームレスであるという事実は愛されない理由としては十分すぎます。少なくともマーク・レイの中では。

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映画の中で彼は何度もとても悲しい目をしています。

自由な生き方をしているのに、どこか満たされないライフスタイル。いつか終わりのやってくるホームレスとフォトグラファーを両立させている現状への不安。

もしかしたら、わたしもそんな目をしているのか、それともマーク・レイと同じような年齢になったときに、その悲しい目の理由を理解できるのか。わたしのこのライフスタイルの未来と、マーク・レイの生き方が重なります。

「ホームレス ニューヨークと寝た男」の最後に彼は、ホームレスの生活を終わりに限界を感じ、終わらせたいと言います。それはわたしにとって、強いメッセージになります。

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愛されない理由を作るために、そこに留まってはいけない。

もちろんいまさら堅実な生き方をしようとは思いませんが、いまいる場所は生きている証を手にするための通過点に過ぎない。そう感じられたことは、とても意味のあることでした。

たった一本の映画で人生が変わるなんてことはありません。それでも間違いなく得られたものがあります。

そしてもうひとつ、「家がなければ生きていけないわけではない」その事実はわたしの中にある「旅人」という生き方の種にたくさんの栄養を与えてしまったかもしれません。


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