目の前の暗闇に向かってわたしは大きくジャンプした

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「あざといな」と自嘲する。

泣きたかったことに気づいてたとき、映画に行くことを決めていた。涙を流すために映画を観る。 これをあざといと言わずに何をあざといと言うのだろう。

それで構わなかった。 心の中をまっさらな状態にしておく必要があった。

泣きたいのだと気づいたとき、すでに重いものがすっと消えていくのを感じたが、それは一時停止に過ぎない。 きちんと終わらせないと、次の一歩を踏み出すことができない。

この1週間は本当に酷いものだった。言葉が上手く繋がらない。1文書くたびに自分の不甲斐なさに苛立つ。たったひとつの文章すら書くことが出来ないことへの不安。 それでも締め切りはやってくる。

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とにかく請けた仕事だけはこなしていかなくてはいけない。

クライアントには申し訳ないと思うから、何度も書き直す。 普段は1度書いた文章を消すようなことはほとんどしない。それがわたしのスタイルだし、文章は直せば直すほど勢いとリズムが失われる。

でも、今回ばかりはそうも言ってられない。書き直しをしないと、何を言いたいのかまったく伝わらない駄文になる。

もしかしたらこれがスランプというやつなのかもしれない。ただ、難しくは考えないように、とにかくリラックスしてキーボードに文字を打ち込む。

いつまでこの状態が続くのだろうと考えはしたが、それすら意味のないことに感じて、時間の流れに身を任せる。 わたしの状態がどうであれ、やるべきことは際限なくあるのだ。

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貧乏人に暇を与えてくれるほどアベノミクスは優しくない。

朝起きて機械的に走りに行き、戻ってきてMacと向き合って仕事をし、夕方になるとまた走りに行く。まるで精密に作られたアンドロイドのような生活。やることなすこと 面白みはなかったが耐え続ける。

出口は必ずあるはずだから。

そんな状態で宇多田ヒカルの懐かしい曲を耳にした。独特な言い回しとリズムの向こう側にある哀しさが、一条の光となってわたしの心に差し込んできた。

あぁ泣きたかったのか。

何曲か聞いたところでそれに気づいた。

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人間には喜怒哀楽がある。喜びがあれば悲しみがある。喜びばかりが続かないように、悲しみばかりも続かない。 当たり前のことなのに、会社を辞めて2年半、わたしは哀しみと怒りを自分に禁じていた。

どうせ生きるなら笑って過ごそう。喜びのために努力をしよう。 そんな自分が嫌いじゃないし、自分に酔っていたのだろう。ポジティブさを前面に押し出し、陰の部分はグッと心の奥底に閉じ込める。

閉じ込めた量が、わたしの心の許容量を超えてしまえたのだろう。心は四次元ポケットではない。喜びも悲しみも閉じ込めておける量には限界がある。 そして、その許容量を超えると暴走し始める。

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映画を観ても、涙が流れることはなかった。何度も目の前の景色が歪むところまではいったが、そこから溢れ出すことはなかった。

あまりにも久しぶり過ぎて、泣き方を忘れてしまったのかもしれない。 ただ、内臓を掴まれてかき回されているような感覚に支配されている。気分はそう……悪くない。

吐き気があり、胸を締め付けられている。でも嫌ではない。かすかに懐かしさすら感じることができる。

もう大丈夫。

キーボードの前で言葉が繋がらないと嘆いている自分はもういない。胸の不快感を抱えて、わたしは目の前の暗闇に向かって大きくジャンプした。

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どこに着地するのかがまだ分からない。

でもきっと、これからは悲しみも怒りも溜め込むことはない。まずいかなと感じたときは、また涙を流すために映画館に来ればいい。きっと今度は上手に泣けるだろう。


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