本質を見失った映画じゃ心は動かない「サムライマラソン」

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鹿児島マラソン前にサムライマラソンを観てきました。期待値が高すぎたからか、観終わってからのモヤモヤが止まりません。何が引っかかっているのかを整理するために、ブログにまとめてみました。

ちなみに、ネタバレになる可能性もありますので、これからサムライマラソンを観るという人は読み進めないでください。

サムライマラソンは史実に基づいた創作とのこと。これが誤解を招いていそうですが、史実としてあるのは、江戸時代の安中藩でマラソンが行われたということだけです。

この映画のようなことが実際に起きたわけではなく、隠密とかお姫さまの脱走などはすべて創作なのでしょう。それくらいならよくある話です。

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創作ならまあいいかと思うわけです。だってそれが映画というものですから。でも史実に基づくなら、守らなくてはいけないルールがあります。

わたしが引っかかたのがこの映画で鍵になる関所。脱走したお姫様はなんとかして関所を通過して江戸に向かおうとします。遠足のシーンでも関所が出てきますし、江戸からの刺客も関所を抜けてきます。

で、この映画の世界で安中藩はいったいどこにあるんでしょう。少なくとも、安中から江戸の間に峠はありませんし、関所があるのは京都側。そして安中の遠足は京都側にある碓氷峠を走ります。

映画を観ている間ずっとこれが引っかかっていました。創作だからいいじゃないかと思うかもしれませんが、だったら安中藩を持ち出さなければいいわけです。江戸時代のどこかの藩という設定でいいわけです。

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原作を読んでいないので、原作に忠実なのかそれとも映画化するときに変わったのかは分かりません。ただ、ここまで現実に背いた設定をされると、さすがにモヤモヤ感が高まります。

ナンバ走りについても、少し触れていましたが、ナンバ走りがどんなものなのか誰も知らないのに、それっぽく言うことにも違和感があります。これは映画に限ったことではないのですが、わたしは「これがナンバ走り」と言う人を信用しません。

「私なりの解釈ですが」のひと言があれば別ですが、本物が何かを知らないのに、あたかもそれが本物かのように伝える。この国ではそれを「不誠実」と呼びます。

本物があるか分からないなら触れなければいい。深みを持たせるために捏造するのは、情報発信をするものが絶対にしてはいけないことです。それが例えエンターテイメント性を追求した映画であっても。

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一事が万事と言いますが、そこまではまあ創作だからと思って楽しんでいましたが、不誠実であると感じたら、わたしの性格上もうどうしようもありません。やることなすこと、デタラメに感じてしまうわけです。

2時間という限られた時間の中に詰め込むわけですから、どこかで無理が出るのは仕方がないこと。でも、それは映画を作る側の理屈であって、観る側はひとつの作品として観ています。

なぜ刺客が殿様を殺さずにマラソンのゴールを待ったのか。きっと原作では描かれていたのでしょう。主人公とその妻との関係性も、もっと深く表現されていたはずです。

もっとどこまで表現するかは映画監督次第でしょうから、この作品は意図的に描かなかったのかもしれません。でも、もう「これはダメだ」になっているので、悪いほうに解釈してしまいます。

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それでも、映画の日の映画だし、これくらいならギリギリ許容範囲かなと思ったわけです。話のネタにもなりますから。

ところが終わり間際になって、わたしは興ざめすることになります。安中遠足侍マラソン大会の映像が差し込まれ、そのあと、オリンピックでのマラソン選手の写真。

これくらい見事な蛇足を見たのは久しぶりです。映画内ではたくさんの表現を省いたにも関わらず、東京オリンピックへはきちんと忖度する。

そもそも、この映画自体が東京オリンピックを盛り上げる一環として作られたのでしょう。大手広告代理店が絡んでいるようですし。こういうマーケティング方法が現代では受け入れられないということに、偉い人たちはなぜ気づかないのでしょう。

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豪華俳優陣を揃えなくても、質の高い作品に仕上げて、多くの人に観てもらえば、それだけで日本のオリンピック熱が上がります。余計なひと言がなくても、心の深いところに種を蒔くことができるはずです。

目的が東京オリンピックを盛り上げることにあるから、いい映画に仕上げるという本質がすっぽりと抜け落ちてしまった。そんな印象を受けています。

評論家でもなければ専門家でもないわたしがあれこれ言うのもどうかと思いますが、やっぱりスッキリしないわけです。

1100円の映画代を返して欲しいとは言いませんが、久しぶりにモヤモヤ感が残る映画を観てしまったので、ちょっとグチってしまいました。マラソン映画なら楽しめるはずと安易に観たことを反省中。


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著者:土橋 章宏
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