台湾映画『牯嶺街少年殺人事件』を観てきました

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もう何度も書いていることですが、台湾が好きです。台湾の人も好きだし、台湾の食べ物も好きだし、台湾の歴史も気になることがいっぱいあります。でも、自分の視点というのはやっぱり日本人の視点でしかないことを痛感しました。

1991年の台湾で上映された映画『牯嶺街少年殺人事件』。その4Kレストア・デジタルリマスター版を観てきたのですが、なんとこの映画、ほぼ4時間の上映です。最後はトイレに行きたい気持ちとの戦いでした。

もう1回観たいところですが、もうトイレで悩みたくないので次はPrime Videoで観るとします。期間限定上映だったので、次はいつ観れるかわかりませんし。

さて『牯嶺街少年殺人事件』ですが、この映画は1940年代に中国から台湾に移住してきた、外省人と呼ばれる人たちの生活を中心に描かれています。

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台湾は思った以上に複雑な国です。日本統治時代には漢族系の住民は本島人と呼ばれ、蕃人と呼ばれる原住民がいました。日本人は内地人と呼ばれています。

その後、台湾が中国に返還され、中国本土から中国人が移住してきました。そして中国の内戦で蒋介石率いる国民党が台湾に逃げ込んだことで、国民党の人たちを中心に、さらに多くの中国人が台湾に移り住みました。

日本統治時代から台湾にいる人たちを内省人(本省人)、戦後になって中国本土から移り住んだ人たちを外省人と呼びます。

わたしが台湾の歴史と向き合うときは、日本人の視点や内省人の視点ばかりで、外省人はどこかで「悪者」という印象を持っていました。力で台湾を支配したという印象が強いからかもしれません。

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でも、実際には外省人の人たちにも苦悩があり、そこで暮らしている人たちの生活があったわけです。だから、当然のことながら、それだけの物語があります。

中国本土から移り住んで、いつか国民党とともに中国本土に戻れると思っていたのに、10年以上が経過したのに戻れる気配すらなく、政府の締め付けが厳しくなっていきます。

押しつぶされそうになる気持ちを抱えながら生活をしていると、その子どもたちにも影響が出てきます。1960年前後の台湾では不良グループがいくつも発生し、日々闘争に明け暮れていました。

日本でも1960年代は暴走族の全身であるカミナリ族などが増えてきた時代です。台湾だけでなく、世界中の若者が先の見えない未来に対して、共通の感情を抱いていたのかもしれません。

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1960年の台湾といえば、台湾がまだ中国との主権争いをしている真っ最中で、1958年には金門砲戦が起こっています。戦争の色がまだ濃く残る時代で生きる人たち。

映画が始まってからずっと胸の奥が強く締め付けられるような気持ちになります。ある意味、青春映画ですので笑えるところもありますし、ほっこりする場面もあります。

ただ後半になるに連れて、この映画の残酷な部分がむき出しになっていきます。

これまで向き合うことのなかった台湾の歴史の一面。そして、その時代を必死で生きる人たちの感情の揺れ。誰が正しいわけでもなく、誰が間違っているわけでもないのに消えていく命の炎。

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壮絶というのはこういうことを言うのだと学んだような気がします。

この映画が公開された4年前に台湾の戒厳令が解除され、その翌年には台湾では初めて本省人である李登輝が総統に就任しています。そんな時代だから公開できた映画でもあります。

映画の中に込められた「私は変わることはない」というメッセージ。これは、台湾国内に向けたものなのか、中国に向けたものなのか。この映画を本当に理解するには、わたしには知識が不足しすぎています。

とてもじゃないですが、今のわたしでは自分なりの意見を述べることもできません。

 

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ただ、こういう経験もしておいたほうがいいのでしょう。これまでと違う視点で見ることの大切さを感じましたし、中国を好きで台湾も好きな日本人だから、多くの日本人に伝えられることもあります。

台湾が好きで、日本統治時代の歴史にまでたどり着いた人は、おそらくもう1歩進んで次の歴史も学ぶことになると思います。そうなったときに『牯嶺街少年殺人事件』は観ておく映画のひとつです。

Amazonのプライム・ビデオや他の動画配信サービスでも観ることができます。4時間弱の映画ですので、かなり腰を据えて観なくてはいけませんし、登場人物が多すぎて何度か見直すことになるかもしれません。

何も予定のない1日を作って、じっくり観てもらいたい映画です。

Amazonプライム・ビデオ:牯嶺街少年殺人事件


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著者:胎中 千鶴
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