『風立ちぬ』は宮崎駿さんからのおいらたちへのバトンじゃないだろうか

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台風のおかげで身動きの取れなかった敬老の日の午前。昼前に雨も風も弱まったので南町田まで話題の映画『風立ちぬ』を観に行きました。人気の映画だったので席がないかと思ったのですが、台風が去ったばかりだったからか空席がちらほら。それでも8割がた埋まっている感じでした。子どもが少ないと聞いていたけど確かにいつものジブリ映画とは違う感じです。いや、ジブリ映画を映画館で見たのは『千と千尋の神隠し』だけなのですが、ジブリはイメージとして子ども向けの映画という印象が強いから、やっぱり『風立ちぬ』はこれまでと違う感じでした。

内容についてここで書くとネタバレになってしまうので書きません。いや、バレて困るようなところは全くない映画で、伝わる人にしか伝わらないだろうなという映画でした。もしかしたら海外ではまったく評価されない映画かもしれません。日本人にだけ伝えたいことがある。そういう思いが伝わってくる感じがします。

最近、大東亜戦争に関するドキュメンタリだったり小説などに触れる機会が多々あります。おいらが子どもの頃は戦争というのはタブーとされている感じがあって、あっても取り上げられるのは原爆関係か沖縄戦の話ぐらいではないでしょうか。あっても空襲を受けたぐらいの話で、日本人がアジアで何をしたのかを考える機会はほとんどありませんでした。学校で日本史を学ぶにしてもなぜか近代史はさっと飛ばしていたような気がします。満州事変について年号は覚えさせられるけど、どのような背景で満州事変が起こったのかはほとんど学びません。

韓国の朴槿恵大統領が日本に対して「正しい歴史認識を持つべき」というのは、言っていることとしては正しいのです。彼女の求めている歴史認識とおいらたちが学ぶべき歴史認識とはかなりの食い違いがあるのだけれども、おいらたちはおいらたちで正しい歴史を学んでいないのも事実です。中国や韓国は毎日テレビで抗日戦争をテーマにしたドラマを放送している。逆に日本は戦争をタブー視してきたから戦争ドラマがそうそう放送されることはない。この違いは大きい。

おいらはそろそろあの戦争はいったいなんだったのかを学ばなきゃいけないんじゃないかと感じている。満州事変が起こる前に日本は、いや一部の日本人は中国の革命に対して支援し、中国がアジアにおいて力を示せるように命をかけて協力していた。なのに戦争が終わるころには日本は中国から敵対視される立場になっていた。韓国にいたっては、独立のために技術的な支援も行い、韓国の近代化に大きく貢献してきたのに、今では敵国扱いされている。

なぜこんなことになったのだろう。

中国や韓国が悪いというのは簡単だ。でもそれは中国や韓国が日本が悪いというのと同レベルでしかない。おいらたちがすべきなのは歴史を正しく学ぶということだ。なぜあの戦争が始まって、あの戦争がなにを生み出し、何を残したのかを学ばなきゃいけない。そう感じている人が増えているのではないだろうか。

宮崎駿監督もこの映画を学ぶきっかけになればと思って作ったのではないだろうか。本当はもっと深いところまで表現したかったけど、日本人が戦争について語るのはまだタブーな面もある。ところが宮崎駿監督なら世界的にもすでに高い評価を受けている。その彼が世界から批判されないギリギリのラインで範囲で制作したのが『風立ちぬ』なんじゃないだろうか。そう考えると、彼が引退表明した理由もわかる。彼は映画を通じて本当に伝えたかったことを表現しきったのだろう。

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ただし、彼が与えてくれたのはきっかけだけだ。ここからはおいらたちそれぞれの問題だ。それぞれが戦争について学び考えなきゃいけない。もはや戦争を語るのはタブーではない。むしろタブー視してはいけない。タブー視しすぎたために、あの戦争がなかったことかのような感覚になりつつある現代。繰り返さないためにも忘れてはいけない。そういう思いのこもったバトンをおいらたちは宮崎駿監督から受け取ったのだ。まずは学ぼう。そして考えよう。

Le vent se lève, il faut tenter de vivre.(風立ちぬ いざ生きめやも)

いま、時代を見つめ直す風が吹いている。ここで学ばなければあの戦争の歴史は消え去ってしまう。あの戦争があたっという事実を殺してはいけない。おいらはそう解釈した。

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