台湾が好きな日本人が知っておくべき台湾と中国の関係

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『中国が民主化しても「統一望まない」、台湾の若い世代の7割』というニュース記事を目にした人も多いかと思います。台湾が好きだという日本人でも、実際のところ何のことだか理解できていない人が多いかと思います。

中国の民主化になぜ台湾が関係するのか。台湾と中国の統一ってどういうこと?

これを簡単にでも説明できる日本人がどれだけいるのでしょう?識者でもなければ、台湾が大好きだという人でも、歴史的な背景を知らないという人も多いかと思います。

いま、台湾旅行が日本人の若い世代にちょっとしたブームのようになっていますので、このタイミングで簡単な歴史でも知っておいてもらいたい。そう感じたので、台湾と中国の関係について説明したいと思います。

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できるだけ難しくしないため、歴史学者からすれば乱暴な説明に思える書き方をしますが、「わかりやすく」に重点を置いているということに理解していただければと思います。

19世紀、世界は大きく動き始めます。欧米諸国による世界の植民地化が起こり、日本も江戸時代の終焉を迎え、明治維新政府が発足したのがこの時代です。

アヘン戦争というのは歴史の授業で学んだかと思いますが、アヘンの密輸で儲けていたイギリスが「アヘンの密輸を継続させろ」と中国の清王朝に対して戦争をしかけます。

ここから清王朝の没落が始まるのですが、細かい話をしていると長編小説になってしまいますので省きます。いずれにしても清王朝は徐々に力を失い、代わりにいくつもの政府が設立されては消えていきました。

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そして1912年に孫文を臨時大総統とする中華民国臨時政府が設立しました。

その後、大統領に就任した袁世凱との対立により、孫文が1919年10月10日に中国国民党を結党しました。実際にはそれまでは中華革命党という名前で活動していましたので、後に台湾政府となる中国国民党という名前ができたのがこのときということです。

あまり知られていませんが、このときの中国国民党は共産主義思想寄りでした。ところが1921年に中国共産党が結成されたのを機に、反共産主義へと方針を変えていきます。

中国国民党と中国共産党はそれぞれ次の中華の盟主になるために、内紛を繰り返していましたが、日中戦争に力を注ぐため一時的に共闘します。

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ところが、日中戦争(太平洋戦争)が終焉すると、再び中国国民党と中国共産党は内戦を始めます日中戦争で主戦力だった中国国民党と、兵力を温存した中国共産党。余力の差は明らかで、この時点では中国共産党が圧倒します。

このとき中国共産党は、日本軍から最新の兵器を鹵獲し、さらにソ連からの援助を受けます。中国共産党の空軍を指導したのが捕虜となった日本軍の軍人です。

中国共産党が優位に進める内戦の状況を大きく変えたのが、中国国民党の指導者である蒋介石がソ連のスターリンが結んだ協定でした。ソ連は満州の権益を得る代わりに、中国共産党への支援から手を引き始めます。

その一方でアメリカの支援を受けていた中国国民党は一気に中国共産党を追い詰めますが、1948年から1949年の戦いで、一気に共産党軍が立場を逆転し、中国国民党を追い込みます。

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結果的に、このとき蒋介石が率いる中国国民党は台湾に撤退し、そこに臨時政府を立ち上げます。

このときの中国国民党を支援したのがアメリカです。あまり知られていませんが、多くの日本人も台湾に密航し、軍事面で中国国民党を支援しています。

歴史の順番が前後しますが、日本は敗戦により、これまで統治していた台湾を中華民国に返還しています。日清戦争後の1895年から1945年までは、台湾は日本が統治する日本という国でした。

これに関しても説明すると長くなりますので省きますが、いずれにしても戦後に台湾は中華民国に返還され、最終的には中国国民党の拠点(現在の台湾)となります。

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中国共産党が中国国民党を破ったことで、中国共産党は中華人民共和国が建国されました。このときはまだ、中華民国が国連の常任理事国でしたが、1971年に常任理事国は中華民国から中華人民共和国に移ります。

とはいえ、中華人民共和国の主張は「台湾は自分のもの」で、中華民国の主張も「中国本土は自分のもの」です。いずれの政府も「自分こそが中国」という立場を手放しません。

ものすごい極端な例で言えば、例えば民進党と自民党が内戦を行って、それに敗れた政党が佐渡ヶ島に渡って、臨時政府を宣言したとします。その佐渡ヶ島が台湾だと思ってもらえれば分かりやすいかと思います。

敗れた政党も「こっちが日本だ」と言い、勝った政党も「こっちが日本だ」と主張します。現実はともかく、世界での名目として、中国と台湾の関係は内紛の過程ということになります。

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ただし、これは政府レベルの話であり、台湾国民(中華民国民)はというと話が少し変わります。

台湾には本省人と外省人という考え方があります。本省人は日本統治時代を過ごした台湾人で、外省人は台湾が中華民国に返還されてから中国から台湾に移った人たちのことを言います。

「自分こそが中国」と主張するのは外省人で、本省人は「私たちは中国ではなく台湾だ」と独立を主張します。統一か独立かというのは台湾でずっと議論され続け、その答えは今でも出ていません。

ちなみに政党でいえば、国民党が統一派で、民進党が独立派ということになっています。

とはいえ台湾の若い人たちは、外省人も本省人も関係なく「自分たちは台湾人」という考え方が定着し、「いまさら中国は関係ない」というスタンスの人が多いというのが、今回のニュースの内容です。

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ただ、台湾の人たちの中でも統一を望んでいる人がいるということは知っておいてください。正しいかどうかというよりもそのような歴史背景を知っているかどうかが大切です。「台湾が好き」だというならなおさらです。

長々と書きましたが、これが台湾と中国の関係ということになります。噛み砕いて書いたつもりですが、これでも理解できないという人もいると思います。

一気にたくさんのことを書いてしまったので、それも仕方ないかと思います。概要についてはここで書きましたので、機会を見てもう少し部分部分にスポットを当ててお伝えしようと思います。

これをテーマに小説にしたいのですが、とにかく複雑すぎてわたしも頭がまとまっていません。もう少し知識をつけて、人にしっかり語れるようにするためにも、情報発信をしていきます。


台湾とは何か (ちくま新書)
著者:野嶋 剛
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