東京坂道ランで大使館が多くある港区を走って感じたこと

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今年の夏前くらいから、東京23区の700以上ある坂道を走ろうと、月1回コツコツ距離を積み重ねています。前回は本郷、前々回は谷根千を走り、東京にこんなも心がときめく町があるのだと驚かされました。

まだ千駄木周辺にまで足を伸ばせていませんが、次も東京23区の北側を選ぶのは楽しみ過ぎな気がして、今回は東京23区の南側、港区中心に走ることにしました。

港区というと、わたしは品川周辺を思い浮かべますが、実際には霞ヶ関の南からすぐに港区になり、六本木や麻布なども港区になるということを事前準備をしているときに知りました。

東京の地理に疎いわたしは、この1〜2年でなんとなくどこに何があるかを理解し始めたところ。上京したばかりの若者と変わらないくらい、東京を知りません。

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今回は日比谷をスタートして、六本木方面に向かいましたが、六本木に近づくに連れて、どうも気持ちが沈んでいきます。そして、この日に1日中引きずることになる出来事が起きました。

霞が関方向から港区に入ってすぐにあるアメリカ大使館。無知なわたしはそんなところにアメリカ大使館があるのも知らず、ちょうど読み終えた日輪の遺産を思い出しながら「そうか、あの場面はここだったのか」なんて、考えながらアメリカ大使館に近づいていきました。

ところが、アメリカ大使館に近づくにつれて警察官の人数が多くなり、日本では久しく感じていない張り詰めた緊張感が伝わってきました。

「これは要注意」と思いながらも、坂道の写真を撮ろうとしたら(東京坂道ランでは記録のために、走った坂道の写真を撮っています)、警察官が「大使館の写真は撮ってはいけません」と近づいてきます。

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もちろんわたしは大使館などに興味はないのですが、大使館前の道路が目当ての坂道、普通に撮ればどうしても写ってしまいます。結局なんとなく上手く撮影しましたが、警察官に写真のチェックもされました。

このとき、わたしは自分の心が閉ざされそうになるのを感じました。

なぜ、自分の国の風景を撮影するのに制限をされなくてはいけないのか。

もちろん、テロ対策や治安維持のためというのであれば無理に撮ろうとは思いません。でも、テロ対策が必要になったのはアメリカ自身の問題です。日本人のわたしにしてみれば知ったことではありません。

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そもそもグーグルマップにはアメリカ大使館がばっちり写っています。現実的に写真を撮られて困ることなんて何もないはずです。

港区には同じように大使館がいくつもあります。同じようにロシアと中国の大使館には警察官がいつでも動けるように待機していましたが、どちらもアメリカほどには厳重ではありません。写真撮影を咎められることもありません。

他の大使館にいたっては、敷地の外は完全に無防備です。だからこそ余計に、あのアメリカ大使館の厳重な警備には違和感を覚えました。それほどまでにテロを警戒しなくてはいけなくなったのは、アメリカが自分で選んだ道です。

すべての始まりはそこにありましたが、何度も各国の大使館周りを走っていると、大使館の存在そのものをとても異質なもののように感じ始めました。法的には大使館は外国です。それくらいの理解力はあります。

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でも、いや、だからこそそこに異質なものがあることを受け入れられない自分がいます。

大使館がいらないと言いたいのではなく、ただそこにあるのが不自然だと感じたということです。スピリチュアルに関心のないわたしが見ても、明らかに周辺の気が淀んでいるのがわかります。その最たるものが六本木という街です。

走りながら六本木に足を踏み入れた途端に「ここはすぐに抜け出さなければいけない」と本能的に感じました。これまで六本木には何度か行ったこともありますが、今回はいつもと感じるものが違います。

ここは自分の居場所ではないことが、はっきりとわかります。本郷や谷根千を走ったときに迎え入れてもらった感じとは真逆の感覚。

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ここの空気は淀んでいる。

それだけははっきりと分かり、その原因は大使館が存在することにある。わたしはそう感じました。ただ、同じように霞ヶ関も淀みを感じました。異質さはありませんが、受け入れることのできない何かがそこにはあります。

ふと思ったことがあります。役人は何であんなにも偉そうなんだろうと。首相や大臣はなぜ「偉い人」として、周りが持ち上げるのだろうと。

わたしたちは、どんな理由があろうとも、フラットな立場にあるはずです。会社の創始者である会長も、昨日入社したばかりの新人も、人としては平等です。

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会長の命が重たくて、新入社員の命が軽いなんてことはありません。それぞれに担う役割は違っても、人としてはどちらが偉いなんてことはありません。それは、外国人に対しても同じで、他の国の大使だから偉いなんてことはありません。

立場によって偉さが変わるというのは幻想です。そう思い込まされているだけで、立場が上の人が常に正しいなんてことは絶対にありえません。少なくとも人としてそこにいるなら、偉そぶる根拠はどこにもありません。

相手がどこかの国の大統領であっても。

どんな立場の人でも、どんな国の人でも、向き合うときは対等であるはずです。それは大使館のような建物でも同じです。大使館だから、偉そうにしていいわけがありません(偉そうにしているつもりはないのでしょうが)。

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威圧感なんて与えているつもりはないのかもしれませんが、大使館を写真に撮ってはいけないというのは傲慢です。その傲慢さに苛ついている自分がいます。

でもきっと、世の中にはわたしと反対で、本郷や谷根千に居心地の悪さを感じ、六本木や麻布を心地いいと感じる。それぞれに良いと思うものが違うからこそ、東京は町ごとに色が出るのでしょう。

個人的には、これからできるだけ近寄らないようにしたい場所。アメリカ大使館だけでなく、他の国の大使館も含めて、なぜか胸の奥がざわつきます。まだ港区の坂道が残っていますが、早く終わらせたいところです。

ただ、港区の名誉のためにも言っておきますが、美味しいお店にいくつも出会ったという楽しさはありました。そこはさすがに洗練されているというか、舌の肥えた人たちが集まる町です。

そのお店に行くには、また大使館の近くに行く必要があるという悩ましさ。

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東京にもいろいろな顔があるものです。こういうのはやっぱり走ってみないと分かりません。自分の足で走ったからこそ感じたこと。そういう意味では東京坂道ランは、わたしにとって人生を大きく動かすイベントなのかもしれません。

もっともわたしは、ただ美味しいお店を探して走っているだけですが。


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著者:泉 麻人
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