イチローという圧倒的な存在への絶望感が原動力になる

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人生で2度ほど未来が見えたことがあります。正確には何かが起きるということがはっきりと分かった瞬間。そのひとつがトリノオリンピックの荒川静香さんの演技に入る瞬間です。

そして、もうひとつが2009年のWBC決勝、10回表のイチローの打席でした。

天才は「天才」と呼ばれることを嫌います。才能だけでやってきたわけではない。他の人を圧倒するほどの努力の積み重ねがあっての結果だという自負。そして天才だけが手にすることができるスターという称号。

「才能 × 努力 × 運」これがスターになるための必須条件だとわたしは考えます。ひとつでも欠けてはいけません。そして、スターになるための運というのは、どれだけの才能があっても、どれだけの努力をしても、決められた人にしか与えられません。

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日本人でいえば、それは長嶋茂雄やキングカズという存在。そしてあの場面で打順が回ってきたイチローも紛れもないスターです。

才能や努力があってもスターになれなかった選手は無数にいます。サッカー選手であれば、小野伸二や中田英寿、中村俊輔といった天才たち。彼らは少し運が足りなかったことで、スターにはなれませんでした。

日本サッカー界ではスターだったかもしれませんが、彼らのスター性が三浦知良に届くことはなかったと、わたしは感じています。三浦知良には他の選手にはない運がありました。

ただ、そんな選手でも一生輝き続けることはできません。そうなったときに、どう身を引くべきなのか。

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スターにもなると自分の意志だけでは辞め時を選べません。もう無理だという思いと、まだできるという思いの葛藤もあるのでしょう。戦いの場を移すという選択肢もあるはずです。

でも、イチローはメジャーリーガーで終わらせる道を選びました。まだ、そのような報道があっただけで、決定したわけではありませんが。

彼はスターであり先導者でもありました。野球が上手いだけではなく華がある。わたしのようなひねくれた人間ですら、引き込まれる魅力を持っています。そんなイチローが現役選手でなくなるときがやってくる。

目に見えて大きな穴が心に空いたわけではありませんが、心の大切な部分をえぐり取られた気分です。

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わたしは、基本的に人に依存しないようにして生きてきました。人の人生にも影響を受けずに、自分らしさを求めてきましたが、それでもイチローやキングカズの影響は受けています。

もっとも、わたしは才能も運もありませんが。努力というのも自分では測ることはできません。自分では頑張っているつもりでも、他人から見れば大したことないというのはよくあることです。

そして、何かを成し遂げるために努力をするというのは、当たり前のことです。わたしレベルでも、イチローのレベルでもそれだけは同じことで、人に誇るようなものでもありません。

輝いている人を見るたびに、わたしは輝くことのない自分が嫌になることがあります。普段はそんなこと思いもしないのに、圧倒的な才能と運を味方にして、努力を怠らない存在を見ると絶望感な気分になります。

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でも、それが自分の原動力にもなっているのも事実。

その絶望感を少しでも和らげるためには、輝く人の背中に半歩でも近づくしかありません。絶対に追いつくことができないと分かっている背中でも、食らいついていく。

きっと多くのプロ野球選手が、そうやってイチローに引き上げられたのでしょう。プロ野球選手だけでなく、わたしのような影響の受け方をしている人は大勢いたはずです。

やはり偉大な人です。

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もうあの活躍を見ることはできませんが、無理に現役を続けても、あの輝きを取り戻すことができないのは本人が一番わかっているのでしょう。

彼がみんなを引き上げることがないなら、次は引き上げられた立場の人間が新しい世代を引き上げる番です。わたしに何ができるのかは分かりませんが、やれるかどうかは問題ではありません。

そして、実際には何かをする必要もないのでしょう。才能も運もないのなら、ただひたすらに努力を重ねるしかできませんから。ただ、それはわたしにとっては特別ではなく、変わらない日常を過ごすということですが。


イチローの流儀 (新潮文庫)
著者:小西 慶三
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