「要求が通らないなら辞める」という浅ましさ

お笑い芸人、極楽とんぼの加藤浩次さんが、吉本興業に対して「このまま取締役が変わらなければ俺は辞める」と発言したにも関わらず、結果的には吉本興業に残るという選択をしたとのこと(本人曰く残留ではないそうですが)。

男が自分で選んだ道だから、それに対して知り合いでもないわたしがどうこう口を出すようなことではないのですが、それに対してちょっとおかしなことを言っている周りの人が目立ったので、文章にしておこうかなと。

会社員でも、会社に対して交渉するときに「要求が通らないなら辞める」っていうんだから、加藤浩次さんも要求が通ったんだから辞める必要がないという内容のつぶやきなどをいくつか目にしました。

いったい何を言っているのか、わたしには理解できませんでした。会社に対して何かを要求し、それが通らないなら辞めるというのは、めちゃくちゃな話であり、組織の人間として最悪な行動だとわたしは考えています。

そういう人間が組織をダメにする。

会社に入って稼ぐというのは、会社が作り出した儲けの仕組みに乗っかっているだけで、そのやり方がおかしいとか、自分勝手な解釈で「こうあるべき」なんて口にするのは低俗な人間のすることです。

わたしの理想でしかありませんが、会社に限らず組織というのはトップダウンであるべきで、ワンマン社長が自分の判断で舵を切る。それぞれに思いはあっても、トップが決めたことにはYESとなる組織でないと絶対にうまくいきません。

民主主義がどれだけグダグダになるのかは、国会を見ていれば分かると思います。船頭の多い船は山を登るだけで、何かを決めることなんてできません、強力なリーダーシップを持った1人が引っ張っていく。

意見を出し合う場はあってもいいかとは思います。でも、決めるのはたった1人です。ものすごい責任を背負って決断するのが組織のトップです。プレッシャーが大きく、そして孤独でもあります。

もしトップの判断によって経営が揺らいだら、トップは責任をとって退陣するだけのことです。

そういう組織において「要求が通らないなら辞める」というのは、組織を乱すだけですし、組織というものをまったく理解していない、ただの自己陶酔をしているだけの行為です。

別れる気もないのに「もう別れよう」なんて口にする人のように、めんどくさい存在です。引き止めてくれる言葉を期待している浅ましさに、人間としての魅力が崩れ去っていくのを経験したことのある人もいると思います。

わたしが組織のトップに立ったとして「要求が通らないなら辞める」と言われたら「どうぞ辞めてください」と言うでしょう。

その要求が正当なものなのかどうかなんて、組織運営においてほとんど重要でありません。組織は組織として機能することだけを優先し、徹底して効率化を図る。その理想形が軍隊なのですが、ここではその話はやめておきましょう。

「自分の思い通りにしてくれなきゃ抜ける」子どもの発想です。少なくとも様々な苦しみを経験してきた極楽とんぼの加藤浩次さんが、安易な駆け引きのためにそんなことを口にするわけがありません。

本気で辞めるつもりだったのでしょう。

でも、辞められない材料が出てきたと考えるのが実際のところではないでしょうか。彼にとっては辞めるも地獄、留まるも地獄で、ただ辞めれば地獄から抜けられる可能性はある。少なくとも自分のプライドは守れます。

そんなことは当然分かって残ったわけです。かなりのイメージダウンになり、場合によっては、芸能界に自分の居場所がなくなることを分かった上での残留。それを下賤な会社員と同列に語るのは違うと断言します。

実際に組織がおかしくて、自分にはその間違いを受け入れられないというのなら、黙ってそこから立ち去ればいいだけです。どんな会社でも、たった1人の社員がいなくなって成立しないなんてことはありません。

そんなものは思い上がりです。会社員は等しく組織の歯車です。

でも「要求が通らないなら辞める」と言って、実際に要求が通って辞めずに済んだという人もいるのでしょうが、そんなことが通るような会社組織は、そう長くは続きません。言ったもの勝ちになったら、組織は崩壊するしかありません。

もちろん、これはわたしの持論でしかありません。ただ、いつも思ってはいます。自分の所属する会社や組織の悪口を言う人がいたら「辞めればいいのに」と。「それだけ言うなら自分で事業を立ち上げればいいのに」と。

繰り返しになりますが、会社組織に属するというのは、その会社の儲けの仕組みに乗っかっているだけです。乗っかっておきながら、思い通りにならないからと不満を述べる。浅ましさしかありません。

乗るなら従い、反るなら立ち去る。簡単な話です。


経営者の孤独。
著者:土門 蘭
楽天ブックス:経営者の孤独。 (一般書 246) [ 土門 蘭 ]

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次