3年目のデビュー

3年目のデビュー

毎月1日は映画の日だ。仕事はそこそこで切り上げて、できるだけ毎月映画を観に行くようにしてる。映画の日だから行くというよりは、インプットをしないとアウトプットの質が下がってしまうから、意識的に何かを感じるための1日にしようかと。

2つの映画で迷っていた。「アルプススタンドのはしの方」と日向坂46ドキュメンタリー映画「3年目のデビュー」。いつものわたしなら間違いなく前者を選ぶところ。日向坂46に興味がないかというとむしろ逆で、乃木坂46に興味を持ち、いまは欅坂46と合わせて好きなアイドルグループになっている。

ただ、日向坂46は積み重ねてきた時間が長いとは言えず、始まったばかりのグループだから内容が薄くなることは容易に想像できる。だが、少し飢えていたのだろう。キラキラ輝く青春の裏に隠れている人間らしさというものに。ブログタイトルからもわかるように「3年目のデビュー」を選んだ。

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アイドルというのは興味深い仕事だ。わたしが彼女たちと同年代だった頃はアイドルというのは夢だけを与えていればよかったのだが、最近のアイドルは生き方を売り物にしなくてはいけない。喜びも苦しみも隠さずに見せていくスタイル。

そういう中で、坂道グループというのは、前に立つことを心苦しいと感じるメンバーで構成されていて、だからこそ生まれる苦悩が物語になり、ファンが惹き込まれていく。純粋に可愛らしさというのもあるのだろうが、44歳になって20歳前後の女の子の可愛さに心がときめくほど残念な人生は送っていない。

わたしは彼女たちの物語が好きだ。日向坂46はいまでこそ明るく元気なグループになっているが、発足当初は欅坂のアンダーという位置づけで陽の目を見ない陰の存在だった。彼女たちにしてみればデビューまでの3年は本当に苦しかっただろう。

だが40代になるとわかるが3年というのは、何かを成し遂げるのに決して長い期間ではない。いま何らかのブログを立ち上げて、そのサイトが陽の目を見るのに3年はかかるだろう。RUNNING STREET 365など10万PVを超えるのに4年かかっている(わたしの力不足もあるが)。

だから「3年」を強調することに少し引っかかりはある。しかも基本的には筋書きを書いている人がいるのだ。それが秋元康さんなのかどうかは知らないが、アイドルというのは筋書きのないドラマではない。売れるために計算され尽くしている。

だから見る価値がないということは言わない。アイドルをしている彼女たちは筋書きなど考えずに全力で毎日を過ごし、そして力をつけてきたわけだから、小さくてもそこに物語が生まれる。わたしはそういう小さな物語が好きだ。

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映画「3年目のデビュー」が面白かったかというと正直なところ、もっと注目されるような映画にはできたんじゃないかなとは思う。初めての映画ということでただの年表をなぞっただけになっていたし、焦点が動くので感情移入も少ない。

できるだけ多くのメンバーに、スポットライトが当たるように配慮されている。意図的にそういう作りにしたのは、きっとそのほうがファンが喜ぶからなのだろう。深堀りすることを選んだ。物語を見たいわたしは、大事なところではぐらされる感じもあり消化不良だった(それも戦略なのだろうが)。

わたしは基本的に報われない人の物語が好きだ。報われない人に時々射し込む光と、それでも結局闇から抜け出せないストーリーに人間らしさを感じて惹き込まれる。このドキュメンタリー映画で彼女たちは報われるだけでなく、輝かしい未来さえ感じるものになっている。

映画の内容を批判をしているのではない。自分の好みの話をしているだけだ。わたしは3つの坂道グループのいずれも好きだと思っているが、結局のところ乃木坂46が好きで、その中でも日陰の存在となっている2期生の物語が好きだ(こう書くとファンは怒るかもしれないが)。

彼女たちの報われない物語を美しいと思う。

日向坂46というグループも初期の頃(ひらがなけやき時代の初期)から見ているが、追い続けたいとは思わないし推しメンというのもいない。みんな素敵だなとは思うけど、夢を持って強い目をしている若者というのはアイドルでなくても素敵なものだ。

そこから追いたくなるというのには物語が必要で、それにはやはり3年というのは短いのだなというのが実感だ。きっとさらに3年の経験を積んだとき、彼女たちにもっと人間らしさを感じるのかもしれないが、そのときはわたしもアラフィフだ。

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また違った見方をするようになっているだろう。そもそも「アイドルが……」なんてことを口にしていない可能性だってある。わたしはそこに物語があれば、対象は何でもいいのだ。節操ないと思われるかもしれないが、基本的に他人には関心を持てない人間だから仕方ない。

普通のファンのように「彼女たちに売れて欲しい」なんてことは1ミリも思わない。たくさんの成功と失敗を重ねて、人間味のある部分を見せてもらいたいとは思う。成功から転落していく物語も悪いものではない。わたしたちの目標は輝くことではなく、何があっても「生きる」ことだ。

生きていれば良いこともあれば悪いこともある。努力が報われないことだってある。だが努力はいつだって美しい。いや報われないときほど、その美しさが割増される。強烈な美しさを感じることのない日向坂46の物語。だが、ここが始まりだろう。きっとこの先どこかで輝くことになるはずだ。

こういう書き方をすると、わたしが人の不幸を喜ぶ嫌なヤツに思えてきた。繰り返しておくが、わたしは幸せも不幸も望んでいない。ただ純粋に人間の物語を見たいだけ。それこそがわたしの想像力をかき立て、こうやってキーボードを叩く原動力になる。

そういう意味ではここまで書けるなら、観てよかったのだろう。予想通りの結果にはなったが得たものはある。だが、近いうちに「アルプススタンドのはしの方」も観に行こうとは思う。きっとこちらのほうが今のわたしには刺さるだろう。

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