映画「滑走路」を観てきた【弱き者の気持ちはわからないけども】

必要なものはいつだって、必要なときに出会う。私はそれを信じています。私はいつも世の中から遅れてブームがやってくるのですが、きっと世の中で流行っているときには、自分には必要ないものなのでしょう。そして本当に必要になったときに出会うわけです。

歌集「滑走路」を手にしたのが、昨年の緊急事態宣言の頃。自分のもやもやした感情を言葉にする方法を探しているときに、短歌がいいのではないかと感じ、そのときにたまたま本屋で手にとったのが、歌集「滑走路」です。俵万智さんの歌集と迷いましたが、なんとなく。

この歌集の作者は萩原慎一郎さん。歌集を出した直後に自殺したそうです。それを知っていたら、私はきっと手にすることはなかったでしょう。私にとって、人間が唯一してはいけないことが「自殺」なので、自ら命を絶った歌人の書を手にするなんて、知っていたら必ず拒絶したことでしょう。

ただ、幸か不幸か手にした作品には素敵なもので、短歌には罪がないということで緊急事態宣言の苦しいときには、常に手元においてページを捲っていました。映画「滑走路」はそんな歌集「滑走路」をモチーフにして作られました。たまたま、今月の映画の日に観る作品を探しているときに見つけました。

運命みたいな薄っぺらい言葉で表現するのは好きではないのですが、これはもう最初から導かれていたようなもの。映画そのものは昨年の11月20日に公開されましたが、そのときは私のアンテナには引っかからず、今になって厚木の映画館で上映されているのを見つけたわけです。

間違いなく、いま見る必要がある映画なのでしょう。この映画を観るために歌集を手にした。ただこの映画を観るのは2020年11月ではなく、2021年3月でなくてはいけない。きっと昨年の11月に観たのでは、こんなにも心に響くことはなかったはずです。

この映画を観るまで、私は「あなたは強いから」と言われることが嫌いでした。でも、今ならわかります。私はきっと強いということを。私はずっと権力というものに逆らって生きてきました。それは時としていじめっ子だったり、パワハラ上司だったりします。

そういう存在に対して屈服することなく立ち向かう。面倒になって逃げたことは度々ありますが、相手の力にひれ伏したり怯えたりしたことはありません。それを「みんなそうすればいい」と思っていました。強いとか弱いじゃなく、やるかやらないかだけで、「やる」を選べばいいと。

そう言えること、それを貫けることを強さと呼ぶなら、きっと私は強いのでしょう。映画の中でいじめのシーンが何度も出てくるのですが、私はずっともどかしかった。そこで戦わないことへの苛立ちもありました。でも、それができない人もいるわけです。理由はわかりません。でもそういう人もいるのが現実。

ただ強いことが偉いわけではありません。強さは個性であり、それは「勉強ができる」や「足が速い」と同じようなレベルのもので、強いから優れているというわけでなく、弱いから劣っているというものでもありません。弱さを抱えている人にしかできない経験があり、弱さを抱えている人だけが見える景色があります。

映画「滑走路」であり歌集「滑走路」に触れたことで、その景色を少しだけ共有させてもらえた気がします。私には見えない角度から人間を描いたストーリー。現代社会でもがき苦しんでいる人がいて、それは自ら命を絶つことでしか終わらせられないというほど追い込まれているという現実。

きみのため用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい
萩原慎一郎

自ら命を絶つ人の気持は、きっと私には一生理解できません。これからも認めるつもりもありません。ただ、それしか選択肢がない人がいる。飛び立つための滑走路も翼も見つからない人がいる。翼を手にしたのに飛び方がわからない人がいる。そのことから目を背けてはいけない。そんなことを感じた119分でした。

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