台湾映画「1秒先の彼女」を観てきた【誰かに合わすことなく自分のテンポでいい】

少し歪んだところもあるし、応援したくなったわけじゃないんですけど、できることならバッドエンドじゃないといいな。そんな思いでラストシーンを観ていました。台北で暮らすごくごく普通の2人に起きたファンタジーの物語。ただ彼女(シャオチー)は周りよりもワンテンポ早く、彼(グアタイ)はワンテンポ遅い。みんなと違うのはただそれだけ。

美女でもイケメンでもない、ただすべてが上手くいかないの男女が引き寄せ合いすれ違う。それぞれに無くしたものがあるけど、それを埋め合うわけでもなく、平行線のように見えて、実は平行線ではない。どこまで伏線を張っていたのか気になるのですが、それを確認するのは無粋というもの。映画は一期一会だから面白い。

「1秒先の彼女」は公開されたばかりで、ネタバレになることは書けないうえに、映画の評価をできるほど演技やら脚本、演出などに詳しいわけでもありません。だから、この状態で書けることなど何もないのですが、でも観ていて居心地は良かったし、先が読めない面白さもありました。そしてジグソーパズルのピースがひとつずつ埋まっていく気持ちよさ。

テンポが早いシャオチーのパートは物語もテンポよく跳ねるように進んでいくのに、テンポが遅いグアタイのパートでは、穏やかに時間が流れていく。そんな時間のコントラストも心地よくて、すべてのピースが埋まったときの切なさと、すべてが満たされるラストシーン。映画って私が思っている何倍も美しいものなのかもしれません。

「マイペースでいい」これはとても難しい言葉です。何かを教えたことがある人なら、きっとそのフレーズもしくは似たニュアンスの言葉を使ったことがあるかもしれません。でも、マイペースを促されてできたペースはもはやマイペースではありません。また、自分以外の人のペースを「その人のペースだから問題ない」と認めるのも容易ではありません。

私はせっかちな方なので、ゆっくりのペースの人に合わせるのはなかなかストレスを感じます。ただ時々、なんでそんなにも急ごうとするのか、なぜ他の人のペースに合わそうとしないのか(できないのか)、自分自身に苛立つことがあります。会社員時代がまさにそうで、いつも自分の器の小ささを嘆いていた気がします。

でもいま思えばそんなに悪いことじゃないのかもしれません。そんな自分を変える必要もないですし、無理して周りに合わせなくてもいい。きっとこの早足に合う人がいるはずだし、このペースの自分だからできることもあるわけです。自分じゃない誰かに合わせて自分らしさを見失うくらいなら、誰にも合わさずまっすぐに自分の道を進む。

その道で出会えなかった人のことを考えるのではなく、この道の先で出会えるかもしれない人に期待する。いや、もしかしたら、すでに見えないところで支えてくれている人がいる可能性だってあるわけで、そんな人たちを裏切らないためにも下手に取り繕うのではなく、愚直なくらいにまっすぐに。

会社員を辞めて自分の足で立つと決めたときに比べて、いまの自分は明らかに守りに入っています。それも自分自身が傷つかないための守り。この6年で守ることだけが得意になったような気もします。それが歳を重ねるということかもしれませんが、きっと重松貴志という人間そのものが持つ魅力というものが薄れています。

恋愛において「良いだけの人はモテない」と言いますが、まさにいまの自分がそれ。女性にモテるモテないの話ではなく、嫌われたくないから良い人を演じて、人として周りを自然と惹きつけるような魅力を失っているという話。誰かのために生きているわけでもないのに、周りの目を気にしたり、ちょっと良い感じに見られようとカッコつけたり。

それを今すぐに直せるとは思いませんが、このままでいいとも思いません。無味無臭の人間になることくらい面白くない生き方はありませんから。みんなに好かれなくてもいい。いや、誰からも好かれなくてもいい。自分が気持ちのいいテンポで生きる。それでいいのかもしれない。そんなことを「1秒先の彼女」を観ながら感じました。

やっぱり台湾映画は面白いですね。邦画に近いところがありますが、映画監督の個性に日本人にはないものが見え隠れしますし、演出もストーリーも楽しくて、私とは違った美学が伝わってくるので、もっと観たいという気持ちにさせられます。台湾の人や暮らしが好きという人なら「1秒先の彼女」はきっと満足してもらえる作品です。

「1秒先の彼女」、自分のテンポをどこかに置き忘れてちょっと疲れてしまった人にも、ぜひ観てもらい映画です。

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