司馬遼太郎「街道をゆく17」を読む【天草の旅がようやく幕を下ろす】

  • 2021.12.02
  • (更新日:2021.12.01)
  • LIFE
司馬遼太郎「街道をゆく17」を読む【天草の旅がようやく幕を下ろす】

天草に行く前から読み始めた司馬遼太郎さんの「街道をゆく17」をようやく読み終えました。移動中にしか本を読まないのに、複数の本を同時に読んだりしているものだから、なかなか頁が進まないのが最近の小さな悩み。ちゃんと読書の時間を作ればいいのですが、自宅が仕事場だと仕方ありません。寝る前を読書タイムにすればいいのかもしれませんが、なんとなく仕事をしてしまい、気がつけばいい時間。

以前ほど熱中できる小説がないというのが最大の理由。楊令伝や岳飛伝の続きはまだ単行本になっておらず、池袋ウエストゲートパークに熱狂できるほど若くもなく、浅田次郎さんのリズムは読むときを選び。「街道をゆく」もそれなりに古い本なので、読むのになかなかエネルギーが必要で、読み出すのに時間がかかります。読み始めると天草の風景が浮かんできて、一気に読めるのですが。

「街道をゆく17」は島原と天草が舞台ということで、どうしても島原の乱がストーリーの中心にあります。天草に行くことで島原の乱の概要を知り、そして「街道をゆく17」でその歴史的背景や登場人物について学ぶ。そうなるとやはりもう1度行きたくなるものです。もちろん天草だけでなく島原も。私は勝者よりも敗者に興味があり、成功者よりも逆境に置かれた人のほうが気になります。

そこからの逆転のために立ち上がり、そして散っていく。これほどまでに美しい定型がほかにあるでしょうか。それに対する人間も含めて人間の感情がすべて詰め込まれている。思い通りにならない状況を受け入れるのではなく、自らの手で抗う。でもフィクションではないから、弱者は弱者として滅んでいく。報われないというのは、なんとも官能的でもあり、心の奥をぎゅっと締め付けてくるのです。

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ただ、そのためには想像力というものが必要で、想像力を膨らませるには知識が必要。だから私は本を読みます。「街道をゆく」シリーズはそういうときにとても助かる本。ジャンルで言えば紀行文になるのでしょうか。事実と推測を明確に分けているので、学びつつも自分なりの想像を膨らませやすく、そして自分の足で走った場所だから、余計に気持ちが乗っていきます。小説でもないし、ウェブライティングとも違うジャンル。

こういう文章に少し憧れるものの、書き手に含蓄がなければどうにもなりませんし、膨大な量の資料も必要になります。そして何よりも、すでにこのように完成されたものがあるのに、私が似たものを書いてどうなるのかとも思うわけです。もちろん「街道をゆく」シリーズで書かれていない場所を書けばいいのでしょうが、やっぱりモノマネはよろしくありません。間違ってそれがウケたりしたら、それはもう盗作扱いされますし。

それはともかく、「街道をゆく17」を読むことで、旅をするだけでは学べないことがたくさんあるという、当たり前のことに気付かされました。反対に文章を読むだけでは学べないこともある。それはとてもアナログな世界なのですが、知識と経験の両輪があって、ようやく物事の本質に到達できるということ。ただそれも微かに触れることができるくらいで、本質の入り口に立つと表現した方がいいかもしれません。

天草に行って自分の足で駆け回り、歴史を学んだところでそれは表面に触れただけ。でも表面に触れているから書籍によって奥行きを持たせることができます。ひとつの基準があるから深掘りでき、想像力も高まります。それがないのに知識を入れても、それは文字の羅列でしかなく、ふわふわと宙に浮いていつしか消えていきます。私にとっては学校の勉強がまさにそれ。知識だけ詰め込んで、テストでいい点を取れても何の意味もない。

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もちろん私の場合であって、ちゃんと学校の勉強が血肉になっている人もいるのでしょう。私なんかは学校は部活をしに行くところだったので、そもそも勉強に身を入れてないというのもあります。あの頃は器が随分と浅かったのだということ、この歳になってわかります。きっと10代で天草に行っても、「街道をゆく」シリーズを手にしても、1ミリも響かなかったはずです。

この歳になってわかったのは、年齢というのは深みを与えてくれるということ。そして、何歳になっても経験を積み、知識を得ていけば賢くなれるのだということ。間違いなく学生時代より今の自分のほうが深みがありますし、賢さも備わっています。身体的に衰えてきている部分はありますし、そのほかにも失った何かがあるのだと思います。それでも、今の自分のほうが好き。やりたいこともたくさんもありますし。

旅も書も間違いなく人生を豊かにしてくれるもので、幸運なことに私はそれができる環境にあります。貧乏だとか言いながらも、コロナ禍にあってもそこそこ旅行をしています。本を読めるかどうかは幼い頃に読書習慣があるかどうかが影響すると思っていて、これに関しては頻繁に図書館に連れて行ってくれた母のおかげ。

いずれにしてもこれでようやく天草の旅が幕を下ろしました。きっと遠くないうちに島原に行く気がしますが、移り気な私の性格からすると、きっと別の場所に先に行くことになりそうな。九州は毎年のように水害があるので、被害が少なそうな夏までに行けるといいのですが。

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