あの日の羅針盤

  • 2017.01.10
  • (更新日:2019.11.13)
  • LIFE
あの日の羅針盤

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あの日からちょうど10年が経過しました。父が他界したという電話が夜にあり、そのあとどうしたかは覚えていません。喪服を荷物に詰めたつもりが、実家で開いてみると仕事で使う濃紺のスーツだったことは覚えています。

最後に父に会ったのはその7日前、1月3日だったでしょうか。虫の知らせというのでしょうか、めったに実家に行くことがなかった当時のわたしがなぜか年末の帰省をした直後の出来事でした。

実家から移動した先の京都で石田衣良さんの小説「美丘」を読んでいる途中、京都の地下鉄でなぜか涙が止まらなかったのも覚えています。そのとき本能はすでに何かを察していたのかもしれません。

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そういえばあの時、なぜわたしは京都にいたのでしょう?舞妓さんと撮った写真だけが残っています。

そして10年が経過しました。

実はこの10年間、1月10日に父のことを思い出すことはほとんどありませんでした。なぜかわからないのですが、いつも数日過ぎてから「あぁ命日忘れていた」となっていたのですが、それも気持ちが、この日と向き合うことをどこかで逃げていたのでしょう。

10年という月日がようやく多くのことを消化させてくれたのかもしれません。

10年前はわたしは数ヶ月前にマラソンデビューをしたばかりで、裸足どころかまだランナーとしてもようやく走ることの魅力にはまり始めたばかりでした。

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まだ何者でもなかったと言いたいところですが、当時は派遣社員のための情報発信を行っていました。毎週メルマガを発行していましたので、今の自分とはまったく違う自分というわけではありません。

あの日から確実に今の自分へと流れは続いています。

父が他界したあとのメルマガを読み返してみました。あえてここで紹介するようなことでもありませんが、自分のためにも書き写しておきます。

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前略

そしてこの目の前に立ちはだかった大きな壁をなんとかして自力で越えていかなくてはいけないのだと思います。それは一気に超えられるものではなく、マラソンのように1歩1歩進むしかなく、立ち止まらずに進み続けたあとに気がつけば壁を越えていたというものなのかもしれません。ですので、可能な限り以前と同じような生活をして、やるべきことはきちんとやることが大事なのではないかと思います。もちろん、いろいろな意味で以前には戻れませんが。

中略

私の目の前にある壁はまだ全貌が分からないほど大きく、本当に超えられるのか分かりませんが、まずは現実を受け入れることからはじめなくてはいけません。どんな時でも自分のおかれている状況で自分の全力を尽くすには、まずは自分がどのような状態にあるのかを把握しなくてはいけません。結局のところ自分に出来ることしか出来ないわけですから出来ることから逃げずに、正面からぶつかることが大事なのかもしれません。これまでそうしてきたのですから。

まだ、ふとしたことで涙が溢れてしまったり、胸の鼓動が早くなることがあります。それでも私は生きていかなくてはいけませんし、やるべきことがあるのです。今はこの辛さをしっかりと心に刻んで、前に進むだけです。私にとって父は偉大であり、どれだけ言葉にしても言い切れないほどの感謝でいっぱいです。その父の血を受け継いでいるということを誇りに思い、そしてこれからも理想の自分を追求することをやめないことで、この壁を必ず越えていこうと思います。

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思った以上にしっかりしています。そうか31歳の自分がこんなまともなことを書いていたということに驚きです。ついでにその前後も読み返しましたが、すべてまとめてKindleで出版できるかもしれません。

それは冗談としても、今日こうしてあの日のことを振り返ることができたということは、10年という時間をかけてわたしは壁を乗り越えることができたということなのかもしれません。

父は相変わらず偉大です。子どもというのはどうやっても親を追い抜くことなんてできませんし、いつまでたってもひとつの目標です。

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10年前のわたしと今のわたし。比べることになんの意味もありませんせんが、あの日を境に人生の羅針盤は間違いなくこれまでとは違う方向を示し、ライフスタイルや考え方が大きく方向転換したのは間違いありません。

人はいずれ死ぬというあたり前のことを常に意識するようになりました。明日が約束された今日なんていうものはなく、わたしたちにあるのは今だけです。この流れはいつどこで途切れるのかは誰にもわかりません。

いずれ死んでしまうのであれば、私利私欲は持たず、何かに怒ることもなくどんなときもたくさん笑ったほうがいい。誰かの目を気にするのではなく、自分を裏切らないように生きたほうがいい。

そうして10年が経過して、いまのわたしがいます。あの日の羅針盤が指し示した先のまずまず悪くない場所にいるような気がします。

とりあえず今夜は父が好きだったビールでも飲みながら、ちょっとだけ昔のことでも思い出してみようかと思います。


美丘
著者:石田衣良
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