ナイキのサブ2プロジェクト「BREAKING2」が導く未来

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ナイキによるフルマラソンの距離を2時間以内で走りきるプロジェクト「BREAKING2」が、イタリアのモンツァで5月6日に開催されました。

非公開イベントではあるものの、twitterやfacebookなどでの配信を行った結果、多くのランナーが注目するイベントとなり、世界レベルで盛り上がっていました。

タイムとしてはエリウド・キプチョゲが2時間25秒というタイムで、惜しくも2時間切りは達成できませんでした。

レースとしてはペースカーと風よけとなるペースランナーがいて、至れり尽くせりの環境でしたので、どんな手を使ってでも2時間切りを達成させるというナイキの想いが伝わってきました。

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そして話題となったのがカーボン入りのシューズです。ルール違反ではないかと思う人もいるかもしれませんが、シューズはある程度の曖昧な規定はあるものの、カーボンを入れてはいけないという規定はありません。

すでに多くの公式大会でも使われているますので賛否はあるでしょうが、使用が認められたシューズであることには間違いありません。

このブログを読んでいる人の多くが裸足ランニングに興味のある人かと思います。そのためアディダスのBOOSTや今回のナイキのシューズに対して、否定的な意見の人も多いのでしょう。

でもわたしは、シューズの進化というのはありだと考えています。モーターでも仕込んであるならともかく、走りに使っているのはあくまでも自分の筋力であり、シューズはその力を最大限に活かすために存在します。

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走ることは結局のところ、いかに効率よく重心移動するかということに尽きます。これはシューズでも裸足でも同じことです。ロスを減らして重心移動を行えば、速く長く走ることができます。

もちろん今回使用したシューズ「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」の存在なしに、2時間25秒という記録は達成することは考えられません。そういう意味ではドーピングシューズと表現されても仕方ないところもあります。

どんなものでも革新的なものが現れたときには反対派がその革新の邪魔をします。

それは自分の立場を危ういものにすることに対する危機感であったり、これまでに考え方や知識が覆されることへの理不尽さであったり。でもわたしの感覚からすればそんなものはすべて保身でしかありません。

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「あんなシューズは反則だ」と言うのは自由です。

ただ、自分の考え方に合わないものをすべて排除するような生き方や考え方を、少なくともこのブログを読んでいる人は持たないようにして欲しいなとは思います。

そうは言うものの、正直な感想としては「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」がもう少しチューニングをしっかりできていれば、2時間切りも可能だったのではないかとわたしは感じています。

35㎞くらいまでは、このシューズの反発力を活かしながら走っていたのですが、それ以降はほとんど反発力を活かせない走りになっていました。

簡単な話として、カーボンの反発力を生み出すには、カーボンに対して一定の力を加えて変形を起こさせなくてはいけません。疲労がないときにはそれが可能だったのですが、後半になって力がなくなってきた結果、シューズは反発力を失っていました。

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実験として42.195㎞での筋力の変化などを確認できなかったことが、チューニングが完全でなかった最大の理由ですが、感覚的にはもう少しカーボンが薄くても良かったのではないかと、結果論としては感じています。

それもやってみたから分かったことでしかありません。

twitterのつぶやきでは「自分のあのシューズを履けば速く走れるかも」なんてコメントをしている人がいましたが、もし市販品のチューニングが今回と同じようになっているなら、1㎞を3分ちょっとのペースで走らなければ、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」の反発力を活かすことができません。

そして、35㎞以降も筋力が落ちないというだけの鍛え方をする必要もあります。

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ただし、人間はどうしても35㎞以降も同じ力で走りきることはできません。マラソン大会の後半になってもタイムがほとんど落ちない人もいますが、それはテクニックと精神力でなんとかなっているだけで、現実的なパワーは不足しています。

わたしはシューズの反発力を活かすという走り方には、どこかに限界があるだろうなとは考えています。それが2時間の壁の向こう側であることは今回のイベントで多くの人が感じたのではないでしょうか。

今回の企画の本質は実はそこにあります。

環境が整いさえすれば、人間は2時間の壁の向こう側に行けるかもしれない。多くのランナーがそう感じたことで、精神的な壁として立ちはだかっていた2時間の壁が大きく揺らぎました。

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「人間の限界として超えることが出来ない壁」だったのが、「もしかしたら超えられるかも」という意識に変わることで、誰かが2時間の壁を超えてくれる。このイベントはそのきっかけにすぎません。

少なくとも2時間0分台には数年のうちに他のランナーも到達するはずです。

そしてその中の誰かがきっと2時間以内に走りきることになるでしょう。そうなったとき「BREAKING2」が大きな試金石となったということは間違いありません。

今回のプロジェクトで重要なことは、サポート体制やシューズの賛否なんてことではありません。人間の体としてフルマラソンを2時間以内に完走できる可能性を感じられたこと。これに尽きます。

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広告という意味もあるのでしょうが、スポーツメーカーのこうした挑戦はとても素晴らしいことだとわたしは感じています。

そして25秒足りなかったとはいえ、全力を出し切って走ったエリウド・キプチョゲ。レリサ・デシサ、ゼルセナイ・タデッセも気持ちのいい走りを見せてくれました。

できれば現場でそのチャレンジを目にしたかったところですが、インターネットでの視聴だからこそ気づけたことも多々ありました。まだ見ていないという人は最大1週間facebookで視聴ができますので、ぜひチェックしてください。

ナイキのBreaking2のフェイスブックページ

サブ2の達成にはなりませんでしたが、このチャレンジが間違いなくマラソン界に大きな影響を与えるはずです。さて、日本のマラソン界はどう対応するのか。2時間10分の壁で苦しんでいる日本人ランナーに未来はあるのか。

いろいろと興味を持たずにはいられません。もっともわたしが超えるべきは2時間の壁ではなく3時間の壁なんですが。


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著者:ヘスス・スアレス+小宮良之
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