ART SPORTSの破産とランニング業界のこれから

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ランナーの間では今朝からちょっとした話題だったのではないでしょうか。ART SPORTSの破産はほとんどのランナーにとって「まさか」の出来事だったかと思います。

わたし個人としてはART SPORTSにラン仲間が勤めているため、アートスポーツについてあれこれと書くつもりはありません、今回の件に関してはもっと広くランニング業界のあり方についても、考えなくてはいけないような気がします。

アートスポーツの破産はともかく、皇居周りのランステはその多くが経営的に厳しいものがあり、実際に撤退したランステがいくつもあります。ランニング人口は伸び悩んでいるとはいえ、東京マラソンは相変わらず10倍を超える倍率です。

ランナーがランニンググッズを買わないかというと、そういうわけでもありません。ランニングシューズは消耗品ですので、1年に2足くらいは買っているのではないでしょうか。

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そういうわたしはランニングショップにほとんど足を運びません。

まずシューズを買いません。マラソン用のジェルも買いません。裸足が基本ですからソックスも1年に1足買うかどうかですし、Tシャツにいたってはマラソン大会でもらえるものを着ないものから捨てているくらいです。

そういう意味では、ランナーの多くが買い物はするものの、それは年に数回のことなのかもしれません。

もう1990年代のように、雑誌に広告を出せば新製品が売れる時代ではなくなりました。そして何よりもランナーはお金をランニングにつぎ込まない人が多いように感じます。

言葉は悪いかもしれませんが、ランナーは基本的にケチです。

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何に対してもお金を使わないというよりは、ランニンググッズに対してあまりお金を使おうとしません。そのうえ、世の中にはアウトレットショップなどがあり、ランニンググッズを定価に近い価格で買おうという人があまりいません。

わたしは日本が世界で一番安くランニングシューズを買うことができる国だと思っています。

型遅れしたシューズは半額以下で販売されることがあたり前で、1万円以上するはずのシューズが3980円などで売られています。ウェアだって、シーズンが終われば格安で売られます。

さらに最近ではユニクロがスポーツウェアに力を入れ、低価格でシンプルなデザインのウェアを次々に発表しています。ほとんどの人にとって、ランニングウェアはユニクロで十分です。

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ランナーはそういうとことでランニンググッズを購入し、浮いたお金でマラソン大会に出たり、ランニング後の打ち上げ費に回します。

要するに、ART SPORTSに限らず小売店にとってはとても厳しい状態になっているわけです。

ところが、今回の破産の話で、twitterやfacebookでは「よく使っていた」「なくなると困る」といった声をいくつも目にしています。それほどランナーに重宝されていたショップの経営が厳しいという現実。

はっきりしているのは、ランナー人口は多いものの、ランニングと向き合うように取り組んでいる人というのは本当にごく一部だということです。

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わたしは曲がりなりにもランニングの世界に身を置いています。ですので、facebookやtwitterでつながっている人たちの多くがランナーです。だから勘違いしそうになるのですが、「NO RUN, NO LIFE」な世の中にランナーなんてあまりいません。

でもマラソン大会は盛り上がります。何万人ものランナーが参加します。

このことがランニング業界での大きな錯覚を生み出しているのではないかと、わたしは思います。アディダスやナイキがどんどんプロモーションをしていますが、そのプロモーションに合った規模のランナーが存在しないわけです。

しかもランナー人口はいま右肩下がりです。2012年の1009万人をピークに、2016年は893万人にまで減少しています。

十分な人口がいるじゃないかと思うかもしれませんが、これは1年に1回以上のジョギングをする18歳以上の人口です。現実にランナーと言えるのはこの1/10もいないかもしれません。

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ランナーが減ったり、ランニンググッズの売上げが下がるとどうなるか?

メーカーの予算が小さくなり、マラソン大会などのスポンサー料が減ります。そうなると開催を続けることができなくなる大会が増えます。大会の数が減ると、ランニング人口も減ります。

日本のランニング業界は、いまそのようなスパイラルに入ろうとしています。そのひとつの象徴がART SPORTSの破産なのかもしれません。

ただ、ランニングの世界はこんなブームが来る前からあり、規模が小さくなったとしてもこれからも続いていきます。そんな中でランナー自身はどうランニングと向き合っていくのか。

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わたしはそろそろ速さだけ求めるランニングには限界が来ているように感じています。多くのランナーがウルトラマラソンやトレランに移行しているのがその証拠ですし、万里の長城マラソンのようなクレイジーなレースを心から楽しんでくれている状況もその現れです。

これからランナーがどのような方向に向かっていくのか。ランニングショップはそれを見極めて、独自の色を出しつつ利益を出すという難題と向き合っていかなくてはいけません。

マラソン大会の運営者も、スポンサーありきの運営に限界が来る前に次の一手を打たなくてはいけません。

そして、ランナーは……できればもっとランニンググッズを買ってもらいたいところですが、どう考えても大量消費の時代ではなくなりましたし、それを期待するのはちょっと無理があります。

ですので、ランナーにはマラソン大会以外の走る楽しさを早めに見つけてもらいたいと思います。

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走ることが目的ではなく、走ることを手段にする。これがランニングを長く続けていくためのひとつのポイントです。仲間と打ち上げをするために走るのでもかまいません。

ブームの消滅とともに走るのを辞めてしまわないために、ランナーそれぞれができることを今のうちに始めてみませんか?街道ランやグルメラン、旅ランのようにできることはいくつもあります。

ランニング業界に身を置く1人として、今回の出来事はとても危機感を持たされました。

わたし自身も走ることでできる楽しさをもっと情報発信して、ランニング業界が少しでも盛り上がるように、微力ながらできることをしっかりやらねばと感じています。


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著者:永井孝尚
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