歴史街道丹後100㎞ウルトラマラソンで築かれた日本と台湾の絆

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歴史街道丹後100㎞ウルトラマラソンは国際親善大会です。昨年の優勝者は、今年の3月11日に台湾の南横超級マラソンに出場しています。そして歴史街道丹後100㎞ウルトラマラソンにはたくさんの台湾人ランナーがやってきました。

残念ながら台風の影響で、大会そのものは中止になってしまいましたが、100kmと60kmにはそれぞれ15人の外国人ランナーがエントリーしています。

その多くが、50kmの元日本代表である出口光さんの呼びかけによって集まった台湾人ランナーです。彼は地元である京丹後を台湾人ランナーとセルビア人ランナーに気持ちよく走ってもらうために、今回はたくさん自分のことを犠牲にしつつも、全力で動き回っていました。

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雨で中止が決まった後も、日本まで来て走らないで帰らす訳にはいかないと、自主開催で約46kmのレースを行いました。自分の仲間にサポートをお願いして、自らも走りながらコースガイドをしています。

もちろん、それだけではありません。少しでも安く観光を楽しめるように交渉をしたり、今回の国際交流を知ってもらうために、様々なところに働きかけをしていました。

それはすべて「喜んでもらいたい」という一途な気持ちからくるものです。

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わたしもそこそこ愚直なタイプですが、出口さんはわたしよりもはるかに真っ直ぐで、しかも揺らぐことのない太い軸を持っています。そういうタイプですので、時としてあちこちにぶつかります。

普通の人なら絶対に曲がってしまいそうなときにも、真っ直ぐを貫く強さ。

ただ、真っ直ぐすぎて誤解されることがよくありますし、意見がぶつかることもあります。ついさっきも「facebookで炎上させてしまいました…」と凹んでました。でもそれもこれも真っ直ぐだからこそ、情熱があるからこそのこと。

それでも今回で言えば、応援者も含めて40人を超える外国人の訪問者全員に、楽しんでもらうことだけに集中していました。そういう気持ちは必ず相手に伝わります。

テクニックとかノウハウとかそういうことは関係ありません。人間と人間が向き合うとき、相手のためになんでもするという姿勢は、必ずその人の心を動かします。これはわたしが万里の長城マラソンでやっていることと同じです。

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自分の喜びは、自分の行動によってひとつの笑顔が生まれることにある。

この点において、わたしと出口さんは心の深い部分で繋がっていると勝手に思っています。ですので、どちらも自分が儲かることなんてこれっぽっちも考えていません。世の中にはお金で買えないものがあることをお互い理解しています。

そういうことを言うと、必ず「甘いことを言ってる」と馬鹿にした目で見てくる人たちがいますが、おそらくそういう人たちと、わたしたちが交わることは一生ないのでしょう。

人生において何を優先すべきかということは、人それぞれ違います。

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安定した収入を得て、子どもを育ててということを大切にする人もいれば、世界中を旅して刺激のある人生を大切にする人もいます。ビジネスで成功することを重視する人もいれば、目の前の1人を笑わすことにすべてを注ぎ込む人もいます。

何が正しいなんてことは絶対にありません。

ただ、誰かの心を動かそうと思ったとき、このやり方しかできないのがわたしたちです。全力で1人1人と向き合って、全力で期待に応える。そこに効率とか、小手先のテクニックなんてものはありません。

でも、今回の彼の行動を見ていると、間違いなくそれによって多くの台湾人ランナー、そして世界トップクラスの走力を持つセルビア人ランナーの心を動かしていました。

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大会が中止になると決まっても、わざわざ台湾から日本までやってきましたし、セルビア人ランナーのIvanさんは、何もかかっていない自主興行のウルトラマラソンで、全力の走りをすることでイベントを盛り上げてくれました。

台湾人ランナーも含めて、本心は正式な大会を走りたかったのだと思います。この日のために調整してきた人たちは、心の整理がなかなかつかなかったと思います。

それでも、外国人の参加者のために全力で動き回る出口さんを見ているので、ワガママを言うようなことはありません。言いたいこともあるはずですが、それは飲み込んで、今を全力で楽しんでいるように見えました。

そうすることが、出口さんに対するお礼であると分かっているからでしょう。

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何百回の「ありがとう」よりも、用意してもらった環境でとにかく楽しむ。たくさん笑顔を作ることがお礼になるということを彼らは知っています。

中国語のありがとうは「謝謝」です。これに対する返答は「不謝」です。

中国語会話などでは「不謝」を「どういたしまして」訳すことがあるのですが、実際はそうではありません。その字のごとく「感謝なんて必要ない」という意味です。「助け合って当然だろ?」そういうニュアンスが含まれています。

中国人(台湾人)と日本人の文化の違いが出ているおもしろいところです。そして中国人や台湾人と仲良くなるには、「不謝」な関係になれるかどうかということがとても重要です。

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中国人や台湾人は仲間のために全力を尽くすというのはあたり前で、台湾人の場合は仲間でなくても困っている人のために全力をつくすのはあたり前という感じがあります。

そして、全力を尽くされた側は、相手がピンチになったときに全力で助けよううとします。そこにあるのは感謝というよりは信頼です。そして、今の日本に欠けているのはその「信頼」です。

SNSが定着したことで、表向きの人間関係だけは薄く広がっていきましたが、信頼関係というのはどんどん希薄になっているような気がします。自分と繋がりのある人のうち、すべてを投げ捨ててでも助けたいと思える人はどれだけいますか?

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本当は「自分がピンチになったときに、すべてを投げ捨てて助けてくれる人はどれだけいますか?」と聞きたいのですが、それは質問そのものが傲慢な気がするので、あえて言いません。

いずれにしても、出口さんと台湾人ランナーたちの間には、決して壊れることのない信頼関係というものが築かれました。もし彼が台湾に行ったら、とてつもない歓迎を受けることでしょう。翌日起きられないくらいお酒を飲まされるに違いありません。

そして、これはまだ始まりにすぎません。来年はもっとたくさんの台湾人が、歴史街道丹後100㎞ウルトラマラソンにやってくるでしょう。いや、この流れからすると世界中からランナーが集まってくる可能性もあります。

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たった1人の狂気とも言えるほどの情熱が、何百人ものランナーの心を動かすかもしれないというワクワクする未来が、すぐそこに待っています。それを受けてわたしたちは何をすべきか。

「日本に来てくれてありがとう」と言葉にするのではなく、わたしも行動で彼らに応えたいと思います。


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