クローズアップ現代+のマラソン大会特集で語られなかったこと

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クローズアップ現代+のマラソン大会特集、面白い切り口だなと思いながら見ていましたが、結論としては「これでいいのか?」と感じる内容でした。限られた時間の中で情報を伝えるためには仕方ないことですが、情報を意図的に歪めているように感じるところもありました。

特に気になった点が3つありますので、それについてどのような点がおかしいのか、何が納得できないのかわたしなりの解釈を入れながら説明します。

目次

「レースではスポーツドリンク」という切り口

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まず気になったのはつくばマラソンの取り組みで、参加者に練習会を開催して走れる身体を作ってもらう。それも科学的なアプローチで行うという面白い内容でした。

ところがその練習会の映像で、水とスポーツドリンクの使い分けのような説明がありました。そこでは「レースははスポーツドリンク、練習は水」というニュアンスのことが語られ、練習は水を飲んで糖分を使わず体脂肪を燃やすと取れる説明がありました。

映像には入ってないのですが、おそらく教授は塩分補給についても説明していると思うのですが、その部分の映像はありませんでした。教授が塩分補給について語っていないのか、それともそこがカットされたのかはわかりません。ただ印象としては「練習は水」というイメージだけが残ります。

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NHKとしては「面白いアドバイス」と感じてこの部分だけを切り出したとすれば、それはとても危険なことです。

「練習は水」をランナーが鵜呑みにしたらどうなるでしょう?来年の春から夏にかけては熱中症のランナーが増えていくことでしょう。そんなこと自分で判断しろと思うかもしれませんが、世の中にはNHKが言ってることは絶対に正しいと思っている人たちがいます。

映像を編集した人は「科学的な情報」を映像に入れたつもりかもしれませんが、中途半端な情報なら入れない方がマシです。

中国人ランナーが日本に走りに来ているのか

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海外ランナーを取り入れようとしているマラソン大会が増えているという内容で、わたしも個人的にそう感じてましたし、嬉しいことでもあります。

ただ、その中で中国が空前のマラソンブームだということを伝えていました。それは事実ですが、その流れで空気の悪い中国ではなく、空気のきれいな日本に走りに来る中国人が増えているというようなことが語られました。

さて、どこの大会で中国人が走っているのでしょう?

いや、正確には中国人も走っています。香港に住む中国人ですが。香港も中国ではないかと思うかもしれませんが、例えば香港の人が簡単に北京マラソンを走れるかというとそうでもありません。

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香港は中国でありながら中国ではありません。これはとても複雑な問題で、むしろクローズアップ現代+で取り上げると面白い内容なのですが、ここでは香港のランナーを中国人として、空気の悪い中国の大会ではなく日本の大会を選んでいるとしていました。

まるで中国本土のランナーが日本を走りたがっている。中国人が日本に憧れているというようなスタンスで語っています。

中国人はもはや日本に憧れなんてほとんどありません。ある部分ではとっくに日本よりも豊かで暮らしやすくなっています。その事実を伝えるのが報道の仕事なはずですが、この国ではなぜかその事実をひた隠しにしています。

そして、未だに中国人が日本に憧れているというような印象を与えようとします。

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この番組を観た人はきっと、「最近は中国人ランナーが増えてるらしいよ」という会話をします。情報は正確に伝えるべきです。

繰り返しますが、増えているのは台湾人ランナーと香港人ランナーです。北京や上海から日本に走りに来るというのは簡単なことではありません。

中国本土のランナーの多くは国内のマラソン大会で満足しています。熱狂的な日本好きの台湾人や、香港の人たちとは同じ枠で語ることはできません。

誤解を招くような情報伝達を意図的にしているのか、それともキチンと伝わっていないかもしれないという危機感がないのか。いずれにしても、お金を徴収して作っているテレビ局としてはいかがなものかと思います。

さいたま国際マラソンは改善されるのか

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さいたま国際マラソンの評価が下がった原因の1つがボランティア不足にあるという内容で紹介されていました。そしてそれが改善されるから今年は大丈夫というような内容でした。

実際にはもっとたくさんの理由があり、さいたま国際マラソンのスタッフもそれは理解しているはずですし、改善に向けて努力をされているのでしょう。でもさいたま国際マラソンが低評価になる本当の理由を掴んでないのだとしたら、今年も間違いなく不評に終わるでしょう。

さいたま国際マラソンが上手くいかないのは、誰がトップなのかがうやむやになっていて、いくつもある頭が勝手に動き回っていることにあると、わたしは感じています。。マラソン大会の運営は組織的に行わなくてはいけません。

しっかりとしたトップダウン構造になっていないと、数万人ものランナーをきちんとさばくことはできません。数千人のボランティアさんを効率的に動かすこともできません。

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成功している大会のほとんどすべてと言っていいくらい、組織のトップがマラソン大会を心から楽しんでいます。わたしの経験上、知事や市長が走っているマラソン大会でハズレはありません。

トップダウンで統制のとれた組織になっていないと確実に現場が混乱します。特にボランティアさんは指示に従うしかできませんので、その上に立つ人がキチンとした判断を的確に行わなくてはいけません。

指揮命令系統がしっかりしていないから、それぞれが自分の責任でやっていいことがわからない。なので「おかしい」と思っても、何も改善できません。スタート・ゴール会場の動線のひどさだけでもそれがわかります。

トップがしっかりしていないと、責任も曖昧になりその下も本気で取り組むことができません。現場のスタッフやボランティアさんは一生懸命にしているのはわたしも目にしています。でも、ベースがすでにおかしくなっているから、その努力もむなしく低評価になっています。

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さいたま国際マラソンの評価を上げる唯一の方法は、トップにすべての権限を委ねること、周りはそれを全力でサポートすること以外にないと思うのですが、そう思うのはわたしだけでしょうか。

さいたま市がトップなのか、埼玉県がトップなのか、それとも陸連がトップなのか。今の体制のままでは、同じことを繰り返すだけです。

もちろんそんなことテレビで言えるわけもなく、運営も公務員でしょうからそんなことは口が裂けても言えないでしょう。だから、「ボランティアさんの数が」みたいな表現しかできないのでしょう。

それをNHKが番組として紹介する意味あるのでしょうか?

とはいえ、テレビに出てこない部分で大幅な改善もしているはずです。今年は昨年ほどひどい評価にならないことを期待しています。取材に行けないのが残念ですが、どういう結果になったかは追っていこうと思います。

番組を通じて伝わってきたこと

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唯一この番組で良かったのは、マラソンにはお金がかかり、ほとんどのケースで税金が使われているということを明らかにした点です。ウェルネスの坂本さんは受益者負担ということを言います。

いまは、ランナーが払った以上のお金をかけてもらって走ってます。なのに、台風などで大会が中止になったら、収支を発表しろと言ったり、返金しろなどと無理を言う人がいます。

マラソン大会は走らない多くの人たちの税金によって成立しています。

もちろんかけた税金よりも経済効果が大きいなら、それは正しい税金の使い方なので、税金を使わないことがいいこととはいいません。ただ本当にマラソン大会のに、そんなにもお金をかけて開催する必要があるのかという議論は必要です。

1人が1万円近いお金を払って、まだ足りない。

そんなマラソン大会って本当に正しいのでしょうか?税金やスポンサーのお金がないと開催できないマラソン大会。そこを根本的に見直す必要はないのか。これからの課題になるような気がします。

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番組としてはマラソンに詳しいし人が、きちんと監修すればいいのになとは思います。

自分たちの常識だけで番組を作るから結論ありきで情報を歪めてしまう。

それを作った人たちにその自覚はなく、いい番組を作ったと思っていることに問題があります。正しく情報を伝えられていないという自覚。それが欠如しているというのはとてもこわいことです。

今回はマラソン大会だったので、わたしは「そうじゃないだろ」と思いましたが、おそらくメディアの発信している情報の多くがこうして歪められているということです。

正しいことを正しく伝えてもらいたい。意図的に情報を歪めているわけではないと信じたいところですが、だとしたらあまりにも稚拙すぎます。いずれにしても救われません。せっかくのいい切り口なのにもったいないな、そんなことを感じたクローズアップ現代+でした。


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著者:高山 正之
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