秩父市はなぜトレランの後援をしないと決断したのか

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埼玉で開催されていたトレランレースで死者が出たことで、秩父市が今後の後援をしないという方針を示しました。おそらく多くのランナーが「ひどい」と思ったかもしれません。

でもわたしは、秩父市としては妥当な判断だと思います。

困っているところを支えるのが後援の立場だろうと思う人もいるかと思いますが、支えるにしても大義がいります。自治体が大会を支援しているのと個人が大会を支援しているのとは訳が違います。

そして、何よりもこの事故について、秩父市長が知ったのが翌日の新聞だったということに最大の問題があります。状況の説明があったのは大会の2日後です。

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大きな事故でしたので、運営側が後手後手に回ったのは仕方がないことですが、では秩父市の立場、市長の立場からすればどうなのでしょう?後援していますから、どこかから説明を求められたとしても、何も連絡がありませんので答えられません。

説明を求められるタイミングが早かったら、事故について「知らなかった」となるわけです。そうなれば「秩父市は何をしている」と責められます。

それでも守ってやるのが男気だと言うのであれば、そう思う人が集まって資金面でも運営面でもサポートするべきです。秩父市の判断がおかしいなんて言うのは、相手の立場を考えれば言えないはずです。

少なくとも事故が起きた直後に、秩父市を含めたすべての後援者に簡単な事情説明をしておけば、「今後かかわらない」なんてことにはならなかったのではないかと、わたしは思います。

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でも、大会を企画したファントレイルズがずさんな運営をしていたかというと、そうではないと思います。ファントレイルズを立ち上げた奥宮さんをトレイルランナーとして、人間として魅力を感じている人は数え切れないほどいるはずです。

何事も真摯に向き合う姿に、彼を慕う人はどれだけいるのか分からないほど大勢います。彼が関わる運営で、下手な運営がされるとは思えません。これはわたしの推測ですが、間違っているとも思えません。

じゃあ何が良くなかったのか。これはもう後づけでしかありませんが、何かが起きたときの連絡網が出来ていなかったことにあるのではないでしょうか。これはファントレイルズだけの問題ではありません。すべてのマラソン大会で考えなくてはいけない問題です。

おそらく東京マラソンで、誰かが倒れて亡くなったとします。おそらくそのときにどう対応するかというマニュアルがあるはずです。ボランティアのトップや現場の人、裏方さんまで管理者がそれを共有しているはずです。

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何かが起きたとき、誰がどこに連絡するのか。そのときの指揮命令は誰が行うのか。

おそらく、誰かが亡くなったときだけでなく、地震などの自然災害やテロまで想定して、そのときに誰がどう動くのか決められているはずです。ほとんど出番のないマニュアルですが、それがなければ何かがあったときに最善の行動を取ることができません。

東京都だけでなく、こういうことはすべての自治体であたり前のように準備されています(されているはずです)。お役所仕事なんて揶揄されることのある役所の働き方ですが、決められたルールに則って動くこと、ルールを用意しておくことにおいて、役人ほど上手くできる人たちはそうはいません。

用意周到が文化のお役所において、報告が2日後なんていうのは考えられないことです。

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ですので、このような自治体と手を組んで何かをするときには、考えられるすべてのトラブルに対して、そのあとの行動をマニュアル化しておく必要があります。

それは自治体対策のためだけでなく、自分たちが動くやすくするためにも必要なことです。

事故が起きて慌ててその場で考えて動くのではなく、マニュアルに従って一つひとつ的確に処理していく。その中で臨機応変に動ければベストですが、指針がなくその場だけで動くというのは悪手のひとつです。

だからマニュアルを用意しておかなかったことが悪いなんて、わたしは口にするつもりはありません。後づけでしかないと言いましたが、こうなってから分かったことでもあります。

ファントレイルズでは、警察や消防への連絡までのマニュアルはおそらく用意されていたのだと思います。でも秩父市への連絡が遅れたことが後援の中止につながるとは想像もしていなかったと思います。

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いま、マラソン大会を開こうと思ったら誰でも簡単に開催することができます。いや、実際にちゃんとした大会を開催するのは「簡単」ではありませんが、開催だけであれば誰にでもできてしまいます。

でもトラブルが発生したときに間違いのない行動ができる運営団体というと、本当に限られた数しかありません。そもそも、そんなマニュアルが必要だと思ったことのない団体すらあると思います。

想定できるすべてのトラブルに対して準備する。気の遠くなるような、しかもうんざりするような作業ですが、大会を運営する以上は、これから必ず必要になることです。

今回の秩父市の対応を見ると、後援を依頼するときに事故が起きたときの対応方法を問われるケースも増えるはずです。そのときに「決まってません」ではどこもサポートしてくれません。

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秩父市がトレランを後援しないと決めた理由。これがすべてではないでしょうが、後援しないという判断も「そういう判断もわからなくはない」くらいには思えたのではないでしょうか。

きちんとした危機管理体制がなければ、どの自治体はこれからもトレランから距離を置いてしまいます。大会を運営する人は、早急にその体制を整えること。そしてそれをオープンにしなくてはいけません。

それとは別に、ファントレイルズを支援したいという人、奥宮さんを支援したいという人は今がそのときです。山が好きで、トレランを愛するのであれば見て見ぬふりをしている場合ではありません。

秩父市にトレイルランナーの絆を見せつけるくらいの気持ちでひとつになってください。

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どんなときだってピンチはチャンスです。全国のトレランの大会が社会から締め出されないようにするためにも、もっと自由に山を駆け抜けられるようになるためにも、それぞれができる形で動いてください。

いまここで傍観者にならないこと。みんなが動き出さないと、このさきトレランには先細りの未来しかありません。

何をすべきか?

それが見えていないという人は、奥宮さんの出された「レース中止に至った経緯のご説明」に目を通してみてください。1人のランナーとして自分がいま何をすべきか、その答えが見えてくると思います。


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