ガイアの夜明け「”陸の王者”を目指せ!」をランナー目線で考える

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ガイアの夜明けできねや足袋のMUTEKIとToe-biが登場し、そこにNIKEのヴェイパーフライ4%が絡んでくるという面白い展開になっていましたが、とてもよく出来た番組だなと改めて感じました。

しっかりとした取材で、事実と願望を一緒にすることなく、そしてのめり込んで見たくなるストーリー仕立て。そして本当に伝えたいこと以外で、必要以上の情報を与えない姿勢。

ガイアの夜明けが始まった当初は、毎週欠かさず見ていたのを思い出しました。会社で尖るのを止めたくらいから見るのを止めましたが。

ガイアの夜明けとして伝えたかったことは、「日本の伝統技術を活かして挑戦する姿」でした。このまま留まっていても衰退していくだけ。それはまるで現在の日本メーカーを表してるようにも見えます。

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そんな日本でもこれまで培った技術を活かしきれば、ここからでもまだ立て直せる。そういうメッセージが伝わってきます。

そのメッセージを伝えるために、きねや足袋とNIKEの方向性の違いを示したのでしょう。

その結果、きっと裸足ランナーたちは、ちょっと誇らしい気持ちになり、シューズランナーもToe-biとヴェイパーフライ4%に興味を示したはずです。情報に偏りもなく、どちらがいいというようなことにも触れないことで、ランナーは自分でいろいろと考えさせられたはずです。

この手法はわたしがよくとる手法なのですが、もしかしたら毎週見ていたガイアの夜明けに影響を受けているのかもしれません。

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それはともかく、今回の番組をハダシストとして、ランニングジャーナリストとしてきちんとまとめておく必要があるかなと思って、ブログ記事にしました。

番組でもどちらがいいということもなく、それぞれが交わることなく語られていましたが、きっとこれを交差させるのがわたしの役割です。

放送を見た人はそれぞれをパラレルの世界として受け取ったかもしれません。それでToe-biもヴェイパーフライ4%いいなと。ボーナスで両方買ってしまおうと思った人もいるはずです。

でも、この2つはパラレルではありません。きちんとランニングシューズとしてのストーリーがあります。

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まずランナーの多くが「シューズに頼りすぎている」ということを高岡さんが言っていましたが、それをToe-biやMUTEKIを履いて走ることで改善させます。わたしがいつも言っている「走れる体づくり」です。

ただし、Toe-biやMUTEKIを履いたら速くなるというわけではありません。Toe-biやMUTEKIを履いて走ると、これまで使っていなかった筋肉を使うようになるため、筋力が上がって速く走れるようになります。

足袋シューズはあくまでも、体の土台を作るためのランニングシューズです。

もちろんこれでフルマラソンを走ることもできます。でもオリンピックで戦えるシューズかというと、そうではありません。その世界になってくると伝統の技術だけでなく、科学的な要素を取り込む必要があります。

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わたしはナイキのペガサスを履いたときに感じたことが「誰が履いても真っ直ぐ走れる」「これが最先端技術の塊」だということでしたが、ペガサスはヴェイパーフライ4%と同系列で売られていますので、コンセプトは同じなのでしょう。

ただ、ペガサスでさえ驚異的な技術力だったので、ヴェイパーフライ4%の最先端技術がどれくらいすごいものなのかは想像もできません。ただ、速く走るための理論は理解しています。

ドーピングシューズと揶揄されているシューズですが、技術の粋が集まっているというだけで、元エンジニアのわたしはワクワクします。そして、大企業とはいえ、それを開発した人の情熱を考えるとグッと来るものがあります。

確かにこのランニングシューズを履けば、速く走れるようになります。

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でもこのシューズを履けば足は弱っていきます。

わたしが初めてアディダスのBOOSTシューズを履いたときがまさにそうでした。そこそこ美しかったふくらはぎが、1ヶ月後には見るも無残な弱々しいものになっていました。

これを「無駄な筋肉を削ぎ落とした」と考えるべきなのか、体が弱っていったと考えるべきかは様々な意見があると思いますが、わたしの持論では「高機能シューズは足を弱くする」です。

ナイキがサポートする選手でも、普段の軽い練習ではヴェイパーフライ4%ではなく、反発もクッション性も少し落としたペガサスを履いています。本当にどんなランナーでもヴェイパーフライ4%で速くなれるなら、トップアスリートはヴェイパーフライ4%でジョグをするはずです。

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でもトップアスリートは3タイプのシューズを使い分けています。これがガイアの夜明けでは語られなかった部分ですが、ヴェイパーフライ4%を履きこなすには、この魔法のシューズを履き続けてはいけないということになります。

ですので「練習用にToe-biやMUTEKIで筋力をつけて、レースはヴェイパーフライ4%」がひとつの結論になります。でも現実はもう少し複雑です。実はその組み合わせはNGの組み合わせになってしまいます。

放送ではヴェイパーフライ4%はどう走っても速くなると言われていましたが、実際にはスイートスポットがあり、このシューズに適した走り方があります。最高のパフォーマンスをするには最適な走り方が必要です。

このため、あの厚底シューズと同じ形状で、ヴェイパーフライ4%よりも足をサポートしすぎないシューズが必要になります。そこでナイキはペガサスとズームフライ、そしてヴェイパーフライ4%の3種類をラインナップしています。

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販売するときにはこれを初心者用、中級者用というような売り方をしています。番組でもレベルに合わせて3種類をラインナップと言っていましたが、実際には走力に合わせてではなく、使い方に合わせて3種類です。

ヴェイパーフライ4%で最高の結果を出すにはなんと3種類のシューズを揃えなくてはいけません。

さすがのナイキもそこまでは言っていません。でも、筋力を落とすことなくサポート力の強いシューズで速く走り続けるには、この組み合わせは絶対です。Toe-biやMUTEKIで練習をすると、ヴェイパーフライ4%に合わせた最適な走り方ができなくなります。

ただ、最近のランニングシューズのトレンドはほとんどがこのタイプで、走り方にシューズを合わせるのではなく、シューズに走り方を合わせます。そうすることでシューズメーカーはランナーの囲い込みができます。

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じゃあ、結局Toe-biやMUTEKIとヴェイパーフライ4%はパラレルじゃないかと思うかもしれません。それでもわたしは、それぞれがパラレルではないと思っています。

ランナーは徹底して体を作る時期があります。数ヶ月という短い期間ではなく、数年かけて走れる体を作ります。この時期にToe-biやMUTEKIを履き、ある程度のレベルに達した段階でヴェイパーフライ4%に移行する。これがあるべき姿だとわたしは思います。

わたしたちはついついすぐに結果を追い求めようとします。でもあれもこれもは手に入りません。すべては段階を踏んで行う必要があります。速くなりたいのであれば、速く走れるシューズを手に入れるのではなく、速く走れる体を作ること。

それは一朝一夕で出来ることではありません。結果がすぐに出なくても時間をかけて体を作り上げる。そして、もうここまで作ればいいだろうという段階まで待ってから、速く走れるシューズを手にすればいいんです。

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厳しい言い方をすれば、今回のガイアの夜明けを見て両方のシューズを買う人は愚かです。二兎追うものは一兎をも得ずの典型的なパターンです。

Toe-biやMUTEKIもヴェイパーフライ4%も素晴らしいシューズです(Toe-biとMUTEKIは履いたことないので、コンセプトとイメージでしか語れませんが)。でも同じ時間軸で共存はできません。

それぞれのシューズのコンセプトをきちんと理解し、その特性と自分の方向性を考えて使い分けて欲しいと思うのですが、今回の放送を見る限り、そういう考え方を浸透するのにはまだまだ時間がかかりそうです。


陸王
著者:池井戸 潤
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