どっちを選ぶ?adidas adizero Sub2とNIKE ズームヴェイパーフライ4%

どっちを選ぶ?adidas adizero Sub2とNIKE ズームヴェイパーフライ4%

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2017年からマラソン業界ではひとつのシューズが注目を浴びています。NIKEズームヴェイパーフライ4%、ナイキが総力をあげて作り出したフルマラソンを2時間以内で走るためのランニングシューズです。

世界のメジャー大会のほとんどを、このヴェイパーフライ4%を履いたランナーが獲得していること、そして今年の東京マラソンで更新された日本記録を出した設楽悠太選手の足元にもヴェイパーフライ4%がありました。

この話題のシューズに対抗するランニングシューズとして、アディダスはadidas adizero Sub2を発表しました。シリアスランナーとしてはどちらのシューズを履くべきか悩みどころですよね。ここでは2つのランニングシューズを比較しつつ、どのような特性があるのかご紹介します。

adizero Sub2とズームヴェイパーフライ4%の現在地

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世界に誇る日本の名工、三村仁司さんも「ランニングシューズで順位が決まる競技がある」と、ヴェイパーフライ4%を意識した発言をしています。

一部でドーピングシューズと揶揄されているこのシューズは、もはや疑うことなく「勝てるシューズ」として、その地位を揺るがないものにしています。

「このシューズなら自己ベストを更新できる」そう確信して、ヴェイパーフライ4%を履き始めたトップアスリートも少なくありません。契約で他メーカーのシューズしか履くことができない選手は、おそらく歯痒い思いをしていることでしょう。

そんなナイキに対して、黙っていなかったのがアディダスです。2013年BOOSTフォームを搭載したランニングシューズを発表し、ランニングシューズの新しい時代を作るきっかけになったのがアディダスです。

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そんなアディダスは、この1年間でナイキに圧倒され続けている状態が続きました。これまでトップアスリートに提供していたJAPAN BOOST(海外名アディゼロ・アディオス)は、ほぼ完成されたシューズで、これ以上の性能向上が期待できない状態にありました。

それならば、これまでのノウハウを活かしながらゼロからシューズづくりをすればいい。そうして作られたのが2018年3月16日に発売になるadizero Sub2です。

世の中のトレンドが完全にヴェイパーフライ4%に向いているうえに、adizero Sub2のお披露目とも言える東京マラソンで、キプサング選手はまさかのリタイア。とても注目度の低い状態で発売日を迎える可能性があります。

ただはっきりしているのは、このadizero Sub2も2018年に注目されるシューズのひとつになるということです。

それぞれのコンセプトの違い

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ヴェイパーフライ4%とadizero Sub2はまったく正反対のコンセプトで作られたランニングシューズです。ヴェイパーフライ4%はよく知られていますように、これまでの常識を無視した厚底シューズです。

さらにカーボンプレートをソール内に仕込み、これまでにない推進力を作り出して入ります。科学の粋を集めた、足し算で作られたランニングシューズがヴェイパーフライ4%です。

一方のadizero Sub2は無駄なものを可能な限り削ぎ落とした、引き算で作られたランニングシューズです。

面白いことに、足し算で作られたランニングシューズと引き算で作られたランニングシューズの重さはそれほど違いはありません。

NIKE ZOOM VAPORFLY 4%:184g (28cm 片足)
adidas adizero Sub2:160g(27.0cm 片足)

「軽さは正義」これはマラソンシューズでの常識であり、これまではアシックスなどの日本メーカーが得意としてきた分野ですが、もはや軽さの面で日本メーカーに優位性はありません。

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ヴェイパーフライ4%の基本的な考え方は、スタートからゴールまでキロ2分50秒で走ることができれば、フルマラソンは2時間以内で走れるという考え方がベースにあります。ですので、最後まで失速せずに、スタートと同じ走りを継続できるようにするというアプローチをします。

このため、フルマラソンの距離を走り切っても、まだ足には余力が残ります。その結果、大迫選手や設楽選手のように「回復が早い」と感じることに繋がります。

一方のアディゼロサブ2は、最後の一滴まで余すことなく力を出し切るためのランニングシューズです。最後に余力があるなら、それも絞り出せばもっとタイムが縮まるはず。そういう基本方針のもとに作られているように感じます。

ゴールした瞬間に燃え尽きて消えてしまう。そういう走りをするのがadizero Sub2で、もっと科学的なアプローチをしているのがヴェイパーフライ4%です。

どちらが正しいということではなく、あえて優劣をつけるなら、それはこれからの数年間の活動を追うしかありません。数年後に、どちらが優れていたらという結論が出るかもしれませんが、現時点で答えは出せません。

フルマラソン2時間の壁はどちらが先に超えていくのか

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多くのランナーが気になるのは、どっちのほうがフルマラソン2時間の壁を超えていくかということかもしれません。これはランニングシューズの性能だけで決まるものではないため、明確な答えはありません。

ただし、ここ数回の世界最高記録を更新したのは、すべてアディダスのランニングシューズです。

この領域になってくると、本当にわずかな差で記録が変わります。当日の天候やランナー自身のコンディション。ペーサーの調子など、すべてが整ったとき世界最高記録が生まれます。

このままいけばヴェイパーフライ4%を履いた選手が世界最高記録を更新し、2時間の壁を超えてくると思っている人も多いようですが、ゴール後に余力があるというコンセプトが最後に引っかかるようにわたしは感じています。

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気合と根性をこよなく愛する1人としては、オールアウトするアディダス系のランニングシューズのほうが、最後の最後でいいタイムを出す。少なくともここまでは歴史がそれを証明しています。

悲しいのはこの2時間の壁論争に、日本メーカーが一切入っていないということです。アシックスやミズノ、そういった、世界を戦ってきたメーカーが完全に置いてけぼりをくらっています。

おそらく、この2強時代(今は実質1強時代)に割り込んでくるのは日本メーカーではなく、ニューバランスです。

adizero Sub2とズームヴェイパーフライ4%どっちが買い?

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もし、今の自分の能力のまま自己ベストを更新したいならヴェイパーフライ4%が適しています。

走り方を身につけるという作業が必要になりますが、このシューズに替えるだけで、タイムはほぼ間違いなく更新できます。ただし、そこからさらに記録を伸ばすとなると、いかにシューズを履きこなすかという視点でトレーニングを行うことになります。

「こういう走り方をすればタイムが伸びる」マラソンに対して、そういう科学的なアプローチをしているのがナイキのヴェイパーフライ4%。

一方のadizero Sub2は自分の実力以上の結果は出ません。履いてすぐに結果が出るのは、一部のトップアスリートだけです。ほとんどの市民ランナーは「大して速くならないシューズ」と受け取るかもしれません。

ただし、鍛えれば鍛えるほど、ランニングシューズがランナーを支えてくれます。その瞬間、ランニングシューズはただの道具ではなく相棒になります。

ランナーの個性を大事にして、それをサポートするのがアディダスのadizero Sub2。同じ2時間切りを目指すシューズでも、そのアプローチ方法が違います。

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悩ましいのが、いずれもレース用で、走行距離可能距離がそれほど長くないということです。

いずれも200キロ保つかどうかと言ったところです。ヴェイパーフライはカーボンプレートを使用していますので、足を包み込む素材に限界があります。adizero Sub2はソールの溝が安定した走りの鍵を握りますので、ソールが削れるとその効果が薄れてしまいます。

もちろん200kmを超えても走ることはできますが、その性能を100%活かすことはできません。このため、フルマラソンの走行可能回数で数えると、1回に5000〜7000円近く払うことになります。

NIKE ZOOM VAPORFLY 4%:25,920円(税込)
adidas adizero Sub2:19,440円(税込)

普通のランナーはその価格を見て目が覚めたかもしれません。お金を出してタイムを買う。そんな感覚になったかもしれませんが、これが現在のランニングシューズ業界のメインストリームです。

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マラソンでタイムを狙うことが、自分の人生においてどれくらい重要な事なのか。シューズによって支えられたタイムが自分にとってどれだけ意味のあることなのか、きちんと自分で答えを出すこと。

adizero Sub2とズームヴェイパーフライ4%のどちらを選ぶのかを決めるよりも、まずはそれについて、しっかりと考えることが大切です。「なぜタイムを出したいのか」その答えが見えてくれば、おのずと選ぶべきシューズが見えてきます。

わたし自身は「走行可能距離:無限 重さ:0g 価格:0円(税抜)」の裸足を選んでいます。これはタイムを追うことに価値観を見いだせなかった結果です。ただタイムは追いませんが「いい走りを目指す気持ち」は常に頭のなかにあります。

そういう自分のランニングコンセプトと、ランニングシューズのコンセプトを一致させてシューズを選ぶと、そこに物語が生まれて、より走ることが楽しくなる。そんな気がします。


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