ランナーには本当に体幹トレーニングが必要ないのか

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昨日の記事でも少し触れましたが、マラソンの日本最高記録を更新した設楽悠太選手は体幹トレーニングを行いません。「体幹トレーニングはする必要がない」とはっきりと言っていますし、そして結果も出しています。

SPORTS BULL
Vol.1「体幹トレーニングは必要ない」設楽悠太が語るマラソンの極意

それでも体幹トレーニングは必要だとわたしは書きましたが、このままではどう考えてもわたしのほうが分が悪いので、これに関してもう少し詳しく書いておきます。

まずとても基本的なことですが、体幹とは何かということから説明します。体幹とは体の胴体の部分のことを言います。体幹というと腹筋だけをイメージするかもしれませんが、背筋も胸筋も体幹です。

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体幹を構成しているのは骨と筋肉です。筋肉は表層筋と深層筋の2種類があり、深層筋がインナーマッスルと呼ばれる体の内側の奥深い部分にある筋肉です。

表層筋:体を動かす筋肉
深層筋:体を支えて安定させる筋肉

ものすごく乱暴な説明ですが、こういう構成になっていることをまずは理解してください。体幹トレーニングは基本的にこのインナーマッスルを鍛えることで、体の安定を手に入れるトレーニングです。

ランニングでは腕振りが大事、肩甲骨周りの柔軟性や動きが重要と言われますが、これはすべて体幹が安定しているからこそ成立します。体幹が不安定になると上半身の動きが下半身にきれいに伝わりません。 

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体幹がしっかりしていないと、いくら腕や肩甲骨を動かしても、走りにはまったく意味がないということになります。それでも実際には、リズムをとるという大きな役割がありますが、それと同時に体力をロスしてしまいます。

体全体を効率よく使って走るのがランニングの基本です。

ではなぜ設楽悠太選手は「体幹トレーニングはする必要がない」と言うのでしょう。理由は簡単です。ランナーが必要とするインナーマッスルの筋力は走ることで身につけることができるからです。

これは他の競技でも同じことが言えます。その競技で必要となる筋肉は練習や試合の中で身につけることができるという考え方は昔からありました。

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サッカーでもブラジルの選手はフィジカルトレーニングをしない選手が珍しくありません。練習や試合でつく筋肉以外は無駄な筋肉で、重たいだけで何の役にも立たないという考え方です。

わたしも基本的には、この考え方に賛同します。ただし、体幹を鍛えられる走り方をしていればという前提があります。実際には体幹が不安定な人がいくら走っても、足がつかれるだけで上半身が筋肉痛になることはほとんどありません。

本来は体のブレを抑えるために、腹筋や背筋に疲労感が出るはずですが、そもそもブレを抑えていませんので、すべての疲労が脚にくるわけです。

こんな走りをいくら続けても、走りで体幹が整えられるということはありません。無闇に脚が太くなっていくだけで、ランナー体型とは程遠い体つきになります。

 

走りに必要なインナーマッスルは走って鍛えることができますが、走って鍛えるようになるにはインナーマッスルを使った走りができるように鍛える必要があります。

このあたりで訳が分からないという人もいるかもしれません。

1.インナーマッスルは走って鍛えることができる
2. ただし、インナーマッスルを使って走っていることが条件
3.通常はインナーマッスルを使えていないので走っても鍛えられない
4.ゆえに、インナーマッスルを使って走れるように鍛えなくてはいけない

 設楽悠太選手を始め、実業団で走っているレベルの選手は、すでにインナーマッスルを使って走ることができています。ですので、走っていれば必要なだけの筋肉が鍛えられます。そして必要でない筋肉を付けなくても済みます。

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設楽悠太選手が強調したいのがここです。彼は必要ない筋肉を1gも付けたくないわけです。「体幹トレーニングがいいから」という理由で何も考えずに取り組むと、必要ない筋肉が付いて体が重くなります。

彼が欲しいのは、42.195kmを走るための筋肉だけです。それ以外の筋肉も脂肪も必要ありません。彼はマラソンに不要なものはすべて削ぎ落としています。筋肉ですら走るのに必要なければ錘にしかならないという考えを持っています。

余計な筋肉をつけたくないから体幹トレーニングをしない。これはきちんと筋が通っています。

ではわたしたちはどうなのか。インナーマッスルどうこう言う前に、まずは無駄な脂肪を落とすことからやらなくてはいけない人が大勢いますが、無駄な脂肪や上半身の筋肉があるから、余計に体がブレないようにするために、体幹トレーニングが必要になります。

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設楽悠太選手のようにそぎ落とせば、走るだけで体幹も整えられます。削ぎ落としていないから、その重さに耐えられるだけの体幹を手にするために特別なトレーニングが必要になります。

その前に、そもそもゆるゆるの体幹をなんとかしなくてはいけません。デスクワークが多い現代人は、深層筋が緩みすぎています。悪い姿勢でパソコンと向き合い、猫背のような姿勢を続けます。

仕事は変えられませんので、仕事中に緩んでいる分だけ、仕事以外の時間には意識的に鍛える必要があります。

深層筋はなかなか意識しにくく、それを上手に使えるようになるには何年もかかります。でもまずはやらなくてはいけません。地道に体の声を聞きながら地味なトレーニングを重ねるしかありません。

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そしてあるとき突然、体幹の意味を理解できるようになります。

それくらいまでくれば、あとは走っていれば体幹トレーニングなしでも体を鍛えることができます。ランナーにとって必要な筋肉だけを付けられるようになります。

その段階に来ていないのに「設楽悠太が言ってたから体幹トレーニングはいらない」というのは間違っている。少なくともわたしはそう思います。

体幹トレーニングはとても地味で、なかなか結果につながりません。このため、継続しないための言い訳を探している人ばかりです。しなくていいのとやりたくないのは違います。

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物事には正しい順序というものがあります。「体幹トレーニングはする必要がない」と言える段階に来ていない人は、やはり体幹トレーニングは必要です。

もっともほとんどの人にとってマラソンは娯楽ですから、好きにすればいいとは思います。ただ「設楽悠太が…」というのはやめておきましょう。自分で考えて自分で判断した結果、いらないというのであれば尊重しますが、自分の決断を他人のせいにするのは恥ずかしいことなのでやめておくべきです。


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著者:有吉 与志恵
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