第4回東西対抗東海道ウルトラマラソンレポート〜3日目〜

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大晦日から新年にかけてのネットカフェに泊まるものではないという教訓を得て、わたしは最終日55kmの道のりを走り始めた。ネットカフェだけならまだいいのだが、ビリヤードやらダーツがあるともうダメだ。

もちろん、ネットカフェを宿泊場所にしているほうが悪い。そんなことは重々承知しているので、今度の旅ランには耳栓を持っていくと決意した。

3日目の朝。普段の旅ランなら1日目に飛ばして2日目に潰れ、3日目から自分のペースで走れるようになる。ところが、この日は3日目にも関わらず、走れる気配がない。

足裏の痛みは少し改善されたように感じるが、両足のアキレス腱が悲鳴を上げている。完全に柔軟性を失っていて、いつ壊れてもおかしくない状態で走り出した。

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まずは島田宿。

痛いの辛いのを口にしたところで楽になるわけではない。8.7kmの距離を約2時間かかったが、朝ごはん休憩もいれているので、相変わらずの1時間に5kmペース。そこから考えるとこの日の走行時間は11時間。

5時30分にスタートしたのだから、最短でも16時30分がゴールタイムということになる。

もちろん現実はそんなに甘くはない。なんとなく推定したのが15時くらいだったのだが、最初の宿場町でその夢が打ち砕かれてしまうことになる。まさか4日目に入ることはないだろうが、かなり遅くなってからのゴールも視野に入れておいた。

天竜川駅の終電は23時台。思った以上に遅くて助かる。

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島田宿を通過した直後に大井神社があり、運試しではないが初詣を兼ねてのおみくじ。こういうときに神様を頼ったりはしないが、神様のご意向くらいは伺っておいていいのではないかと。

大吉。

なぜだろう、良かったと思うよりはここで1年の運をすべて使い切ってしまったような感覚。「完璧な男になんて惹かれない」と歌ったのはあいみょんだったか。

完璧な運勢にはワクワクが不足する。

まぁ神様が決めたことなので、わたしの知ったことではない。とりあえず神様は走り続けろと言っていると解釈して、そこから金谷に向かって走り出した。

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東海道で好きな場所を挙げるとするなら、金谷から日坂までの間。茶畑の中を通過する旧東海道は、他の道にはない穏やかさがある。ただし、アップダウンが半端ない。

アキレス腱への負荷も考えて、ここを迂回するという選択肢もあったのだが、大吉を引いたことで気持ちが大きくなっていたのだろう。なんとかなると判断して茶畑へ突入した。

走るような歩くようなペースでゆっくりと進んでいると向こうからきた地元の人に「おめでとうございます」の挨拶。そういえば新年だったと思い出し、こちらも「おめでとうございます」と返す。

こういう旅ランならではの交流が好きだ。走っていなかったら一生出会うことのない人と言葉を交わす瞬間。

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日坂を抜けて掛川に入ると宿場町の数はもう限られてくる。日坂までくると残りは35km。まともに走れることができれば4時間もあれば終わる距離だが、今のペースなら7時間。

ただ、感傷的になることはない。

掛川に入るとそこからはひたすら西に向かって走る。足裏もアキレス腱も痛いし、太腿にも疲労が溜まっている。でも200km以上を走っていれば当然のこと。

袋井宿を通過したのは15時26分で残りは12km。このままのペースで18時を超えるかどうかといったところ。

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見附宿のある磐田市はややアップダウンがあるはずなので、その手前で休憩を入れて気持ちを高めておく。ここでこわいのは気の緩み。交通事故の多くは自宅近くで起きていると何かで聞いたことがある。

ゴールが近づいたと思って気を緩めたら、何が起こるかわかったものではない。

見附宿を通過して最後の下り坂に入ったとき、マジックアワーを迎えた浜松の街がそこにあった。それを美しいと思う余裕すら残っていないことに苦笑いする。

まったくらしくない。

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全力を絞り出すなんて走り方はもう卒業したつもりだった。でも、もう気持ちも体も止まらない。ただひたすらに目の前の道だけを見つめて、上がらない足を引きずるように前に進む。

何度もランナーを出迎えた六所神社が視界に入ってくる。

ここに来てようやく、長いようで短く、短いようで長い250kmという距離を実感することができた。やり遂げたという喜びよりも、もう走らなくてもいいという安堵感がわたしを包み、ここまで耐えてくれた体に感謝した。

残り100メートルの記憶はほとんどない。気がつけば六所神社の境内に立ち、250kmの旅路を走り終えていた。

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走行可能時間だけで考えて46時間58分でのゴール。速いかどうかは問題ではない。これが今のわたしを表す数字であり、わたしが積み重ねてきたものだ。

これから時間をかけてこのタイムで走ったことの意味を、自分なりに消化していけばいい。もっと速く走れる自分を目指すのか、それとももっとうまく走れる自分を目指すのかはまだ決まっていない。

ただはっきりしているのは、自分にはまだ伸び代があるということ。きっとまだ強くなれる。そう感じながら、わたしは六所神社を後にした。


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著者:柘植 陽一郎
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