才能はない、だから走り続けられる〜2019第9回南横ウルトラマラソンレポート〜

才能はない、だから走り続けられる〜2019第9回南横ウルトラマラソンレポート〜

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昨年に続いて、出場することになった南横ウルトラマラソン。「ウルトラマラソンはもう走らない」と決めたわたしが、唯一走る42kmオーバーの大会です(24時間マラソンは別として)。

参加種目は昨年と同じ60km。2018年は5時間50分51秒で8位。今シーズンは調子もいいので、5時間30分くらいは出せるかなと期待してスタートラインに立ちました。

ただ、前日に南横ウルトラマラソンの大会側に招待されての食事会があり、18時から21時半までの宴会。お酒はビールだけにしていましたが、スタート前から体が重いわけです。

1ミリも後悔はありません。わたしは勝ちに来たわけではなく、笑顔を交わしに来たわけですから。ただ、わたしには珍しくファンランではなく本気ランです。やるからには全力で60kmを駆け抜けます。

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そう意気込んでいましたが、スタート直前にトラブルが発生します。この大会はマイカップ制なのですが、マイカップをつけていたポーチをスタート前に紛失。それに気づいたのがスタート数分前。

新しいコップを用意する時間もなく、しかもiPhoneを入れておくつもりだったポーチもないので、右手にはiPhoneを握りしめてのスタートしました。

体は重いものの、ペースを気にせずにスタートしたらいきなり3番手。そこからはズルズルと順位を下げていきましたが。

昨年よりは動けている感覚はあるものの、1週間前に走った鹿児島マラソンの疲労が残っているようで、わたしの生命線である太腿の前側の筋肉が思うように動きません。

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上位を狙うなら、わたしを追い抜いていくランナーについていきたいところですが、それをすると後半の失速は明らか。しかもわたしは給水のためのコップがありません。

とりあえずの作戦は、食べ物で給水することでした。トマトとオレンジを2個ずつくらい頬張って、わずかながらの水分を体内に取り込みます。

内臓に負担がかかりそうでしたが、他に良い方法が思いつかず。

得意の上り坂に入っても大腿部の疲労感が強く、思ったようにペースが上がりません。15kmくらいまではなんとか粘りましたが、その後の上りで歩きはじめてしまいました。

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ただ、幸運なことに20kmを過ぎたくらいから、雨が降り始めます。水分補給ができないわたしにとっては、これが恵みの雨となりました。雨を飲むわけにはいきませんが、少なくとも発汗を最小限に抑えられます。

25kmから29kmまでは下り坂。ここで足の回復をはかりますが、疲労が溜まっている足にとっては、上りよりも下りが鬼門。走ることはできても疲労はどんどん溜まります。雨も降っていますので、しっかりと地面を掴みながら1歩ずつ。

なんとか30kmまでたどり着いて、そこからは来た道を折り返します。

ここまでのタイムが2時間45分でしたので、調子が悪いなりにもほぼ狙い通りのタイムです。復路は下り貴重になるので、粘ることができればなんとか5時間30分で完走できます。

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粘ることができれば……ですが。

そう計算通りになんていかないのがウルトラマラソンです。下りはそれなりにペースを上げることができますが、走れば走るほど足が消耗していき、思うように動かせなくなります。

そしてついに40km手前で大失速しました。足を完全に使い切ってしまった状態で、下り坂ですら歩いてしまいます。

わたしを追い越していく同じ60kmのランナーが「加油!」「一緒にゴールを目指そう」と声をかけてくれるものの、足は棒のようになって、とてもここからゴールまで走り続けるのは厳しい状態。

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「残り20kmかぁ……歩いたらどれくらかかるかな」と弱気になりながらも、走っては歩くを繰り返します。これはさすがにまずいと思い、40km過ぎのエイドで手に水を注いで給水しました。

手がベタつくのでスポーツドリンクは避けて、塩できちんとミネラルも補給。残りの距離を走り切るための態勢を整えます。

ここで塩分を取れたのが大きかったかもしれません。上り坂など走れない箇所はあるものの、走り出せばキロ5分20秒くらいのペースを取り戻すことができました。

エイドの通過時間を確認したところ、このペースを維持できれば昨年よりもいいタイムで完走できそうだったということも、わたしに希望を与えました。

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潰れてしまったとはいえ、少なくとも昨年までの自分を超えていこう。そう思えたことで、精神的に弱気になっていた自分から抜け出すことができました。

45kmのエイドではお椀に入った麺があり、食べ終えたお椀をコップ代わりに。これでスポーツドリンクも飲むことができます。

残り15km。

わたしを追い抜いていったランナーも潰れており、何人かを抜き返すことができましたが、反対にわたしを簡単にパスしていくランナーもおり、その時点での順位はまったく分かりません。

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入賞は10位までですので、できるだけ抜かれないようにしたいところですが、スピードをコントロールする余裕はありません。とにかくできるだけ歩く時間を短くすることだけを考えます。

抜かれてしまったらそれは仕方のないこと。少なくとも昨年の自分は超えていく。

笑顔どころか悲壮感しかない状態でしたが、そんなわたしを見て、ボランティアスタッフさんも地元の人も「加油!」の声援を送ってくれます。

日本人だからというのもあるのでしょうが、すべてを出し切ろうという姿勢を受け入れてもらえたような気がしました。

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わたしには走る才能はありません。オリンピックを目指すこともありませんし、どんどん自己ベスト更新をしていけるような選手でもありません。

でも、全力を尽くすことはできます。それを応援してくれる人がいるから、わたしは走り続けることができます。

残り2kmとなったところで、足が限界を超えてしまいます。右足のふくらはぎが何度も攣りそうになり、ペースがさらに落ちてしまいましたが、追い込まれてからがわたしの本領。

絶対に攣らないように細心の注意を払いながら、可能な限りのスピードでゴールを目指しました。

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5時間43分39秒。

昨年から7分22秒縮めることに成功しました。運よく10位入賞というおまけ付きです。走り終えてフラついているわたしに、先にゴールしたランナーたちが「おめでとう」と健闘をたたえてくれました。

レース中は競争相手でしたが、同じ困難に立ち向かう仲間でもあったわけです。こういう関係を築けるのも、全力ランをしたからなのでしょう。自分を出し切るレースは大変ですが、ファンランとは違った楽しさがあります。

右も左も分からない状態で走った1年前とは違った充実感。そして、もっといい準備をして望むべきだったという反省。悔しい思いというのはランナーを強くしてくれます。

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シーズン最後(リレーマラソンが残っていますが)のレースとして、喜びと悔しさの両方を手にしたことは、わたしにとって大きな収穫でした。

また南横ウルトラマラソンを走ることができるなら、もっといい走りができる自分でありたい。これで来シーズンに向けて、また厳しい練習を積み重ねられるような気がします。


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著者:エド・シーサ
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