万里の長城マラソン2019秋・完走記

小さな頃から負けることが嫌いで、負けても悔しがらないチームメイトや、ベストを尽くしてもないのに負けて悔しがっているチームメイトを見ては苛立っていた青き春の日々。

そういう自分はもう戻ってこないんだなって、勝手に思っていました。他人と争うことが嫌い、勝ち負けよりも大事なものがあると言って自分の気持ちをごまかしていたこの数年。

そう思っていれば、負けたときに悔しがることもないですし、本当にやるべきことをやり尽くしたのかと自分を追い込む必要もありません。でも、それってやっぱり逃げだったんだろうなと、万里の長城マラソン2019秋を走って気づきました。

いや、その前にウルトラマラソン日本代表経験のある出口くんと東西対抗東海道53次ウルトラマラソンを競い合ってコテンパンに負けたときから、そんな気持ちが芽生えていたのでしょう。

ただ、それは気づきのきっかけに過ぎず、実際には今シーズンに入って、ポイント練習を積み重ねる過程で、闘走心(森脇健児陸上部より)が戻りつつあったのかもしれません。

前置きが長くなりました。万里の長城マラソン2019秋の話です。

種目はハーフマラソンで、ここで優勝すれば万里の長城マラソン3種目制覇という前人未到の記録を達成できるという状況。もちろんひそかに狙っていました。事務局という立場上、そんなことは1mmも表情には出しませんでしたが。

ただ、昨年の10kmではハーフマラソンのトップに10km地点で負けていました。その選手が今年もいるわけではありませんが、欧米人の中には自分よりも高いレベルにある選手がいる可能性があります。

日本人だってどうだかわかりません。優勝したいという思いはありましたが、それは相手があってのこと。自分よりも高いレベルの選手がいると、優勝できないのはあたりまえのことと思っていました。

レースが終わるまでは。

スタート時の気温はおそらく3〜5℃。どうにもならない寒さではありませんが、手がかじかんでいます。ウェアを悩みましたが、長袖を下に着込んでTシャツに短パン。BUFFを首に巻いておきました。

シューズはアディダスのadizero JAPAN BOOST。勝負用のレースシューズですが、もうBOOSTフォームがかなりヘタっています。でも軽いシューズが良かったので選択肢は他にありませんでした。

秋大会のコースでは裸足という選択肢はありません。トレイルがあるのとロードもかなり荒れた舗装路ですし、何よりも気温が低すぎます。わたしは裸足が万能だなんて思っていませんし、ランニングシューズも大好きなのでシューズを履くということにまったく抵抗はありません。

号砲とともに飛び出したのは、こちらもウルトラマラソンの日本代表経験のある外池さん。フルマラソンは2時間20分台というものすごい選手で、なぜ万里の長城マラソンを走っているのか不思議でなりません。

ただ、彼はフルマラソンですので気にする必要はありません。ついていったら潰れるだけと思って自分のペースで走り出しましたが、その時点では外池さんに次の位置。すなわちハーフマラソンのトップです。

ただ、1kmもいかないうちに1人の欧米人に抜かされました。彼はハーフマラソンでしたが、すでに息がかなり上がっている状態だったので、これもついていく必要がないと判断。

彼は万里の長城マラソンのコースを知りませんが、わたしはどれだけ厳しいか知っているので、序盤から飛ばしたりはしません。

ただ、それ以降もまったくペースが落ちずに、外池さんを追い越して先頭に立つほどのスピードランナーでした。「これは追いつけないかな」と思ったものの、それでも後半に失速する可能性があるので他力本願ではあるものの、自分にできるのは自分のベストを尽くことにします。

ただ、そうなると気になるのは後方のランナーの存在。万里の長城マラソンは3位までが表彰対象なので、2人に抜かれると表彰されません。

前には見えなくなるくらい離されて、後ろはどれくらいの位置にいるのかまったくわからない状況ですので、プレッシャーが自分の背中にのしかかります。とはいえ無理にスピードを上げても潰れるだけ。

自分1人ではスピードを維持するのが難しいので、周りにいるフルマラソンのランナーに引っ張ってもらいます。

苦手なトレイルも、直前に大山トレランを2回ほどおこなっていたのもあって、1年前よりもしっかりと上れます。万里の長城に上がってからは、昨年以上に走れていない自分がいます。

これまで1度も階段に手をついたことなんてなかったのに、そんな余裕はどこにもありません。走るランナーに食らいついていくためにできることを、ひとつひとつ積み重ねるだけです。

手を使ってでも階段を上り、ビビりそうになる気持ちをアドレナリンで抑え込んで、落ちるように階段を下りていきます。技術もへったくれもあったものではありません。不格好でも前に進むのだと自分に言い聞かせます。

そして万里の長城マラソンを走り抜けて、落ち葉によって滑りやすい状態になっているトレイルの下りも、「男は度胸」と言い聞かせて勢いで乗り切ります。

そして下ってからはロードの勝負です。

今シーズンはポイント練習を真面目にやっているので、実はそれなりに自身はありました。実下り基調になっている区間では4分20秒を切るペースでまであげれていましたので、練習の効果は出ています。

ただ、1週間前に230km走っているというのもあって、上りでは思ったようなスピードを出すことができませんので、前との距離は縮まりません。ただ、後ろとの距離は徐々に離れていたのだけが安心材料。

「順位なんて相手があってのこと」と言い続けてきましたが、この時点で相手のことよりも自分中心の考え方になっています。本来なら勝っても負けても仕方がないと思えていた自分は、すでにそこにはいません。

相手が誰であれ負けなくありませんし、それを受け入れることもできそうにもありません。だから必死のパッチで追いかけます。届かないと分かっていても。

そして2時間14分35秒でゴール。

順位は残念ながら2位で、10分以上も離されています。ハーフマラソンで10分の差というのはかなり大きく、明らかに実力差があります。自分よりも速いランナーがいたのなら、勝てないのは仕方がないこと。

でも悔しいんです。

1位になれなかったことよりも、負けたことが悔しい。こんな感情を抱くのはいつ以来でしょう。勝負することから逃げてきたので、もう思い出すこともできそうにありませんが、懐かしい感覚で悪くありません。

2時間14分台というのは、春大会でも3位に相当するタイムなので、決して悪いタイムではありません。自己弁護するわけではありませんが。でも大事なのは負けてしまったことと、それに対して悔しさを抱いたという事実。

この悔しさは、かなり強力なバネになるかもしれません。今シーズンにいい結果を出すための布石のようなもの。いや、もしかしたらランニングを取り組む姿勢におけるターニングポイントになる予感すらあります。

「まだ速くなれる」

根拠はありませんが、この負けはきっと自分を強くしてくれるはずです。これから自分がどうなっていくのか、どうあるべきなのかについてはまたの機会に述べるとして、しばらくは悔しさを胸に日々のトレーニングに励んでいこうと思います。

そして来年こそは3種目制覇。簡単な目標ではありませんが、壁は高いほうがいいとミスチルも歌っていましたし。

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