FuelCell Speedriftという羊の皮を被った虎

FuelCell Speedriftという羊の皮を被った虎

久しぶりにランニングシューズを購入した。もしかしたら定価でランニングシューズを買ったのは人生初かもしれない。最近はレビュー用にいただけることが多く、RUNNING STREET 365を始める前は裸足中心で、その前はアウトレットで割引価格のランニングシューズを買っていた。

ランニングシューズは消耗品だからお金をかけたくない。かつてはそう思っていたし、いまもその思いはほとんど変わらない。ただ、この厚底化の流れをを無視できる立場にはなく、買うなら発売されたばかりのものだろうと思い、ニューバランスの店舗で2人の諭吉と2人の英世とFuelCell Speedriftを交換してきた。

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家賃よりも高いランニングシューズだから、清水の舞台から飛び降りるくらいの覚悟での投資。ただマラソン遠征もなく懐は少しだけ温かい。自転車を漕いで稼いだお金で、最新のランニングシューズを買うという判断は悪くないだろう。

もちろん何を買うのかは迷った。99%はサッカニーのENDORPHINE PROで決まっていたが、発売日に即完売で入手できず。ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%も気にはなるのだが、きっと多くの人がレビューをするし、マラソン大会のないこのタイミングで買うシューズではない気がした。

じゃあFuelCell Speedriftはどうなのか。

RUNNING STREET 365でも記事にしたが、FuelCell Speedriftは少し異色のランニングシューズで、ランニングシューズでありながらもスニーカーという立場でもあるというのがニューバランスの販売スタンス。販売店舗が限定されているが、その中にatmosが含まれていることからも異色具合がわかるだろう。

FuelCell Speedriftはファッションアイテムでもあるのだ。ただ、名前が「Speedrift」とスピードをアピールしている。商品の説明としては「スピードを意識したデザイン」とあり、シューズそのもののスピード感に関しては語られていない。

そしてシューズの重さも公表していない。ランニングシューズとしてはあまり賢い売り方ではない。だがスニーカーなら重さは関係ない。でも重いシューズではスピードは出せない。きっと軽いに違いないが、軽さはアピールしていない。

それでいてカーボンプレートではなくペパックス素材のプレートを搭載している。だが、そんなことは商品のページには一切書かれていない。ニューバランスが何かを企んでいることは間違いないのだが、それがまったくわからず、だったら買って確かめようということで購入を決めた。

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履きたいというよりも好奇心。ただ、デザインには一目惚れだ。高校時代のわたしが好きそうなデザイン。UberEatsの配達で履いたらウケるだろう。間違っても普段履きにできそうにない派手な発色(赤を選んだ)。オシャレ配達員を目指す上で、これはインパクトがあって面白い。

走れるシューズでなくても、使いみちがあるのだ。それに2.2万円と思うとなかなか勇気がいるが、UberEatsがメインの仕事になっているのだから、そこに投資するのは当然のことだ。より長い時間使うものにお金をかける。これはいい仕事をする上での鉄則。

だが、結果的にFuelCell Speedriftを履いて感じたのは、羊の皮を被った虎だということ。詳しくはRUNNING STREET 365でレビューするが、これはやばいやつだ。足裏の筋肉を刺激するし、反応速度が驚くほど速く、そして安定している。

1kmのタイムトライアルをしようと思ったが、上がりすぎるスピードをコントロールしきれずに200mでストップ。試しに50mくらいをフルパワーで走ってみると、ポラールにはキロ2分40秒の表示。そんな数字はこれまで見たこともない。

ニューバランスはこの秋にFuelCellのカーボンプレートタイプを出すと発表しているが、おそらくFuelCell Speedriftはその廉価版で、しかもファッションアイテムよりの位置づけになるのかもしれないが、そのポテンシャルは半端ない。

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今のわたしではとても履きこなせないが、これでポイント練習もできるし、おそらくロング走もできるはずだ。そうなると必然的にレースでも履けるということになる。ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト%に近い位置づけになる。こいつは万能型のランニングシューズであり、スニーカーなのだ。

個人的にはマラソン大会のない世界において、速さだけを求めるランニングシューズは売れなくなると考えている。ナイキを除いてという話にはなるが、マラソン大会がなければいくら速く走れるようになっても、それを確認できない。

だとするとFuelCell Speedriftのようなファッションアイテムのランニングシューズのほうが需要がある。きっと世界中の若者が、このシューズの牙に気づくことなく履き続けるのだろう。まさかそのシューズがキロ3分を切って走れるシューズとも知らずに。

走って逃げなくてはいけない環境になって、このシューズのすごさに気づくかもしれない。

わたしの好みのデザインではないが、間違いなく若者受けするだろう。売れるかどうかはわからない。隠れた名作として静かに消え去る可能性だってある。だがきっとわたしはこのランニングシューズを愛するだろう。足裏が「もっと走りたい」と訴えかけてくる。

残念ながらUberEatsの配達はしばらくないし、今朝からは別のシューズのテスト走行に入っている。こちらはプロトタイプのシューズなので詳しくは言えないが、わたしがこれまでも関わってきたものなので、こちらはこちらで気合が入っている。

いずれ発表できるだろうが、もう少し待ってもらいたい。

こうやって書いていると、自分が特別な人間だと勘違いしそうになるが、もちろんただの凡人だ。自転車を漕いでお弁当をデリバリーしている人間が特別なわけはない。才能があれば家賃よりも高いシューズなど買う必要もなく、「履いてみてください」と言われるのだろう。

それがいいことなのかどうかはわからないが、いい買い物をしたのは間違いないだろう。履きこなすのには数ヶ月かかると思うが、それも含めて厚底シューズを楽しんでみようと思う。本当に気に入ったら、派手すぎないグレーを追加購入するつもりだ。

44歳にこの赤は眩しすぎる。

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