大迫傑選手「決戦前のランニングノート」レビュー【自ら強くなりたいランナーの1冊】

  • 2021.08.31
  • (更新日:2021.08.30)
  • RUNNING
大迫傑選手「決戦前のランニングノート」レビュー【自ら強くなりたいランナーの1冊】

かつてサッカー選手を目指していたときか、そのあと監督をしていた時だったか、サッカーへの取り組み方とか、練習の意識の持ち方とかを話したときに、ある後輩が「自分たちはプロじゃないからそんなことはしなくてもいい」というようなニュアンスのことを言われました。確かにプロでもないのにストイックに向き合うのは時間の無駄のような気もします。

でもプロがやっているレベルのさらに上を目指さないとプロには追いつけないし勝てないというのが当時からの私のスタンスで、アマチュアだからこそプロよりも高い意識で取り組むべきだと考えています。そうしないと身体能力や才能が上の人に勝てるチャンスは1ミリもないからです。ただ、これを他の人に求めるつもりはありません。

私はそういうスタンスなので、トップアスリートがどのような練習をして、なぜそれを行なって、どのような向き合い方をしているのかを知るのが好きです。それを取り入れるというわけではなく(取り入れることもありますが)、思考の組み立て方や競技の取り組み方を知ることで、自分のやるべきこと、やらなくては行けないことが見えてきます。

きっかけやヒントみたいなものです。大迫傑選手(もう選手ではないのかもしれませんが、あえてここでは敬称は「選手」にします)の「決戦前のランニングノート」がオリンピック前に出版されました。すぐに入手したのですが、読んだのは男子マラソンが終わってから。本当は先に読むべきなんでしょうけど、貧乏暇なしなものでして。いずれにしてもようやく読み終えました。

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私にとっては有益な内容でしたが、想定を超えていたこいうことはなく、むしろ確認をしただけだったかもしれません。大迫傑選手レベルでも、市民ランナーレベルでもトレーニングのやり方は、組み立て方は同じ。トレーニング内容もそれほど変わりません。市民ランナーは高地トレーニングが難しいくらいで、それはあまり大きなことではありません。

当たり前のことを当たり前に積み重ねている。もちろん細部は色々とこだわりがあるはずですし、当たり前にハイレベルなことをやっている可能性もあります。でも、ポイント練習の追い込み方は、きっと想像を絶するレベルにあるはずです。でも、大迫傑選手はすべてがシンプルです。練習もレースも生き方も。自分で決めたことをきちんと積み重ねる。

ただ以前よりも思考が柔軟になっているようにも感じました。それがコロナ禍の影響なのか、それとも次世代を育てるための活動を通じてなのかは分かりません。複合的にそうなったのかもしれませんし、元から柔軟性があり、私がそれに気づかなかっただけかもしれません。私がそう感じたというだけのことを。そしてそれが大迫傑選手の強さを支えているようにも感じます。

どんなに強い柱も、その強度を超える力が掛かると壊れます。大迫傑選手は柔らかいから壊れない。それは身体的にもメンタル的にも。そして「決戦前のランニングノート」を読むと、その背景にあるものがほんの少しだけ見えてきます。そして人間らしい一面もあって、読み物としても面白い。ランナーじゃなくても、何かに挑戦している人なら参考になるはずです。

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ただ読んだら足が速くなるわけでもなく、読んだだけで何かが変わるわけでもありません。これは自分にとってのヒントを見つけるための1冊です。練習メニューをそのままなぞることに意味はありませんし(まったく意味がないわけではありませんが)、考え方を真似ても大迫傑選手にはなれません。大事なのは本質の部分を理解して盗むこと。

気をつけて欲しいのは自分に都合のいい解釈をしないことです。1番良くないのが「大迫傑選手がやってるから自分もやる」という短絡的思考で、次に良くないのが自分のやってきたことの正当性を担保するのに大迫傑選手の言葉を切り取って使うことです。それで理想の自分に近づけるのならいいのですが、きっとそれは失敗します。

この本から学ぶことはいくつもあります。でも、ここに書かれていることがすべてではありません。これはあくまでもオリンピックに向けての数ヶ月間で大迫傑選手がやったことと感じたことでしかなく、大迫傑選手はそれで結果を出しましたが、同じことをして私たちが同じように結果を出せるというわけではありません。

ただ、大迫傑選手の「決戦前のランニングノート」を読むか読まないかで競技との向き合い方は変わってくるとは思います。「自分はプロじゃないから」と考える人にはお勧めしませんけどね。どうすれば彼のように強くなれるのか、どうすれば自分はもっと走れるようになるのか、常に悩み続けている人なら、もしかしたらこの本はバイブルになるかもしれません。

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