北京マラソンで左足の爪を痛めたのだが、実は同じことを昨年の富士山マラソンでもやっている。一度爪を潰せばその後はなんでもないので気にはしていなかったのだが、冷静に考えなおすとシューズが合っていないのではないかという疑惑が持ち上がった。わたしのシューズサイズは25.5cmで、これでも大きいのだと思っていた。サッカーをやっていたころは24.5cmのシューズを履いていたので、その頃からはふたまわり大きいサイズだ。だからシューズが合ってないなどと考えもしなかったのだ。
そこで軽井沢マラソンフェスティバルに参加したあと、軽井沢のアウトレットでいろいろなシューズを履いてみたのだが、やはり25.5cmというのは爪がシューズに当たってしまう。普段はビブラムファイブフィンガーズを履いているし、ナイキのフライニットを履いたりしててアッパーが比較的柔らかいシューズを選んでいたので気づきにくかったが、レース用のアディダス匠を履くとそのことがよくわかる。これではフルマラソンは走れない。
そこでランニングシューズを買い換えることにした。わたしはソールが薄くて軽いシューズが好きなので、これまでと同じアディダスの匠シリーズを選ぶつもりだった。ただ、いまの自分の左足はかかとにトラブルを抱えていて、裸足はもちろんソールの薄いシューズを履いて走ることがNGになっている。軽井沢リゾートマラソンで結果が出なかった理由のひとつがそのかかとのケガにある。そのうえ、左足をかばって碓氷峠ラン184で400mを下ったので、右足のかかとも同じく痛めてしまった。
両足共に踵骨後部滑液包炎だ。これはもう休むしかないのだが休むわけにはいかないのがランナーだ。じゃあどうするかを真剣に考えた。かかとが痛むならかかとに負担をかけないシューズはないだろうかと。ソールが柔らかく、それでいてドロップが少ないシューズがいい。なんならソールは薄いほうがいい。もちろん軽量で。もはや無理難題に近いことは承知しているのだがシューズには妥協できない。
ランナー仲間の助言もあってわたしが手にしたのはアデイゼロジャパンブーストだ。
ブーストというのはいまアディダスが絶賛売り出し中のソールのことでバネが効いていながらクッション性も高いのが特徴だ。裸足ランナーのわたしが最も嫌うタイプのシューズだ。わたしはシューズに機能性は一切求めていない。シンプルな作りの軽いシューズが好きなのだ。だがそうも言ってられない。これ以上かかとを酷使するわけにはいかない。とにかくかかとを痛めずに練習をしなければいけない。
実際に足を入れてみるとフカフカする感触がおもしろい。そして何よりもスピードを出してもかかとが痛むことはない。試しにフォアフットでまったくかかとを着けずに走ってみると、ブーストはほとんど効かない。フォアフットから土踏まずにかけて順番に着地すると少しブーストが効いて推進力を得られる。もう少し長くかかとの手前まで地面につけると完全にブーストが効いてスピードが出る。非常におもしろい。走るというよりは運転している感覚に近い。
普段のランニングは体の構造を利用していかに効率よく走るかを考えるのだが、アディゼロジャパンブーストを履くと、まずシューズありきで、シューズのどの部分から着地してどのタイミングで足を引き上げるか、いかにシューズを上手く使いこなせるかを考えてしまう。もちろんそれが悪いとは言わない。裸足の世界とは真逆の世界にもランニングはあるのだ。そして、実際に履いたらかわかることもある。せっかくケガしたのだから、ただで起きる必要はない。
このシューズを買ったのは実はもうひとつ理由がある。普段履き用のシューズをこれで兼用できるのではないかと考えた。少しどぎつい色だが、ラフな格好に意外と合う気がするのだ。これがあれば、足に合わなくなったシューズと普段履きのシューズふたつ手放すことができる。持ち物は可能なかぎり少ないほうがいい。同じようにかばん類もまとめられないか試行錯誤しているところだ。その話はまたいずれ。
とにかく練習できる環境は整った。理想のシューズとは違うが、戦うための武器としては十分すぎる。せっかくなので、このブーストと裸足ランが融合できないか試してみるのもおもしろいだろう。与えられた環境でいかにいい結果を出すかを考える。人生で最も楽しい瞬間のひとつだ。
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