特別な才能のないランナーが9日間で東海道57次560kmを完走できた理由

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9日間で560km。1日換算で62kmだが、正月は相方の三州さんがプロレスに戻るのと、最終日は9時に品川到着を目指さなくてはいけなかったため、実際のところは連日70km以上の距離を普通のランナーが挑むわけです。どう考えても完走するイメージができないのだが、結果的には無事完走できている。その理由を書き留めておこう。

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まずポイントになるのは走り方だろう。これまでウルトラマラソンも1度走っているし、24時間マラソンも走っている。ただそのほとんどが裸足かビブラムファイブフィンガーズなので、走り方なんていうものは考えたことがない。裸足やビブラムファイブフィンガーズは黙っていても無駄のない走りになる。

今回はベアフット系とはいえソールにクッションの効いたMERRELLのベア アクセス ウルトラなので、シューズに頼りっきりだと長丁場に耐えることが出来ない。効率的で無駄のない走りが必要になるのだが、いかんせん知見がない。そこで大阪行きの新幹線の中で読んだランニング雑誌クリールの記事を参考にした。

たまたま特集されてた「100km世界記録保持者がアドバイス 効果が出るLSD」という記事を読み、そこから効率的な走り方のヒントがあると感じ、実際にその走法で最後まで走ることになった。付け焼き刃もいいところである。詳しくはクリールを読んで欲しいのだが砂田さん提案のローリング走法。これがすばらしい。

わたしはまだ読んでいないが、砂田さんの著書『マラソンは『腹走り』でサブ4&サブ3達成』を読めば詳しくわかるのだと思うのだが、とにかく効率よく筋力に頼らない走りをすることが大事になってくる。1日に70kmだけなら勢いでなんとでもなる。毎日1週間以上70kmを走り続けるのだ。いかにして疲労をためない走り方ができるかが重要になる。

もうひとつ重要になるのは、走れるイメージを持つことだ。わたしがマラソンをはじめたばかりの頃にセルジュ・ジラールというランナーがパリから東京までの19,097kmを1日も休むことなく260日と17時間52分で走っている。当時のインタビューで彼が「1日60kmであれば人間は毎日走ることができる」というニュアンスのことを言っていた。

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わたしはそれを真に受けて、3年前から1日60km設定で旅ランを夏に行ってきた。そして余程の猛暑でもないかぎり1日60kmは難しくないことを学んだ。ところが、この60kmが心理的な壁になっていた。それ以上を目指そうとしなくなっていたのだ。だから最初にスケジュールを組んだときに1日70kmと聞いて「これは無理だ」と思ってしまった。

同じセルジュ・ジラールの言葉だが「人体の限界は精神の限界よりもはるかに少ない」と彼は言っている。わたしは勝手に1日60kmという限界を作っていた。ところが今回は冬なので暑さの心配はいらない。もしかしたら70kmはいけるかもと考え始め、最終的にスタートに立った時には1日80kmまでならなんとかなるイメージはできていた。

イメージさえできればあとはなにも心配はいらない。人間の体は思っている以上に精神に依存している。脳が大丈夫だと思えば、なんとかなるもんだ。

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次に大切なのは臨機応変な対応だろう。それなりにしっかりとしたスケジュールを立てていても、事件は会議室で起きているわけではない。目の前には想定外のことが発生するのが旅ランだ。最初のスケジュールに固執すると、疲労が溜まり過ぎたり体調不良になったりもする。スケジュールはあくまでも目安でしかない。

そして、臨機応変な対応というのも決してその場しのぎの思いつきではない。スケジュールを立てる際に、何十回もシュミレーションを行い、ありえそうなことはすべて想定し準備しておくことが大切だ。とくに東海道ランニングのような場合、どこに宿泊可能な施設があるか頭にあるのかそうでないのかでは選択肢がまったく変わってくる。

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そして最後はやはり仲間の存在だろう。1人では絶対に完走できなかったと断言できる。ずっと一緒ではなかったにせよ、山修さんやHIROTO(青木)が同じ道の上にいるという安心感は強かったし、彼らに負けてられないという想いは間違いなく足を前に進ませてくれた。

そして、並走に駆けつけてくれた仲間の存在も大きい。正直、途中までわたしは完走できなくても三州さんだけは完走させようという想いで走っていた。ところが、あまりにも連日仲間が駆けつけてくれるので、その人たちの期待だけは裏切ってはいけないという想いが強くなり、「何が何でも走り切る」のだと気持ちが変わっていった。

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これだけの条件がそろえば凡人でも9日間で560kmを走ることができるのだ。まず走れることを信じ、しっかりと準備をする。そして一緒に走る仲間がいる。サポートしてくれる仲間がいる。この距離を駆け抜けるのに才能など必要ない。わたしは身をもってそれを証明できたのではないだろうか。

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