「パラカップ2016」チャリティーマラソンに足りないもの

「パラカップ2016」チャリティーマラソンに足りないもの

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ずっと気になっていたマラソン大会「パラカップ」を観に行きました。「世界の子どもたちに贈るRUN」をテーマに行われるチャリティーマラソンで、大会のレポートはRUNNING STREET 365で掲載しています。

日本一早いマラソンレポート「パラカップ2016」

もしかしたら日本で唯一成功しているチャリティーマラソンがこのパラカップではないでしょうか。大阪マラソンはチャリティーマラソンということになっていますが、「チャリティーマラソンだから出る」という人は少ないはず。

パラカップはまず大前提にチャリティーがあります。チャリティーを成功させるために「みんなが笑顔になれることをしよう」と考え、その手段としてマラソンを使っているように感じます。

いまでこそ5000人の参加者がありますが、パラカップは2005年に400人で始まっています。長い時間をかけてパラカップを大きな大会へと成長させています。

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会場で感じたのは運営側の「プロ意識」でした。チャリティー色が全面に出た大会は、どことなく仲間内の大会という意識が抜けていないところがありますが、パラカップは非常に緻密な戦略を持って運営しているのがわかります。

その結果、普通のランナーではなく、世界の子どもたちの未来について真剣に考え活動している人たちが大勢集まっています。このことがパラカップの独特な雰囲気を作り出しているのでしょう。

誤解を恐れずに言えば「わたしの苦手な雰囲気」です。参加する人の多くがきれいなんです。いや、きれいというよりも潔癖と表現するほうが正しいでしょうか。見た目もきれいで、心もきれいで真っ白です。

ある意味それは素晴らしいことですが、これこそが日本にチャリティーマラソンやチャリティーそのものが根付かない理由のような気がします。

汚れのない真っ白なきれいさは、この国ではほとんどの場合なぜか「胡散臭さ」につながります。

もちろんそのきれいさに惹かれて集まる人もいますが、そこは閉ざされた世界で「意識が高い人たち」の集まりになりがちです。

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パラカップは閉ざされた世界にならないようにさまざまな手を打っていますが、根底にあるチャリティーの精神が、ある一定の人たちを遠ざけているのも事実です。

パラカップが頑張ってチャリティーに取り組めば取り組むほど離れていく人たちがいる。

それはもう仕方ないことなのかもしれません。パラカップは大阪マラソンのように後付のチャリティーをしたいわけではないのでしょうから。

そしていまのスタイルで行けば汚れのない真っ白な人たち、世界の子どもたちの今を真剣に考える人たちが集まってくるわけです。それで十分に運営は成り立ち、多額の寄付ができる大会になっているのです。

ただしパラカップの未来としては、「いつも子どもたちのことを真剣に考えているわけではないけど気になる」人たち、もしくはまったくパラカップのコンセプトに興味がない人も集まってもらって、パラカップの理念を広めたいはずです。

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パラカップと書きましたが、他のチャリティーが根底にあるチャリティーマラソンも同様です。チャリティーマラソンは大きくなればなるほど閉ざされた世界へと向かっていく。一般の人が近寄りがたい雰囲気を持ってしまいます。

世界の子どものことについて気にもしない人はやっぱりこの大会を選びにくい。それでもパラカップが成功しているのはものすごい頭のいい運営者がトップかその近くにいるからでしょう。

他のチャリティーマラソンではなかなかこうはいきません。

それでも独自色を保ちながらチャリティーを含めた小さなランニング活動は日本中にいくつもあり、その参加者は年々増えています。

そこに共通しているのは汚れのない真っ白なチャリティーではなく、清濁併せ呑んだ人たちによる人間味のある心の通った助け合いの心です。なんとかしたいという熱い想いと情熱。このような活動は日本人の心にも訴えかけるものがあります。

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日本のチャリティーマラソンに足りないものがあるとしたら、喜怒哀楽の「怒哀」の部分かもしれません。「喜楽」が全面に出すぎているようにわたしは感じます。

人の心は大きく揺さぶられるから動きます。「喜楽」だけしかない場合は、心の揺れ幅は半分です。

パラカップは天才的な運営者がいるかぎり上手なマラソン大会をこれからも続けていくのでしょう。ただもう少し人間臭いところが見えると一般の人たちも「また来年も参加したい」の大会にさらに近づくような気もします。

日本でチャリティーやチャリティーマラソンが根付くには「汚れのない真っ白さ」をいかにして消していくかがポイントになるような気がします。

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