なぜランナーは暑さに慣れる必要があると言われるのか?

なぜランナーは暑さに慣れる必要があると言われるのか?

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昨日の記事で少し誤解を与えそうというか、もう少し細かく書くべきだったことについて書きます。

「暑さに慣れる」ために、夏場の暑い時間でもランニングしろという考え方。わたしはこれを否定するつもりはありません。暑さ、寒さ、高度、なんでも順応のための準備は大切です。

人間の体は適応力が高く、繰り返しその環境を与えることで「慣れ」ることができます。

そのために「夏本番になる前から昼間も走れ」と言われるわけです。そうすることで夏場の昼間でも走れる体ができる。

ここまでは問題ありません。言っていることはほぼ正しい。

何のために暑さに慣れる必要があるのか?

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問題はここです。

暑さに慣れるには5月6月の少し暑い時期から太陽の下で走るわけです。

「何のために?」

夏場の昼間走るレースがある人にとっては、「暑さに慣れる」作業はとても重要です。毎日ジムの涼しい環境でランニングをしている人が、いきなり30℃を超える気温のレースに出るのは愚かな行為です。

それで熱中症で倒れても、誰も同情すらしてくれないでしょう。

まず大きな問題として「なぜ夏場のレースに出るのか?」ということです。その大会が好きだから、達成感が心地いいから。苦しいのが気持ちいいから。

理由はそれぞれですが「厳しい環境で頑張る人は素晴らしい」という思い込みが、そうさせているんじゃないかと、わたしは想います。

それはともかく、夏場のレースに出ない人までも「暑さに慣れなきゃ」と言って、夏の昼間に走るのはその必然性をまったく感じません。秋のレースに向けて暑さに慣れるのも、夏場は朝晩の気温で十分です。

寒さや暑さに慣れても人間の体は等しく限界がある

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人間の体には限界温度と言われるものがあります。

深部体温が32〜42℃、ここが人間がなんとか生きていける限界の温度になります。32〜35℃は低体温症ですが、その後の対応でなんとか自分を取り戻せますが、32℃以下では意識に障害が出はじめます。

42℃もそこからたんぱく質が変性する温度になります。ここからは体が溶け始めます。

「でも42℃くらいのお風呂なら熱くても入れるよね?」と言う人がいるかもしれませんが、確かに42℃のお風呂は「熱いなぁ」くらいですよね。でもそれはお湯の出し口が42℃なのであって、実際に肌に触れているお湯が42℃とは限りません。

そして42℃のお湯に浸かったからといって、一瞬で変性するわけではありません、冷凍庫から氷を取り出して、グラスの中に入れておいても、すぐに水になるわけではありませんよね。

本当にお湯の温度が45℃もあるお風呂に何時間も入り続けたら、確実に体は壊れます。

ただし、訓練次第で43℃のお湯でも44℃のお湯でも入れるようになります。42℃のお湯に1分しか入れなかったのを30分入れるようにもなります。

これが人間の適応力であり「暑さに慣れる」ことができる仕組みです。

でも、人間の体が変性していく温度を変えられるわけではありません。どれだけ修行したところで、沸騰したお湯に手を入れると誰でも等しくやけどします。

昨日も書きましたが、「暑さに慣れる」はより崖っぷちを歩けるようにするための訓練で、何かの拍子に崖っぷちに立たされても耐えられるようにするためのもの。絶対に崖っぷちに立たされない人がその訓練をする必要はありません。

逆に崖っぷちに立たされる予定がある人は訓練をする必要があります。

ただ、崖っぷちに立たなくてはならいない人も、本当にそれが必要なのかがよくよく考えて欲しいというのが、わたしの想いです。

人間はなぜ100℃以上のサウナで生きられるか

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そんなこと言ったって、温度が100℃以上あるサウナに入っても人間は死なないじゃないかと反論する人もいますよね。

これはサウナが乾燥しているから成立します。湿度がおそらく10%以下になっているはずです。室温が100℃のミストサウナに入ったら確実に生きられなくなります。ミストサウナの室温は40℃前後になっています。

乾燥しているとなぜ100℃でも耐えられるか。ひとつは人間が汗をかくからです。体の周りを汗で濡らすことで100℃の空気に対して膜を作るわけです。これで肌が直接100℃に触れることがなくなります。

そして汗が蒸発することで、そこに空気の流れが生まれ、熱がこもることを防いでくれます。人間の体はうまくできています。

それともうひとつ。1リットルの水と1リットルの空気、どちらも50℃としてもそれぞれの持つエネルギーの総量には違いがあります。

先ほどの氷の話ですが、氷を取り出して水の中に入れる場合と、空気中に放置する場合では、水の中に入れるほうが速く溶けるのはこのエネルギーの総量の違いによるものです。

ここで気づいて欲しいのは、氷もいつかは溶けるということです。エネルギーは小さくても、時間をかければ氷も溶けてしまいます。

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100℃のサウナに水分補給もせずに1時間入っていたら大変なことになります。ずっと入り続けたら、人間の体は完全に変性してしまいます。

100℃のサウナに入れるということは、決して人間の体が100℃まで耐えられるということではありません。一時的に100℃までは耐えられるというだけです。

ちなみに乾燥していれば200℃まで人間の体は耐えられるそうです。どれぐらいの時間耐えられるのかはわかりませんが。

そして問題は何度の気温に耐えられるかということではなく、35℃以上になったらランニングで発生する体内の熱を逃がすことができなくなるということです。

追記

指摘をしてもらったので追記します。

汗をかいているあいだは、体温以上の気温でも体の熱を逃がすことは可能です。汗はそもそも気化することで体の熱を逃がすというメカニズムを持っています。

100mlの汗で体温の上昇を1℃抑えられると言われています。

じゃあ給水をし続けたら永遠に走れるじゃないかとなりそうですが、炎天下で走る場合は、太陽の赤外線による汗の蒸発もありますし、体温の温度上昇のスピードに排熱が間に合わなくなることもあります。

ちなみに砂漠の住人たちが、肌の露出をしないのは日焼け防止はもちろんのこと、体を冷やすための汗を、太陽の熱で蒸発させないという理由もあります。科学的にそうなったというよりは経験の積み重ねでそうなったのでしょうが。

これに関しては別途記事を書く必要がありそうです・・・

追記ここまで

周りが冷たいから熱が移動するのであって、周りも同じ温度なら熱は移動しません。熱の移動スピードも遅くなります。これが危険だということを知っておいてもらいたいのです。

人によっては暑さに慣れることは重要です。でもすべてのランナーにとって、リスクを犯してまで重要かというとそうではないんじゃないかな、というのがずっと言い続けていることです。

ただ暑さに慣れる必要がある人も、最低限の人体の仕組みぐらいは知っておいて損はないかと。何かあったときに知っているのとそうでないのとでは対応がまったく違いますから。

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