小さなマラソン大会が愛される理由と大会運営に必要なこと

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知っている人も多いかもしれませんが、わたしは万里の長城マラソンの日本事務局をしています。大会の開催は中国本部の代表として朱さんが行っています。

わたしの仕事は日本人ランナーが参加しやすい環境を整えることです。大会運営に関しては、改善しなくてはいけないことは話をしますし、意見を求められれば答えます。でもわたしの負担はそれほど大きくありません。

それほど負担が大きくないにも関わらず、万里の長城マラソンが終わると、大きなプレッシャーから開放されている自分に気づきます。代表の朱さんは大会前後はほとんど眠れないくらい忙しくなります。

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わたしは寝る時間を確保できるだけ、まだ余裕があるにも関わらずです。

これは別に万里の長城マラソンの運営に限ったことではありません。わたしが万里の長城マラソンの日本事務局をするうえで、大きな影響を受けている飯能ベアフットマラソンでも、運営する人たちの苦労はとてつもなく大きなものです。

どちらにも共通しているのは、参加者一人ひとりに喜んでもらいたいという思いです。走っているときの笑顔や、また走りたいという言葉が報酬のようなもの。ただその報酬の大きさはお金には換算することができません。

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飯能ベアフットマラソンは、大会の準備のためにトレイルの整備を行います。走ったことのある人はわかると思いますが、石のある部分を除けば、かなり走りやすいと感じるはずです。

トレイルなのに足元をそれほど気にせずにガンガン走れるのは、大会運営者のトレイル整備があってのことです。

1周7㎞のコースをすべて箒できれいにするのは「コース整備をした」と一言で片付けられるほど簡単なことではありません。今年は天候の影響で前日の朝からコース整備となりましたが、路面をきれいにしたり矢印を配置したりするのに1日がかりの作業です。

万里の長城マラソンや飯能ベアフットマラソンだけでなく、小さなマラソン大会はほとんどがそんな感じでないでしょうか。喜んでもらうためにやれることはなんでもやろうと思うと、大会直前にはすることが無数に出てきます。

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マラソン大会を開催するにはとてつもない情熱が必要です。しかも一時的な情熱ではなく、終わることなく燃やし続ける情熱がなければ何年も継続することはできません。

反対に大都市マラソンのような、何万人ものランナーが走る大会の場合に求められるのは情熱ではなく、イベントとしての安定性であり、冷静な判断や対応です。

これは良いとか悪いということではなく、大きな大会を開催するというのはそういうことなのです。鹿児島マラソンだって愛媛マラソンだって素晴らしい大会ですが、飯能ベアフットマラソンのような暖かさとは違う素晴らしさです。

東京マラソンのすごいと感じるところは、あの規模の大会でありながら主催者の想いが伝わってくることであり、参加者一人ひとりを喜ばそうとしていることにあります。どうすれば喜ぶのかについてもよく知っています。

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他のマラソン大会が一生懸命に東京マラソンを真似をしようとしていますが、真似ているのは表面だけです。だからマラソンブームが下火になるに連れて倍率も下がっていきます。

反対に東京マラソンを真似しようとせず、個性を出している地方のマラソン大会は、じわじわと人気を高めています。

結局のところ、マラソン大会が人気の大会になれるかどうかは、きちんと参加者のことを向いているかどうかにかかっているような気がします。

それだけは大きな大会も小さな大会も関係ありません。

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マラソン大会の器だけ用意して、「さあ走れ」としているような大会がありますが(どことは言いませんが)、それではランナーは離れていくばかりです。どんなに素晴らしい器を用意しても、魂が入っていない大会を走りたいと思うランナーはいません。

秋以降の大会の紹介記事をRUNNING STREET 365に掲載するのに、マラソン大会をチェックしているのですが、わたしが「ここは厳しい」と感じた大会は軒並み参加者集めで苦労しています。

マラソン大会は今でも増え続けて、しかもランナー人口は減少しています。

そんな中で飯能ベアフットマラソンのような個性的で、温かさを感じる大会も増えています。そうなるとランナーはどこに流れていくか、考えるまでもありません。

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魅力のないマラソン大会を走るほどランナーは暇ではありません。ただ走るだけなら仲間と一緒に皇居ランでもしているほうがよっぽど楽しいですし、意味のある時間を過ごせます。

もっともマラソン大会もただ手をこまねいているだけではなく、いろいろと工夫をしています。前日受付をなくしている大会も増えてきました。でもまだ形だけ。

現段階では「こうすれば参加者が増えるから」というノウハウやマニュアルがあり、それに従っているように感じます。大事なのは、きちんとランナーを見て、本当に必要なものを自分たちで考えて準備することです。

飯能ベアフットマラソンや万里の長城マラソンのような規模の大会では、自分たちで考えるしかありません。大きな広告代理店があれこれ指示してくれるわけでもありません。

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でも、それだからこそ一生懸命さがその大会の特徴になり魅力になります。

昨年大盛況となったハルカススカイランだって、小さなところから始まって、とてつもない情熱を注ぎ込んだ結果として、ワールドシリーズに組み込まれました。

なかなか参加できていませんが、福島で行われているゲレンデ逆走マラソンシリーズも、温かさのある本当に素晴らしい大会です。

マラソン大会はこれからそういう大会が元気になっていく時代かなと、わたしは思います。

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規模が大きくないから、参加者の姿が見えてくる。だからもっと喜んでもらおうと思える。自分たちの失敗もダイレクトに感じてしまいますので、その痛みも大きいのですが、その痛みがあるから頑張れます。

まだまだそういう大会が日本中にたくさんあるのでしょう。

大きな大会ばかりではなく、そういう魅力的な大会に参加していきたいところです。そう言いながらも結局まだ走っていない都市マラソンにエントリーしてしまうのですが。


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