知識と経験の総力戦で完走した金沢マラソン2017

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1週間前の万里の長城マラソンを裸足で完走したことで、わたしの中で何かが変わりました。

万里の長城マラソンを走り終えたとき、死域と呼ばれる領域に足を踏み入れ、そこから抜け出してきたことで、走りに対する恐れのようなものが一切なくなりました。平凡な言葉で表現するなら自信というやつでしょうか。

ただし、その代償としてわたしは左足裏に大きなトラブルを抱えてしまいました。マラソン2日前にもなって、いまだに左足拇指球部分は500円玉サイズで皮が剥けたままです。

それだけでなく、家から駅まで小走りをしようとした瞬間に、両足ふくらはぎに強力な電気が流れます。金曜日の段階でわたしは足裏とふくらはぎという悩ましい爆弾を2つ抱えている状態。

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それでも金沢の街が好きだということもあって、「取材だけ」のつもりで金曜日の夜行バスに乗り込みました。もちろん、少しだけ走ることができる可能性を信じて。

かなりの量の仕事を抱えての移動でしたので、マラソン前日はほとんど観光することなくスターバックスに入り浸り状態でした。ランチのために移動をしたときは、まだ足裏の激痛に悩まされていました。

ただ、そこで頭をよぎったのは「傷の部分が浮いていれば痛みは発生しないのでは?」というひらめき。

さっそく、100円ショップと布屋さんに向い、シューズの中の詰め物になりそうなものを物色しました。その詰め物で痛みが大幅に和らぎましたが、まだ不安だったため外反母趾用のパッドを購入して傷部分を嵩上げします。

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この時点で、わたしはスタートラインに立つ決断をしました。

あとは走り始めてから考えればいい。走れなくて当然だけど、走り出せばアドレナリンが出ますので、なんとかなります。ただし、ある程度の作戦は立てます。

東北・みやぎ復興マラソンでは、左足首を傷めていたので「左足は置いてくるだけ」を意識して走りました。今回は置いてくることができません。いかにして拇指球部分を接地させないか。

そのためには足裏の外側部分で接地しなくてはいけません。ただし、ここに体重をかけると、足首の外側が伸ばされる形になり、ただでさえ傷めている部分にさらに負荷がかかります。

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ですので、イメージとしては左足はつっかえ棒です。その状態で20kmを走り、あとは10kmをアドレナリンに期待して、残りの12kmは気合と根性でなんとかしようという作戦。

幸運にもゲストハウスを出てから、スタートまでの間はほとんど雨は降りません。スタート前まではゴミ袋で作ったレインウェアを着ていましたが、気温も高めでスタート時にはそれも不要でした。

カメラが防水でないため、それを守るためにゴミ袋は常に持って走りましたが。

向かったブロックは最後尾。昨年も最後尾でしたが、今年の最後尾には周りに迷惑をかけたくないという思いがあります。場合によってはスタートラインを超える前にリタイアということも考えての整列。

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そこには1人の裸足ランナーがいました。なんと初めての裸足でフルマラソンということ。しかもこのブログをときどき読んでくれているとのこと。わたしの裸足で走りたい気持ちはすべて彼に託したことで、わたしの重荷は少しだけ軽くなったのかもしれません。

いつもなら、最後尾からスタートしてそこからごぼう抜きなのですが、今回はどこまで行っても最後尾です。

拇指球を守るために、選んだシューズはアディダスのPureBOOST。いつも履いている和紙布も試しましたが、ソールが傷にぶつかるたびに激痛が走るので、素直にPureBOOSTを選びました。

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PureBOOSTは踵着地で本領を発揮するシューズです。踵から足裏をローリングするイメージでBOOSTフォームを潰すことで、大きな反発力を得ることができます。

左足は実質使えない状態ですので、右足だけの走りに推進力を加えるという目的もPureBOOSTを選んだ理由のひとつです。ただし、いつもと違う走り方をしますので、慣れるのに時間がかかります。

それでも7分/kmくらいですので、上々のスタートだと思ったのですが、最後尾にも関わらず周りはもっと早いペース。みんな完走できるのか?そんな不安もありましたが、他の人の気遣いをする余裕はありません。

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わたしはある程度の走り方を掴んだので、6分30秒/kmをひとつのペースに定めました。

コースは知っていますので、前半はとにかく耐えるだけです。裸足ではありませんが、沿道からは「河童がんばれ!」の声をもらえます。子どもたちとのハイタッチでエネルギーももらえます。

ただ、ハイタッチをするとペースが上がりやすいので、そこだけは自重します。

前半のアップダウンエリアを超えて20kmの手前、左足首に軽く違和感が発生します。もちろんこれは想定内です。いつもなら、無理にその状態を引っ張りますが、今回はすぐに走り方を変えます。

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レース途中から降り出した雨により、足裏はかなりふやけた状態です。

傷口は防水性のあるバンドエイドを貼っていますので、雨が染みてくることはなく傷周りの皮膚が柔らかくなったことで、傷を引っ張るようなこともありません。だったら、もう少し足の内側も使って接地しても大丈夫なはずです。

思い切って、足を置いてくる走りへとシフトします。やや痛みはあるものの、足首をこれ以上酷使するわけにはいきません。足を置いてくる走りにすることでややペースが上がってしまいましたが、ここは気にせずにそのまま走り続けます。

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25kmくらいでソックスが水をかなり吸い、傷部を守るためにシューズ内に入れていた詰め物も膨張したので、小指がシューズ内部で圧迫されます。ここで詰め物の一部を取り除き、再調整するのに2分半のロス。

30km地点の金沢カレーエイドで、カレーを堪能するためにまた2分半のロス。大きなロスはこれくらいでしょうか。そこそこ安定したペースで走れます。

ただし、35kmを超えた当たりからふくらはぎがキツくなります。普段と違う走り方をするということは、普段使わない筋肉を使うということです。さらに万里の長城マラソンの疲労もあり、足はパンパンです。

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ここでペースを落としても完走はできるのですが、ペースを落とそうと思いません。傷が痛いのであれば、無理はしませんが、筋肉が痛いのはマラソンを走っているなら仕方ないこと。

耐えればいい。

この発想が万里の長城マラソン前との大きな違いです。以前は痛いのも辛いのも避けてスピードを簡単に落としていましたが、今回はそういう気持ちがほんの少しもありません。

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どれだけ足がパンパンになっても、弱音を吐かない自分がいます。それどころか逆境になればなるほど力が湧いてくる感覚。もしかしたらわたしもクレイジーランナーたちの世界に、半歩くらい足を踏み入れることができたのかもしれません。

そして、ネットタイム4時間52分24秒で、ゴールゲートを通過。

金曜日にはスタートラインに立てるのかすら分からない状態からのフルマラソン完走。タイムは平凡でしたが、自分なりに厳しい戦いができたように感じています。

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ケガを悪化させずに、それでも自分を追い込むまで走る。シューズには頼りましたが、それも裸足ランナーでありながら、シューズで走ることにもこだわってきたからできたことです。

自分の知識と経験の総力戦。たまにはこういうマラソンも悪くない。そんな想いで金沢マラソンを終えました。

…ところがこのあと、わたしにとんでもないことが起きます。その話は明日にでもしておきましょう(twitterには書いてしまいましたが)。


ふだんの金沢に出会う旅へ
著者:杉山 正博、濱尾 美奈子、アラタケンジ
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