東京マラソンの厳しい警備が今後も続くわけではない理由

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RUNNING STREET 365の東京マラソンの記事に対して、匿名でコメントをいただきました。警備はオリンピック後に簡素化されるという予想に対して、「テロはどうするのか?簡素化なんてできるわけがない」という内容でした。

「ボストンマラソンを忘れたの?」と厳しく言われましたが、わたしは反対に警備でテロを防げるという思考を持っている人がいることに驚きでした。

わたしは年々厳しくなっていく東京マラソンの警備は、基本的に2020年の東京オリンピックのための予行演習として使われているだけで、そこまでの警備は必要ないと考えています。

それはテロ対策が必要ないということではなく、そんなことをしてもテロを完璧に防げるわけではない言いたいだけです。確かに選手に紛れてスタートエリアでのテロ行為をされることは防げるかもしれません。でも防げるのはそこだけです。

スタートエリア直後には大勢の観客がいます。いくらスタートエリアでの警備を強化しても、テロを防ぐことはできません。するのであれば、応援に来ている人たちのエリアも警備しなければ意味がありません。

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そんなことは運営側も百も承知だと思います。ゴールエリアも警備を強化していますが、和田倉門の地下はいくらでも応援ランナーが入れます。そこで爆破があれば防ぎようがありません。丸の内仲通りでテロが起きても防げません。

だから何もしなくてもいいかというと、そうは言いませんが、閉じられた競技場などと違い、オープンになるマラソン大会でテロを防ぐことは事実上不可能です。だからこそテロが行われるわけです。計画段階で未遂に終わらせる以外に防ぐ方法はありません。

わたしが、東京マラソンの予行演習と言うのにはもちろんわけがあります。本当にテロ対策なのであれば、もっと徹底した対応が行われます。フェイスペイントして本人か分からない仮装ランナーが止められることもなく、停止禁止エリアで立ち止まる人がいても注意を促す程度で、全力で止めようとはしません。

形の上では行っているけど、実態はそれほど厳しくありません。警備会社が手を抜いているとは考えにくく、さらに全体として柔らかい対応をしていましたので、そういう意思統一がされています。

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北京などに行ったことのある人ならわかるともいますが、本当のテロ対策はもっと緊張感をもって対応されます。天安門広場に入るのに、どれだけ行列にならなければいけないか、体験した人もいるかと思います。

そこまで行ってもテロは起きます。専門家も断言していますが、テロを完璧に防ぐというのは不可能で、できることは予防と被害を最小限に抑えるということだけです。

被害を最小限に抑えるために、ゴールエリア付近への立ち入りを禁止しても、テロが狙っているのはソフトターゲットである一般の応援者ですので、やはり標的がゴールエリアから丸の内仲通りや浅草雷門前を狙います。

本当の意味でのテロ対策は、様々な危険性を想定して、それにたいする対応を決めておくことにあります。スタートエリアには危険物が持ち込まれるはずがないのですが、実際にはスタートエリアでの爆発も想定しますし、観客が集まるエリアでもどう対応すべきかシミュレーションします。

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ありとあらゆるシミュレーションが必要で、東京マラソンはそれを練習する場としては最適です。何よりも東京都と警備会社、警察が協力し合えるイベントですので、本番を想定して活用することは容易に想像できます。

想像できるだけでなく、実際に東京都も「東京オリンピック・パラリンピックへの試金石」と明言しています。

ですので、これを継続するのも2020年までだと想定できます。なぜなら、このシミュレーションと警備にはお金がかかるからです。東京マラソンはそのほとんどを協賛金と税金で補っています。

ちなみに東京マラソン2017から警備も強化していますが、安全対策・警備強化経費は1億円の増額となっています。2016年までは制服警備員の数は6000人程度でしたが、今年は2万人規模で警備を行ったそうです。さらに費用が増えたのは言うまでもありません。

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これだけの費用の一部とはいえ、3万6千人のランナーのためだけに税金を使うということに対して都民の理解を得られるとは思いません。東京都は1億円近いお金を出していますが、お金のなる木があるわけではありません。

2万人規模の警備を東京オリンピック後まで継続するのは現実的ではありません。おそらく6000千人程度の警備体制に戻ります。そうなると、スタートエリアでの細かなチェックも難しくなります。

振る袖がないのであれば、警備の規模をどうにかして縮小するしかありません。

そもそも東京マラソンでのテロ対策ということ自体が、完璧にはできないことなのですから、「やっていますよ」というアピールできる最小限の警備しか行わなくなるはずです。

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こう書くと「じゃあテロが起きたらどうするのだ?」とメッセージを送ってくれた人みたいに言い出す人がいますが、マラソンにおけるテロを会場で完全に防ぐことは絶対にできません。

反対に、わたしたちが行わなくてはいけないのが、テロが起きたらわたしたち一般市民はどう行動すべきかという教育と訓練です。そして、テロは警備が防いでくれるものではないという共通認識を持つことです。

この議論の先にあるのは、東京マラソンを廃止するという解しかありません。イベントがなければテロも起きませんし、対策のお金も必要ありません。ただテロ対策ができないことを理由に廃止をすると「テロに屈した」という人が出てきます。

下手すると「じゃあテロが起きたらどうするのだ?」と言った人が「テロに屈した」と言い出しかねません。批判することでしか自分の存在を確認できない人たちが、どの時代のどの場所にも一定数いるものです。

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2021年以降、東京マラソンは見えない部分で警備を緩くしていくことになるのでしょう。それとは別にテロの予防という点に関して、国とともに都の予算を使っていくはずです。未然に防ぐための技術は日々進歩しています。

それでも大事なのは1人1人がそれを想定して動くということです。間違っても「警備があるから安全」なんて思わないことです。警備で出来るのは「車の侵入を防ぐ」「暴れまわる人がいたら取り押さえる」くらいでしかありません。

いずれにしても、今年のような厳しい警備もあと2年だけではないでしょうか。それ以降はもう少しランナーファースト、応援する側の気持ちも汲んだゴール会場づくりになると、わたしは考えています。


2020年東京オリンピック・パラリンピックはテロ対策のレガシーになるか? (近代消防新書)
著者:吉川 圭一
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