「鹿児島マラソン2018」裸足完走レポート

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裸足力が完全に落ちていることに気づいたのは、出発の2日前。1ヶ月前の愛媛マラソンを終えて、すぐに裸足練習を再開したものの、そのほとんどがウレタン舗装のきれいな路面でのスピード練習でした。

2日前に初めてアスファルトに立つと、1歩踏み出すのもつらいくらい痛みが走ります。1年前の鹿児島マラソンはシューズで挑むつもりで、前日に裸足に切り替えましたが、冬の期間も裸足を続けていたので、いきなりでも問題ありませんでした。

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それでも昨年はかなり痛みに耐えての完走だったのですが、今年は荷物預けからスタートブロックまでの数百メートルすらまともに歩けません。「これはやばいかも」とサンダルを荷物と一緒に預けたことを後悔しました。

それでも裸足であることを、たくさんの人が注目してくれますし、過去に裸足で完走できなかったフルマラソンは万里の長城マラソンだけ。ハダシストとしてのプライドがあります。

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何とかなるだろうという思いと、本当にダメなら走るのをやめればいい。そんな思いでスタートラインに立ちます。

気温はすでに15℃近くにまで上がっています。これくらいの気温になると体がすでに走れる状態に温まっているので、注意しなくてはいけないのが序盤のオーバーペースです。

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注意はしていたのですが、スタート地点にいるはずのない高橋尚子さんがいたことで舞い上がってしまいました。片想いの人に街でばったり出くわしたときの心境。心拍数は一気に190を超えたかもしれません。

その結果、キロ7分30秒くらいで入るつもりが、6分台で走っています。

ただし、鹿児島マラソンは前半の10kmが裸足ランナーにとって重要で、比較的フラットな路面のここで、ある程度の貯金を作っておく必要あります。後半の粗いアスファルトにより失速が約束されているマラソン大会。

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ただし、無理な追い越しはしません。周りよりも自分のペースのほうが速いのは明らかですが、貯金は必要でも足裏の消耗は避けなくてはいけません。

明らかなオーバーペースだったこともあり、4km地点のスペシャルエイドで休憩。ここは黒牛の焼肉が振る舞われます。少しの行列ができているため、ほとんどの人はスルーします。

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6分くらい待っていただいた牛肉。おどろくほど美味しい味がしました。昨年も食べたのですが、同じものとは思えないほどジューシーで、マラソン大会のエイドで出て来る食べ物のレベルを超えています。

再度走り出したものの、今度は8km地点くらいにあるエイド。ここも種類が多くて、しっかり足を止めないととてもじゃないですが食べきれません(誰も全部食べろとは言っていませんが)。

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2つのエイドを合わせて10分のロス。それに10km手前でトイレに行ったこともあり、その時点ではほぼ最後尾にまで順位が落ちていました。

ただ、ここまでの走りで「完走は無理かも」という不安が「完走はできる」という確信に変わります。そこまでは路面がきれいだったのもありますが、裸足ランニングの魅力は、走れば体が整うということにあります。

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足裏の痛みだけは蓄積されていきますが、体の使い方という点では走れば走るほど良くなります。24時間マラソンなどでは、最後の1〜2時間が一番きれいに走れています。

10kmで完全に体が整ってきたので、あとは痛みをどれだけうまく受け流すことができるか。

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裸足ランナーですので、沿道からのたくさんの声援をもらえます。驚くような声や心配してくれる声、普通に走っているだけでは得られないものをもらいながら前に進みます。

フルマラソンの距離に対する考え方は人それぞれですが、わたしは3分割して組み立てをします。最初の14kmはその日のコンディションを感じながら走りの方針を決め、次の14kmはできるだけ消耗を避けるように走ります。

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重要なのが最後の14kmです。裸足でもシューズでも残り1/3というのは体が最もつらくなるタイミングです。よく30kmの壁なんて言いますが、実際にはその少し前から体には異変が出てきます。

その最後の14kmに入る前にいかにして余裕を残すか、裸足の場合は足裏を残すかがポイントになります。

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無理な追い越しをしないこと、できるだけ白線の上を走ること。体をリラックスさせること。それを意識しながら、ときには桜島を眺めながら心に余裕を持たせて。

ただ、沿道にいるボランティアの学生さんたちの熱量がすごすぎて、ついついこちらも頑張ってしまいます。男女問わず、こんなにいい笑顔ができるのは、きっと普段の生活が満たされているからでしょう。

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神経をすり減らすような都会の学生とは違う、奔放さが鹿児島には残っているのかもしれません。

とはいえ、足裏はゆっくりと消耗していきます。26kmの折り返し地点の手前は、隙間がないほど沿道に地元の人たちが並んでいるのですが、ここの路面ほど凶悪なアスファルトをわたしは知りません。

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消耗した足ではアスファルトに足を置くことすらできませんので、わたしは路側帯のきれいな部分を走ります。昨年は路側帯に小石などがたくさんあったのですが、今年は前日の雨でほとんど流されていました。

ただし、路側帯に行くということは、地元の人たちからの熱烈な応援を受けます。痛い顔はできませんし、ハイタッチにはすべて応えて走ります。

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そして折り返し地点を過ぎたくらいで、足裏をすべて使い果たしました。その後のエイドで足を休めていたのですが、もはや回復することもないくらいに知覚過敏状態です。

一度止まってしまうと、再び走り出すために声を出して自分を奮いたたせる必要があります。28kmまで余裕をもたせるはずが、残りの14kmはただのガマン大会。

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さらに思わぬトラブルが発生します。すでに足裏が残っていないことで気落ちしたわたしは、走り方が雑になったのでしょう。左足の親指の先端をアスファルトで削ってしまいます。

目で確認をするまでもなく流血しています。

いつもなら完全に気力を失うパターンでしたが、この日はなぜか違います。急に心のスイッチが入り「こんなんじゃだめだ」と、背筋がピンとして、足に力強さが戻ってきます。

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とはいえ流れた血を止めなくてはいけません。アドレナリンを一気に高めて、親指の末端部に血が流れないようにします。なぜそんなことができたかは分かりません。ただとっさにした行動がそれでした。

親指の先端から流れていた血は、数分もしないうちに固まり、指先の痛みは消えていきました。ただし、気持ちは取り戻したものの、足裏を消耗しきった状態に変わりはありません。

 

白線の上を走りたいと思うものの、この日の気温が高かったのもあり、周りの8割は歩いているような状態。白線の上を行こうと思うと、何度も人を避けるために横に移動しなくてはいけません。かといって粗い路面も絶えられません。

行くも地獄、行かぬも地獄。だったらもう行くしかありません。こうなったのもすべて自分の練習不足が原因です。

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普段なら「とりあえず次の1km」と思ってペースを維持する後半も、この日だけは「とにかく1歩」と自分に言い聞かせます。足を前に出せばゴールが遠のくことはありません。

ここまで痛みに耐えてきたこともあり、体のあちこちが硬くなっているのを感じます。

それでも残り2km、再び街中に帰ってくると、途切れない沿道の声援が始まります。いただいている声援にはすべて応えたいと思いながらも、それだけの余裕がありません。

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何度かハイタッチを空振りしたときに、悔しさで景色が少し歪んでいました。こんなにも応援してくれているのに、それに応じられない自分。何のために裸足で走っている?何のために河童を被っている?

そんな自分へのいらだちと、そうは言っても動かない足。

その悔しさだけを原動力にして、最後の数百メートルを走りきりました。ゴール後にボランティアの人たちが、慌てて近づいてくるくらいの疲労困憊状態でした。それでも自分の足でメダルをもらいたかったので、必死に笑顔を作って「大丈夫です!」と答えます。

 

完走メダルを手にして思ったのは、「鍛え直して戻ってこよう」ということでした。

実は鹿児島マラソンは今年まででいいかなと思っていました。仕事柄できるだけ多くの大会、行ったことのない大会を紹介する必要があります。鹿児島マラソンを紹介したように、他の大会も紹介したい気持ちがありました。

もっともそんな思いは、前夜祭の振る舞い酒ですべて吹き飛びましたが、この不甲斐ない走りにより気持ちは確固たるものになりました。もちろん抽選で選ばれなくてはいけませんが。

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もし走らせてもらえるなら、来年は痛みがあっても笑顔でゴールできるように、最高のコンディションでスタートラインに立ちます。痛さを完全になくすことはできませんが、強がれる自分でいられるくらいには鍛えてきます。

裸足ランナーとしての実力が試されるマラソン大会。厳しいコースがここにはありますが、自分が本物の裸足ランナーであるかを試すことができる場でもあります。

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完走したものの、自分の未熟さを思い知った1日。ただそれは不快ではなく、むしろ喜びに感じられます。「仕方ない、また戻ってくるか」と言いながら、何故かニヤけてしまう自分がいます。

鹿児島マラソン2018は、そんな苦しみと喜びが高いレベルで共存する魅力的な大会でした。


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著者:昭文社 旅行ガイドブック 編集部
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