裸足の全力で気持ちを伝えた花蓮太平洋縦谷マラソン2018

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「だから真面目に走るのは嫌なんだ」とつぶやく。

今回の花蓮太平洋縦谷マラソンのテーマ「真面目に走る」は自分で決めたことでしたが、終わってみると右のアキレス腱と左足親指に激痛が残り、まともに歩くことも出来ません。

先週の台北マラソンを裸足で走ったことによって、傷めてしまった左足の甲。原因が分からないまま、痛みを抱えた状態で迎えた前日でした。

まだこの時点では裸足にするべきか、サンダルにするべきか、それともシューズを履くべきかで悩んでいました。少なくとも5時間以内に帰ってこないと帰りの電車に乗れなくなる可能性もあります。

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レース中に足の甲の痛みが出てきたら、とてもじゃないですが裸足で完走なんてできません。街歩きですらうまく出来ない状態ですから。

でも、最終的に出した結論は「裸足」でした。

花蓮までやってきたのは、今年発生した地震に対して、ランナーだからできる支援をしたかったからです。ひとつはマラソンを一緒に走るということで、もうひとつはお金を使うということ。

それに加えて、わたしが走ることで何かを感じてもらえれば嬉しいじゃないですか。そのメッセージというのは裸足を通じて伝えられるといいなと思ったわけです(自己満足でしかありませんが)。

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花蓮太平洋縦谷マラソンは海岸線を走るということもあって、ギャラリーはほとんどいません。だから、同じコースを走るランナーを勇気づけられたらなと。

レース当日は雨。気温はやや低めで、送迎バスを待っている間もやや体が冷える感じでした。それでも雨に濡れるのを避けたかったので、アップは一切していません。

ペースは相変わらず、走り始めてから決めればいいかなとは思いつつも、GARMINの充電器を忘れたので台北マラソンで電池をかなりつかったこともあって、GPSランニングウォッチはなしで走ります。

そのかわり、Xiaomi Mi Band3を時計代わりしたのですが、数字が小さすぎて見えません。早々に、タイムを確認することを諦めて、ほぼ100%感覚だけで走りました。

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そして、決めたルールが「真面目に走る」ということです。裸足で安全な領域をペタペタ走るのではなく、いまできるベストの走りをすることで、大事なことが伝わるような気がしました。

今年の地震の影響もあってか、フルマラソンの参加者はなんと500人以下ということで、かなり寂しい感じで号砲が鳴りました。もちろんスタートロスなんでほとんどありません。

ペースはまったく分からない状態でスタートしたのはいいのですが、どうも路面状態が安定しません。このため、感覚的にもペースが安定していないのが分かります。

そして、場所によっては足裏にかなりの負担がかかります。幸いスタート直後には足の甲の痛みはありません。

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普段から体の声を聴いて走るべきと言っておきながら、距離もペースもまったくわからない状態でのランというのは思った以上に大変です。しかも路面状態は猫の目のように目まぐるしく変わります。

それに加えての雨。ただ、雨そのものは裸足ランにとってはとてもいい環境です(少なくともわたしの場合は)。雨で難しいのは気持ちを維持するのが大変だという点です。

かなり高い集中力を続けないと「もういいや」と気持ちが折れてしまいます。

ペースは分かりませんが、手元の活動量計と5kmごとの距離表示で、どれくらいで完走できそうかの計算はできます。ただ、距離表示が適切ではないのか、それともわたしの感覚がおかしいのか、思ったようなペースにはなっていません。

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計算上はキロ7分くらい。感覚的にはキロ5分50秒といったところです。

3週連続のフルマラソン、2週連続の裸足ということで疲労もあるのかなと思いながら、できるだけペースを維持しようと努めます。ハーフマラソンの折り返し地点を過ぎたら、そこからは上り坂。

上り坂は得意な方ですが、いかんせん2週間まともな練習ができていません。しかも前日にはマラソンを控えているとは思えないほどの暴食。

ケーキを食べたいとカフェに入った足で、向かいの食堂が美味しそうで夕食にはしご。その向かいにあったチョコレート屋のカフェも美味しそうということで、ここではブラウニーとチョコレートドリンク。

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結果的にはこの暴食によって、ほぼ無補給で走れたのでマラソンとはつくづく不思議なものだと感じましたが、いかんせん足は動いている気がしません。

折り返してからは苦手の下り。ここはもう、前方の台湾人ランナーに必死にくらいつきます。「スピードを緩めたら楽になるのにな」と思いながら。

ちなみに折り返し地点で、2時間5分くらいのタイムでしたので、あわよくば4時間以内の完走も見えてきます。ただ、過去に裸足でサブ4をしたのは1回だけ。

そのときにつらくて「もう裸足では本気は出さない」と決めたのですが、まさか異国の地で裸足の全力走をしています。ただ、どこかで失速する予感はありました。

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折返しコースですので、このあとにどれくらい荒れているのかは頭に入っています。失速することが容易に想定できたので、さすがにサブ4とはいかないんだろうなと。

案の定、坂を下って海岸線の自転車道に戻ってきたら、荒れた路面のせいで歩いているかのようなペースに。

でも、とにかく笑顔だけは貫こうとしました。30kmを過ぎたところで、両足のアキレス腱が完全にロックしてしまったので、さすがにここまでかなと思ったのですが、なぜか力がじわじわと湧いてきます。

そこまで周りのランナーと抜きつ抜かれつを繰り返していたのですが、残り5kmとなってから急にペースが上がって、1人だけ抜け出す形に。そこからは気合と根性しかありません。

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ただ、必死の顔にならないように歌を口ずさみながら。

不思議なもので、苦しくても歌を歌っていると痛みが小さくなります。もう動かなくなったはずの足首もなんとかやる気を出してくれます。

最後のエイドで地元の若者からの声援ももらって、残った力を振り絞ります。そういえば、ここまで何度も地元のスタッフとランナーに支えられてきたような気がします。

そして、この国が日本の統治下にあったことから続いている歴史が頭をよぎり、気がつけば目から涙が零れ落ちそうになっていました。「この港から日本に帰った人がいる」と思うだけで胸が締め付けられます。

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当時の人たちの苦しみに比べれば、わたしが自分で招いた足裏の痛みなんてなんてことありません。

花蓮には間違いなく日本人が暮らした時代があり、戦後の歴史の中でも日本とは切っても切れない縁のある街でもあります。ただ、すでに日本人はそのことを忘れています。

それでも、花蓮の人たちは日本人だというだけで歓迎してくれます。

歴史を作った人たち、歴史を引き継いだ人たちに感謝しながら、最後の1kmを駆け抜けて、3時間57分で無事裸足で完走しました。

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無理をしたから、左足の親指はもげてなくなりそうですし、右足のアキレス腱は今にも切れてしまいそうです。まともに歩くことも出来ず、冒頭の「だから真面目に走るのは嫌なんだ」につながるわけです。

完全に自己満足でしかありません。わたしの思いなんて伝わってないかもしれません。

しかも、わたしがいつも言っている「無理をする必要はない」「フルマラソンは頑張ってはいけない」という考え方を完全に無視しての完走です。決して褒められたものではありません。

でも、男にはやらなきゃいけないときがあり、きっとこの日がわたしにとってのそのときだったのでしょう。

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ちなみにこのタイムで世代別8位。シューズを履いていたら、実はわたしでも優勝も狙えたほどの花蓮太平洋縦谷マラソンはゆるい大会です。ちょっと欲が湧いています。

来年は裸足ではなく、本気レースをしようかなと。

えぇ、もちろん来年も走るつもりです。花蓮にどっぷりハマってしまいましたから。でも、来年の大会までは待てないかもしれません。花蓮にはまだ食べていない美味しいものがありすぎて、とても1年も我慢できそうにありません。

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追伸

マラソン会場からの戻り。ホテルまで2kmくらいあるのですが、傷む足を引きずって歩いていたら、通りがかりのおばちゃんが車を止めて「送っていくよ」と。

いったい、過去にここで生活していた日本人は、この地に何を残したというのでしょう。見ず知らずの日本人を自ら車に乗せて送っていくなんて、ちょっと普通なことではありません。

これも、また花蓮に戻ってきたくなった理由です。花蓮は思った以上に日本とのつながりがあることを知りました。それをもっと深く学ぶためにも、これから数年間は頻繁にやってくる必要があります。

今日の1枚

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花蓮のおしゃれカフェ 花蓮にはこういうお店がいっぱいあって、ちょっと羨ましい。


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著者:一青 妙
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