満腹台湾珍道中「台南の朝散歩と朝ごはん」編

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弾丸旅行なので時間がない。3泊4日、実質2日半しかないにも関わらず、台南も台北も満喫したいというのだから、どれだけ時間があっても足りない。

「時間がない、時間がない」ふしぎの国のうさぎの気分。

7時に朝ごはんを食べに出る予定が、「7時15分目標で準備中です!!」のLINE。そうね、女子は大変ですから。男は起床後5分もあれば、どこにだって出かけられる。これだけは男でよかったと常々思う。

時間はないが、2㎞先の牛肉湯のお店までは徒歩。知らない街を馴染ませるには、歩くのが一番というのがわたしの持論だ。蒸し暑さの残る台南で朝から散歩。タクシーを使えばすぐだが、便利なものは時として大切なものを振り落としてしまう。

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幸いここにいる4人はみんなランナー。走力の違いはあれど、2㎞という距離に臆する人はいない。

この旅を通じて感じたことだが、やっぱりランナーはすごい。運動することに抵抗なく、ある程度習慣になっている人たちは、動ける距離がまったく違う。

それが嬉しくて、余計にハードなスケジュールを組んでしまう。

とはいえ、やはり街歩きはとても重要だ。もしかしたら、観光名所を尋ねるよりも、小さな路地に入り込んで、見たこともないような景色の中に身を置くほうが、旅の記憶をより良いものにしてくれるとわたしは信じている。

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ちょっと気になる路地に入ったり、何も考えずに歩いたら、台湾らしい風景が目の前に広がる。予定外の発見や出会いに、朝から胸踊らせてしまったが、旅をするときはいつだって気持ちは二十歳。初めて海外に出たときから時計は止まっている。

てくてく歩きながら、お店がほとんど開いていないことに不安を感じながら、目的地の六千牛肉湯に向かう。路地を抜けて夏林路に出ると、少し賑やかになり、ポツポツと朝ごはん営業しているお店が目に入り始めて少し安心。

もしかして目当てのお店が休みだったらどうしようと思ったが、六千牛肉湯はちゃんと営業中。ただし、そこそこな行列。

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台南に来たなら牛肉湯は食べておいたほうがいいという口コミがあり、個人的にはかなり半信半疑だったのだが、現地の人たちが行列を作っているくらいだから期待度が一気に高まる。

ちなみにわたしは牛肉麺があまり好きではない。スープも麺も淡白な感じがして物足りない。牛肉湯も同じようなものだろうと思っていたのだが、そう思っていたことを深く反省するほどの衝撃を受けることになる。

注文したのは牛肉湯とライス。それだけだ。牛肉をご飯に乗せて、ご飯と一緒に口運ぶ。

……なんだこの美味しい食べ物は。

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41年生きてきて、こんなシンプルで美味しい牛肉料理を食べたことがない。これまで食べたどんな牛肉料理よりも深みがあり体に染みてくる。

スープをご飯にかけて食べると、これもまた美味。

勢いよく食べたいところだが、わたしは大変なことに気づいてしまった。ひと口食べるごとに、この幸せな時間の終わりが近づくということに。口に肉を運び幸せを噛みしめると、お椀に残された幸せがひとつ減っていく。

子どもの頃、めったに食べることのなかったケーキを、そんな気分で口にしていたことを思い出してしまった。

食べたいけれども、食べるとなくなる。せつなすぎる台南の朝ごはん。

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最後の一切れを口に運び、わたしの幸せな時間が終わってしまった。なんとかして自分で作れるようになりたいが、いったい何が入るとこんなにすごい味になるのか、皆目見当がつかない。

これはまた来なくてはいけない。個人的には牛肉湯を食べるためだけに台南に来てもいい。それで朝からずっと牛肉湯めぐりをしてみたい。いまこうして思い出すだけでも、なぜか目に涙が浮かんでくる。

これはきっと恋。

でもきっと次に来たときは、別の朝ごはんを食べに行くのだろう。わたしはきっと浮気性。いや、恋愛は一途ですから(フォローにならないフォローを入れておこう)。

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せっかく遠くまで歩いたのだから、ホテルまでの戻りは観光スポットをめぐりながら。時々やってくるスコールのような雨に、せっかく一晩で乾かした靴の中をびしょびしょに濡らされながら、昨夜行けなかった神農老街。

神農老街には夜に来るのが一番と言われていたが、雨の朝もこれはこれで画になる風景。本当はこういう路地をゆっくりと歩きたいのだが、これも次回への宿題としておこう。

神農老街から赤崁楼へ向かう途中、飲み物が欲しいということになり、朝から食欲全開の仲間たちと、フレッシュジュースのお店へ。わたしたちはここでようやくマンゴーに出会う。

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夏の台湾に来てマンゴーを口にしないなんてどうかしてる。

日本人の妙なテンションに圧倒されたのか、店員さんが「サービスです」と手渡してくれたのは、たっぷり入ったフルーツの盛り合わせ。どんだけ日本人に親切にすれば気が済むのだろう。こんなにもされると、どうお返ししていいかさっぱりわからない。

マンゴースムージーは言うまでもなく美味しい。きっと真夏の青空の下で飲むとさらに美味しいのだろう。実際に夏に来たら、ずっと台湾ビールを片手に持っていそうな気もするが。

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せっかくだからと、赤崁楼も中に入って見学。赤崁楼は台南で一番の見所かもしれない。ただ、わたしは勉強不足で、中国語の説明を読みながら学習。中国語はしゃべれないが、読む方は半分くらいわかる。

赤崁楼はオランダが統治していた時代の建物で、それを漢民族が取り戻し、その後一度大きく崩れてしまったものの再建。そして日本統治時代にも大修復が行われたのだとか。戦後にも大修復が行われ今の形になっている。

台南の歴史を見続けてきた建物が赤崁楼なのだ。

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建物内をゆっくりと見ていると、この時点で午前11時。本来なら10時には新幹線に乗っているべきだったのだが、予定は未定。1秒だって無駄にしていないのだから、なってしまったものは仕方ない。

素早くチェックアウトを済ませて、台南を後にする。

行きと同じ過ちを犯さないために、500ml缶の台湾ビールを買い込み、意気揚々と新幹線に乗り込んで、またしても2分もしないうちに「静かにしてね」との注意を受ける。

デジャヴか?これはデジャヴなのか?

24時間前に同じ注意を受けた記憶がある。違うところで同じ過ちを犯してしまったようだ。そして当然のように500ml缶の台湾ビールはあっという間になくなってしまう。学習能力ゼロ。

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台南にはたくさんのやり残しをしてしまったが、旅というのはそういうもの。

コンプリートしたら、そこに行く必要はなくなってしまう。行けなかった場所や、できなかったことが多ければ多いほど、また行きたくなるものだ。北京に行き過ぎて、北京での滞在時間のほとんどを公園での読書と昼寝に費やしているわたしが言うのだから説得力はまったくないのだが。

問題はここからだ。台南から台北に戻るのだが、予定よりも2時間遅れている。台北でランチに小籠包と思っていたのだが、台北に着く頃には閉店時間になってしまう。観光のスケジュールもかなり微妙な時間になっている。

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ちっぽけな脳みそをフル回転させて、この後のスケジュールを組み直す。何ができて、何ができないのか。

結果的にわたしたちが決めたのは「それでも全部やる」ということだ。2時間遅れているなら、寝る時間を2時間ずらせばいい。わたしたちに残された時間は限られている。躊躇せずに全部やろう。

くたびれるのは帰りの飛行機の中で十分だ。


愛の台南
著者:川島 小鳥
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