もし終の棲家を自分で決められるなら平泉がいい

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岩手を訪れたのはこれが3回目です。観光やマラソンでやってきたのは初めてで、右も左も分からない状態で一ノ関駅前に到着しました。午前5時前で、冷たい小雨が降っていましたが身の置き所がありません。

そんな始まりでしたが、最終的には自分にとって特別な場所になるのではないかと思っています。

マラソンで走った奥州も、10年ぶりに再会した友だちの暮らす盛岡もいいのですが、何といっても平泉。自宅に戻ってすぐにしたのは、平泉の賃貸物件のリサーチ。

もし終の棲家を自分で決められるなら平泉がいい。そう断言できるほどに居心地のいい場所でした。

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もちろん、これから先の旅で、もっといい場所が見つかるかもしれません。それでも平泉ほど美しく、そして心が穏やかになる場所がそうそうあるとは思えません。

パズルのピースがぴったりハマるように、わたしの中の空白部分が埋められた感覚があります。

奥州藤原氏が栄華を極めた地。それくらいの知識しかなく、岳飛伝でも日本の貿易相手として登場するくらいの場所という認識しかありませんでした。

最初に訪れたのは柳之御所遺跡。ここにある柳之御所資料館で平泉について学びました。当然建物などは一切残っていません。それでも当時の姿を思い浮かべるのはそれほど難しい作業ではありません。ただひとつだけ疑問が湧きます。

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「なぜ平泉だったのだろう」

奥州の北側にはもっと広大な土地が広がります。平泉は東西に山があり、北上川も流れているため、利用できる土地はそれほど広くありません。北の都とするにはどう考えても手狭なのに、なぜここを選んだのか。

その答えはすぐ隣りにある無量光院跡で見つかりました。

視界に無量光院跡が入ってきたとき、心臓がぎゅっと締め付けられ、急に涙腺が緩んでしまいました。跡ですのでもちろんそこに建物はありません。ただ、わたしの中に込み上げてくるものがあります。

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これほどに美しい景色がこの世にあるなんて信じられません。そこには何もないのにいつまでも眺め続けたい魅力があります。

わたしはスピリチュアルというものが分かりませんが、その土地の持つ力というのはあると思っています。

何度行っても自分を受け入れてくれないような場所があります。わたしの場合は神宮が苦手で、伊勢神宮にいたっては何年も近づくことすら出来ませんでした。

ところが、平泉はすっとその土地に引き寄せられるような感覚があり、無量光院跡ではなぜか懐かしさすら感じました。

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鈍感なわたしですら何かを感じるのですから、もっと感覚が優れていたであろう昔の人たちは、強く感じるものがあって、ここに都を造ると決めたのでしょう。

長く続いた戦のあと、浄土思想による平和な町を作ろうとした藤原清衡。その想いを実現するためには、この平泉という場所にこめられたエネルギーのようなものが必要だったのかもしれません。

ただ、こういう感覚は人それぞれですし、わたしが神宮を苦手としているのと同じように、平泉に居心地の悪さを感じる人もいるのだと思います。

このあと中尊寺や毛越寺なども訪れますが、どこに行っても穏やかで、頑張らない自分でいることができました。

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源義経の最期の地となっのも平泉。その最期はとても悲しいものですが、平泉で生涯を終えることができたというのは、彼にとって救いだったかもしれません。彼の人生はまだ続いたという伝説もあるようですが。

浄土思想の影響かどうかは分かりませんが、ここで暮らす人たちもどことなく柔和です。

毎日美しいものを目にしていれば、自然とそうなるのかもしれません。自分を主張するよりも、誰かのために何かをするのが当たり前になっている人たち。

何をしてもらうかではなく、何をしてあげられるかを大切にしているように感じます。

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きっと半分はわたしの思い込みなのでしょう。人間ですからいい部分もあれば悪い部分もあります。わたしは外から来た人間だから、いい顔だけを見られたのかもしれません。

それでも、やはり自分にとっては特別な場所なんだと思います。寒いのが苦手なわたしですが、いずれここで根を張るんだろうなという予感はあります。終の棲家として。

余りある煩悩と業を少しずつ減らしていったら、きっとここで暮らせるようになる。それが近い未来なのか、ずっと先の未来なのかは分かりませんが、いつか呼ばれるときがくるはずです。

その日までは観光客の1人として平泉を訪れるとします。今回は観光スポット中心でしたので、今度はお気に入りの小説でも読みながらのんびりと。


自分の終い方 元気なうちに選ぶ〝終のすみか〟
著者:高橋 寛美
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