旅をする理由

少年は旅を経験して大人になる。ずっとそう思ってきました。でも最近はこうも思うんです。旅はいつだって、大人を少年に戻してくれると。

花蓮太平洋縦谷マラソンに出場するために、台湾に来ています。レースは土曜日なので金曜日のうちに現地入り。花蓮にやってくるのは、昨年に続き2回目です。ここはとても居心地がよく、1年ぐらいここで過ごせないものかと企むくらいお気に入りです。

2018年の大地震で話題になった地域ですが、もう日本で覚えている人は少ないかもしれません。人はいつだって新しい何かを求めるものですから。

ランナーにできる復興支援ということで、昨年も花蓮太平洋縦谷マラソンにエントリーをしています。それをブログで熱く語ったときに「大袈裟すぎる、花蓮の被害はそんなでもない」とメールをくれた人がいました。熱量の高い想いを伝えるのは簡単ではないのだなと学びました。

それはともかく、旅に出るきっかけはいつだって好奇心です。見たこともない景色を見たり、食べたことのない料理を食べたい。キューバに行ったのは、作家の村上龍さんがあまりにも褒めるので、自分の目で確かめておきたかったから。花蓮に行きたかったのは、花蓮の今を自分の目で確かめたかったから。

他の人が言う「大丈夫」なんて1ミリも信用していません。わたしだって大丈夫じゃないのに「大丈夫」と強がる日々の連続ですから。

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旅は人を成長させる

旅は間違いなく成長をもたらしてくれます。知らない国で、言葉も通じない状況におかれるわけです。頭がフル回転しますし、何をしても刺激になります。心拍数が最初から30くらい高いので、コンビニ店員の女の子が微笑んでくれるだけで、恋に落ちそうになります。

すべてが非日常の中で、同じ1時間とは思えないくらい充実した時間になります。

ただそれは、待っていたのでは何も手に入りません。海外に出て、成長をしたいと思うなら踏み出す勇気が必要です。気になるお店には、勇気を出して入ってみる。話しかけられたらなんとか会話しようとする。マラソン中はみんなに声をかける。

旅の恥はかき捨てと言いますが、日本人として恥ずかしくない行動を心掛けながら、個人としてはどんどん恥をかいていくスタイル。笑顔と困った顔のふたつで、だいたいなんとかなるものです。

恥をかきたくないとなると、旅は体験しか与えてくれません。もちろん旅に成長を求めている人は、10代から20代のごく一部なのでしょうが。90%以上の人は、非日常の空間に触れることができたら満足で、その先に踏み込むつもりがありません。

そういう人に「旅は成長になる」と言っても、本質的な部分が伝わらないことくらい知っています。成長できるのはリスクを負うからであり、リスクを回避していたのでは、自宅のコタツで温々しているのと何も変わりません。ただ、リスクをどれくらい嫌うかは人それぞれ。わたしだってブラジルのスラムには足を踏み入れるつもりはありませんから。

仮にそこにダイヤモンドが埋まっていたとしても、安易に飛び込まない。危険と安全の境界線を見極める。

ただ、それだって経験しないとわからないわけです。そこに危険があるかどうかを感じならが前に進む。無理だと思ったらすぐに身を引く。これも成長のひとつです。ただ、実生活でどこまで役に立つかはわかりませんが。

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旅は自分を取り戻す行為でもある

初めて海外に出てから25年以上が経過して、台北や北京に関しては東京に行くのとそれほど変わりない感覚になっています。言葉が通じないことに物怖じしなくなっていますし、人に頼ることも上手くなりました。

でも、パスポートを持って空港に向かうたびに、初めて海外に行ったときの匂いを思い出します。そして飛行機に乗ってしまえば、気持ちは10代に戻ります。普段から年齢は気にしないほうですが、海外に行くと年齢という概念がきれいになくなります。

年甲斐もなくはしゃぐこともありますし、スイーツ女子が行くようなカフェでキーボードを打っていたり、大学の構内で青春の空気を肺に取り込んだり。冷静に考えたら44歳のおっさんが何をしているのだと思うようなことでも、海外ならできてしまいます。

恥を知れと言われそうですが、そうやって普段の自分ではない自分を引き出すことは、表現者としてとても重要なことです。大人になるとわたしたちは、なぜか自分という枠の外に出なくなります。自分はこういう人間なのだと決めつけて、変化をしなくなる。

わたしはそんな自分にはなりたくない。

常に変わってこその人生だろうと思います。作っては壊しての繰り返し。それを諦めるのが大人になることかもしれませんが、1年に数回はいつもワクワクしていたあの時代を取り戻してもいいのではないでしょうか。

そのために旅をする……と言ったら笑われるかもしれませんが、子どもの心はいつまでも忘れないでいたほうがいい。少なくともクリエイティブな仕事を続けたいのであれば。

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