万里の長城マラソン2017PV撮影の中国旅(その3)

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中国の西の端。隣はカザフスタンとキルギスとタジキスタン。わたしが持つ新疆ウイグルの知識はその程度のもの。自治区なので、自治権はあるらしく烏魯木斉の街ではなぜかポケモンができる。

もっともポケモンをやっている人なんて1人も見かけなかったが、わたしのスマホにはまぎれもなくポケモンが現れていた。しかも日本でレアと呼ばれるポケモンが次々と。

ただこの自治区で暮らすのはポケモンではなくウイグル族。その他の民族として漢族、カザフ族、キルギス族、モンゴル族で、ちょっとほかの地域とは雰囲気が違っている。

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面白いことに北京と3000kmも離れているのに時差はない。ただし非公式に新疆時間というものがあるらしく、2時間ほど北京よりすべてが遅く始まり、遅く終わる。

新疆で日が沈んで暗くなるのは北京時間の8時過ぎ。

そんな新疆に降り立ったのは北京時間の午前6時前になるので、実質4時前なのだけれども駅前にはすでに人が集まり、タクシーやら宿の斡旋を始めていました。

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早速撮影に・・・といきたいところですが、40時間の列車の旅のあとなので駅前のホテルで小休憩。汗を流さえてもらう。中国に何度も行っていると、どんなシャワーやトイレでも適応できるようになっていく。

このホテルのトイレもシャワーも決してきれいではないが、きちんと機能しているので何の問題もない。

実はこのホテル、中国人しか利用できないそうだが、新疆はそういう少し緩いところがあるのを、わたしはこの日、これでもかというほど味わうことになる。「まあ、いいんじゃないか」何をするにしても臨機応変というか、柳のようにしなやかな人たちが新疆で暮らしている。

謝菲のメイクも終えて、わたしたちが撮影に向かったのは観光用に作られたバザール。新疆らしい景色で撮影できるらしいとのこと。

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カザフ族のカメラマン2人の車に乗り込んで新疆の街を進む。中国語とアラビア文字で書かれたウイグル語が併記された町並み。ここが中国の中でも普通じゃない場所だということが伝わってくる。

ちなみにアラビア文字ではあるけどアラビア語ではないそうだ。どちらにしても読めないのでかまわない。

バザールに到着し、中には入ろうとしたそのとき事件は起きた。いや事件は起きかけた。謝菲のiPhoneがひったくられそうになる。さすがスポーツエリートの謝菲はiPhoneをしっかり握って手放さなかったため難を逃れたが、安全面でもここは北京とは違うのだということを、いきなり思い知らされることになった。

一息ついてさて撮影開始となったところで、いきなり警備員登場。もしや許可をとってなかったのか?そんな不安が脳裏をよぎったが、警備員が言ったのはこういうことらしい。

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「明日から杭州でG20サミットがあるから、全国的に警備を強化している。撮影は認められない」

サミットがなければ勝手に撮影するのは問題ないのか・・・

次に向かったのはちょっと大きなショッピングビルの前。ここでも撮影を開始するもののやはり途中で止められる。ただしここで止められたのは、G20とは関係なく人が集まり過ぎているから。

そりゃそうだろう、新疆のど真ん中、烏魯木斉の街でいきなり漢族の美人さんが新体操を始めるのだから、みんな興味津々で集まってくる。

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止められながらも、もう1か所で撮影をして烏魯木斉の市街地での撮影は終了。街の中なのでわたしの出番はなし。

ここから郊外に移動するのだが、移動する前に腹ごしらえということで、新疆で最も美味しいとされている拉条子(ラグマン)のお店に連れて行ってもらった。

はっきり言うが、これを食べずに人生を終える人たちがいることを心から可哀想だと思う。

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簡単にいえばラーメンなのだけれども、トマトベースのスープということもあってパスタのようでもある。麺もラーメンというよりはパスタに近い食感。わたしが世界一美味しいと評価している、北京にある雲南料理のお店の麺に似ている。

新疆のラグマンはその世界一美味しい麺と同等、もしかしたらそれ以上かもしれないくらいの美味しさ。日本でも食べることができるそうだが、料理とは何もそれ単品の味だけで美味しさが決まるわけではない。

いつどこで誰と食べるか、料理の美味しさはそうやって決まるもの。きっと日本で食べると「何か違う」となるのだろう。

麺類が苦手なわたしが、信じられないことにわたしはここで麺のおかわりをしてしまった。満腹になりすぎて次の撮影地まで深い眠りに落ちたこと言うまでもないが。

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目が覚めて到着した場所は、これまでに見たこともないような美しい景色に包まれた場所。ランナーなら思わず走りださずにはいられない。そんなただひたすらに美しい景色が広がっています。

謝菲の撮影を終えて、ようやくわたしの撮影の出番です。

いつもどおりに走ってみると、「もっと腕を振ってほしい」「上体をもっと上下に揺らせ」との指示。どうやらわたしの走り方は画にならないらしい。上体のブレもなく腕も振らない。見た目に速そうなのと実際に速いのとではまた違うというところか。

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いつもとは違うフォーム、そしていつもよりも荒れた路面。思わず足を軽く滑らせてしまったところでカメラマンからOKサイン。いいのか本当にこんなのでと思ったったものの、上手にカットすれば問題ないのだろう。

撮影で重要なのは本物ではなく、本物に見えるかどうかということ。

その後、背景を変えるために場所を移動させながら撮影し、最期にまっすぐな道路でわたしは走り去る場面を撮るとなったのだが、何を思ったか「車と併走させながら撮影する」との指示。

「ゆっくりね」と言われたので車を追い越さないように、スピードを抑えて走っていたのに、なぜか徐々にスピードを上げる運転手。最終的にはランニングというよりはダッシュをしているのに近いスピードに。まさか新疆でこんなトレーニングをさせられるとは思いもしなかったが、正直面白かった。

いまここでしか出来ない経験がそこにはあり、短い時間とはいえわたしは新疆の風になりました。

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そして無事初日の撮影を終えて、またしても電車移動がわたしたちを待っています。次は烏魯木斉から嘉峪関。約1100km14時間の旅。

しかしながら問題は列車に乗り込む前に発生してしまった。なんと烏魯木斉南駅の構内に入れない事態が発生。出発の45分前に駅に行ったにも関わらず、駅構内に入るための切符と身分証明書のチェック場所に長蛇の列ができたため、どうやっても出発時刻に間に合いそうにない。

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そこで切符を買い直すことになるのだが、もちろん行列には並ばなくてはいけない。それでもなんとか時間内に駅構内に入ったところで、驚愕の事実。わたしたちがそもそも乗るはずだった電車がまだ出発しておらず、しかもいつ出発するかその見通しすら立っていないらしい。

ケガの功名、不幸中の幸いとはこういうことを言うのだろう。しかも切符を変えたことでわたしたちは寝台車の切符を入手出来ている。

わたしはこの夜、日本を飛び立ってから初めて仰向けになって眠ることができた。日本を飛び立ってから68時間・・・おそらくわたしはこのとき世界で一番、仰向けで眠れることに感謝した男だったに違いない。

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