裸足の河童が飯能ベアフットマラソンを愛する理由

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体が壊れている。もしかしたら、そうなのかもしれない。そういう思いと、体は正しい方向に修正されているという思いがわたしの中で交錯する。腰を痛めたのがちょうど1週間前、ただし痛めたのか治ったのかはいまだにわからない。

ひとつだけはっきりしているのは、金曜日の段階で、フラットなロードを5㎞も走れなかったということ。

完走できない可能性がある。これを口に出してしまうと、それが現実となりそうな気がしたので、誰にもそれは告げなかった。誰かに話して良くなるのならまだいいが、誰かに話しても何も改善はしない。

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飯能ベアフットマラソンは走れて10㎞がいいところだろう。ただし、3周の周回のうち1周目と3周目は撮影しながらのランだから、本気で走るのは2周目のみ。たった7㎞ならなんとかなるはず。

そんな淡い期待は、スタート前に打ち砕かれる。

わたしの走りの生命線は体の背面の筋力だ。前々からわかってはいたのだが、ウルトラマラソンを走っても旅ランで100㎞以上を走っても、背中も腰も問題なかった。

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ところが、腰が弾けて以降、あっという間に背面の筋力が消耗してしまう。走りそのものは明らかに良くなっている。体全体にいいバネがあるし、何よりも立ち姿が美しい。自分で言うのもおかしな話だが、歩く姿もわたしの理想通り。

そして何よりも走っているときのキレがいい。山に入っても腰に負担がかかることなく、スイスイ上れていく。

ただし10㎞まで。

それ以降は背中全体が完全に張ってしまって、使い物にならなくなる。これがいまのわたしの体。嘘偽りのない、目をそらしたくなるような現状。

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おそらく背中が張ってしまう感覚がわからない人のほうが多いかもしれない。階段をアップダウンすると太ももがパンパンになると思うが、それと同じことがわたしの背中で起こっている。

これまで以上に動けるようになったのだが、それに筋力がついていかない。ママチャリに自動車のエンジンを積んだようなもの。一瞬にしてママチャリのフレームは崩壊していく。

本来なら、力をセーブすればいいのだが、いかんせんどれくらいセーブすれば安全なのかもわからない。今日は9㎞ほどゆっくりジョグをしてきたが、今の時点で肩甲骨周りの筋肉が限界スレスレにある。

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人間の体というのは本当に面白い。そうは思うものの、こんなタイミングでならなくてもいいじゃないかと、ランニングの神様に愚痴でもこぼしたくなる。そうは言っても走るのは自分自身。走りを止めるのも自分で決めるしかない。

体の不調を感じていたため、いつもはほとんどしないアップを念入りに行う。体の柔軟性と、背面の筋肉の確認。できることなら、背中に負担の掛からないフォームを探しながら黙々と体を温めていく。

だが、期待は不安に変わっていく。少しペースを上げただけで背面には明らかな違和感。

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そんな状態のまま、スタートの号砲に合わせて飛び出していく。いや飛び出しはしない。最後尾からデジカメとGoProを持ってののんびりスタート。念のためO.R.Sで作った経口補水液も500ml持っている。

気温が高い。湿度が低いため、こういうときには知らないうちに体内の水分が失われてしまう。

汗だくになるときはとても分かりやすい。湿度が低いと汗が流れる前に蒸発してしまう。こまめな水分補給をしないと、いつの間にか脱水状態になっていることがある。それだけは避けたかった。

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完走できない不安があるなら、準備できるところはすべて準備しておく。

1周目で背中に重さを感じるものの、とりあえず乗り切った。ほぼ最後尾に近い位置取り。本当の最後尾にいると、撮影のために何度も立ち止まることになる。それはスイーパーに迷惑がかかるので、意図的に少し前を走る。

そして2周目に入ったところで、すべての荷物を置いて一気に加速する。

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思った以上に体はキレている。自分の走りとは思えないようなスピードで、後方のランナーを抜いていく。これはもしかしたら、いい感じに走れるかもしれない。そう思ったのも4㎞くらいがいいところだろうか。

そこから一気に背面が動かなくなり、高速ランはあっという間に終了。

問題はそこからだった。もう歩くことすらまともにできない。足裏も痛いのだが、体が前に進まないつらさ。練習中に何度も味わったあの苦しみをあと10㎞近くも続けなくてはいけない。

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2周目に入るときに、リタイアしたほうがいいのではないかと思ったが、時間があるなら前に進めがマイルール。走っているのか歩いているのかわからないようなペースで一歩を踏み出す。

苦しいのは自分だけではない。

きっと背中が痛くて前に進めないのはわたしだけかもしれないが、他の人は足裏の痛みと向き合っている。

痛みをごまかしてなんとか走れそうな場所だけでも、足を前に出す。それを繰り返すと、背中に電気が流れて息ができなくなるのだが、そうでもしないとゴールは永遠に近づいてこない。

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1周目でリタイアするのが大人の判断だったのだろう。だがここに集まるのは、大人の判断なんてできない人ばかり。裸足でトレイルを走ろうなんていう人間がまともな大人のわけがない。もちろんわたしも含めてだが。

自分を奮い立たせるため、そして大会をもっと楽しんでもらうために、すれ違うすべてのランナーに声をかけていく。同じコースを走っているランナーはスピードに違いはあってもみんな仲間。

仲間が頑張っていると思えば、自分も頑張れない理由はどこにもない。

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ただ背中は動かない。どんどん周りに抜かれていく。でも焦る気持ちはどこにもない。むしろ、3時間を超えて、まだ足が動いている仲間たちに勇気をもらう。走れないなりに背中を追い続けようという気持ちが湧いてくる。

そして表彰式を終えて抽選会が始まっていた会場に、ようやくたどり着く。最後の芝生広場は歩いてのゴールになりそうだったが、会場に残ってくれている人たちの顔を見たらすべてを絞り出すという選択肢しか頭には思い浮かばない。

動画を撮影するのも忘れて、一気に下り坂で勢いをつけて、ハイタッチをしながらのゴール。

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感動はそこにはない。ようやく終わったという安堵感と背中の激痛。そして喉の渇きだけがわたしを覆っている。やるべきことをやりきって、そして多くの人の力を借りてのゴール。

これだけの人が支えてくれているのにゴールできないわけがないのだ。

一瞬でもリタイアを思い浮かべた自分を恥じる。裸足の河童が飯能ベアフットマラソンで、リタイアするわけにはいかない。ここは裸足の聖地である飯能だ。裸足ランナーであることを誇りに思える場所。

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そしてまた1年後、わたしはここに戻ってくるのだろう。

わたしなりに裸足で走ること、飯能ベアフットマラソンに出ることに対して様々な葛藤がある。わたしが裸足ランナーであり続ける理由がここにあり、裸足の楽しさを分かち合える人たちがここにいる。

飯能ベアフットマラソンを愛する理由としてはそれで十分だろう。

飯能ベアフットマラソンに参加した人の写真の一部をクラウドに保存しています。ピントが合っていないものが多かったためボツになったものが多かったのですが、参加した人はぜひ痛みを思い出しながら下記保存先をチェックしてください。

iCloud:https://www.icloud.com/sharedalbum/ja-jp/#B0wJRveFpJHmikj


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