松山にいるあいだにバスに乗る機会があり、実家から松山市駅までの約4kmの距離をバス移動しました。そのときのバス代がちょっとびっくりするような金額で、約4kmの距離を移動するのに380円もかかりました。わかりやすい比較になるかどうかわかりませんが、新宿から品川まで11.1kmのバス料金は210円です。
東京のバス代が安すぎるというのはありますが、地方ほど交通費が上がる傾向にあり、さらにバスの運転手が足りなくなっていて減便したというニュースも最近よく耳にします。ここまで金額が高くなると、バスを使って移動しようという人が少なくなります。
ただでさえ物価か上がっているのに、往復のバス代だけで760円、もう少し離れた場所だと往復で1,000円以上かかります。別に「高すぎるから安くすべき」だとか主張しているわけではありません。バス会社だって利益を出さないと継続できないわけで、今の金額が時代に合わせた金額というわけです。
一方で松山の町はゆっくりと若返りつつあります。駅から少し離れた場所でも小さくてかわいいお店ができていたり、美味しい飲食店も増えています。これからJR松山駅周辺の再開発も進むはずで、松山市駅前も利用しやすいようにテコ入れが始まります。
これはきっと他の地方都市も同じで、人口減少を食い止めるために、暮らしやすい街へと変化させていこうという、官民一体の動きがあるのだと思います。新しくお店を出すのに国からお金を借りやすくなっているとか、きっとそういう流れもあるのでしょう。
地方が魅力的になれば、東京へ向かう人が減る。これが理想の流れであり、賢い人たちが思い浮かべる「あるべき未来」なのでしょう。私は賢くはないので、それが正しいのかどうかはわかりませんが、個人的には焼け石に水なんじゃないかと思っています。
東京に人が流れるのは、そこに憧れがあるから。地方に人が残らないのは、そこに夢がないから。とてもシンプルな話です。さらに東京でしかできないことはあります。たとえばアイドルになったり、どんな形であれ有名人になったりしたいなら東京に行くのが正解です。
私が関東を離れられないのは、ランニングアイテムに関する取材はほぼ東京で行われるからで、松山で暮らしていたら新作発表会やイベントに参加するのが難しくなります。そして才能の多くが東京に集まり、そこで揉まれることで成長もしやすくなります。
ただし、それが人生において正解なのかどうかはわかりません。正解かどうかはわかりませんが、どこで暮らすにしても、与えられた環境で楽しめない人は、どこに行っても満足できないことだけはわかります。地方で面白おかしく生きられないなら、東京に行って人生が大逆転するなんてことはありません。
才能を眠らせてしまわないためには、東京で勝負する必要があります。だから東京一極集中は避けることができません。もしそれを改善できる方法があるとしたら、たとえば松山にハリウッドを作る必要があります。本当のハリウッドではなく、日本版のハリウッドを作る。
そうすれば映画や映像に関わる人は松山に集まります。他にもアパレルの街にするというのもありで、何らかの産業の中心地になるように街を作り変えることで、人の流れを劇的に変えることができます。ただそれにはお金がかかります。自治体が地元民を巻き込んで、かなり本気で取り組まないと実現することは不可能です。
そこにいなくてはいけない理由を作る。これが東京一極集中を改善するための方策のひとつ。暮らしやすい街にするとか、きれいにするとか、そういうことだけではもうこの大きな流れは止まらない。だから私たちはそれに抗うのではなく利用し、そしてその環境を自分なりに楽しむしかありません。