
周りからのイメージはどうなのかはわかりませんが、私は集団での「はじめまして」の環境が得意ではありません。たとえばランニング関係の取材に行ったときに、他のメディアの人やメーカーの人と親しく話をするようなことはなく、パーティーのような状況ではできるだけ目立たなくしています。
人見知りかというとそうでもなく、話しかけられてオドオドするようなこともないのですが、集団になったときに「その集団に馴染んでいる人」と思われたくないという感覚がどこかにあるのだと思います。私の基本スタンスは一匹狼であり、組織や集団が苦手というのもあります。
ただ、コミュニケーション能力が低いわけではありません。以前はコミュニケーションが苦手と思っていたのですが、いろいろな職場へアルバイトに出るようになってから、いわゆるコミュニケーションお化け何じゃないかと思うほど、どの職場に行ってもすぐに溶け込みます。
先日も農業のお手伝いで、ハウスの中でいちごの葉かきをしたのですが、それこそ「はじめまして」の段階で事務の方と普通に話をしていて、ハウスまで送迎してくれるスタッフの方とも早い段階で世間話をしていました。そのとき「あれ?自分ってこんな感じだっけ?」となったわけです。
無駄な話はほとんどせず、黙々と働くタイプですが、根っこの部分でおしゃべりが好きな関西人の一面が出てくるのかもしれません。他の職場でも同じように溶け込むのが早く、数回しか行っていない段階で、ずっと前からいる人みたいな関係になることも珍しくありません。
そうなるように意識しているわけではありませんが、隙あらば会話をするように心掛けています。会話というのは言葉のキャッチボールで、相手が言葉を投げ返してくれなくてはいけません。そのためにこちらの言葉を選ぶ必要がありますし、声の高さや表情、雰囲気などいろいろチューニングする必要があります。
いつもそれらを頭で考えて行っているのではなく、何も考えずにあたり前のようにそれらをしているというのが実際のところですが、それができるようになったのも、積極的に会話をしようとしてきたからでもあります。生まれ持ってコミュニケーションが得意な人もいますが、私はそうではないので、たくさんの会話で経験を積んできたわけです。
そんな私が最も大事にしているのが「挨拶」と「感謝の言葉」です。「おはようございます」はできる限り明るくはっきりと言い、感謝の言葉は気持ちをストレートに伝えます。どちらもとてもシンプルなことなのですが、日雇い派遣の世界ではできていな人のほうが多いのが現実。
そもそも日雇い派遣で働いている人は、社交的な人が少数派というのもあります。ほとんど人に共通したまじめさからやってくる暗さがあり、それが壁になっているように感じることが多々あります。仕事はまじめにすべきという思い込みが、彼らから明るさを奪っているのかもしれません。
だからこそ明るくハキハキと話をするだけで、他の人とは違うという印象を持ってもらえます。私の本質の部分は明るい人間ではありませんし、どちらかといえばまじめなタイプ。だからコミュニケーションが苦手な人の気持もわかります。でも、それってもったいないじゃないですか。
大人しく目立たないように生きれば大きな失敗をすることはありません。コミュニケーションにより信頼関係ができると、ちょっと大変な仕事を任されることもあるので、それが嫌な人には「言わぬが仏」なのかもしれません。でも私は信頼関係を築いて、大変な仕事を任される方が楽しわけです。
人生とは経験すること。何度も繰り返し言っていることですが、経験を積むには信頼関係の構築は必須。だからコミュニケーションを大切にしています。それでもやはり集団でいるときは、目立たないようにしていますけどね。そういうところで目立っていいことなんてひとつもありませんから。