この世界にはさまざまな人がいて、勉強ができる人もいればスポーツが得意な人もいます。それぞれ、得意なことがことなっていて、みんなで足りない部分を埋めるのが社会です。すべてを完璧にこなせる人はいませんし、何もできない人もいません。
ただ、自分にとっての居場所を見つけられない人もいます。たとえば私の場合には組織の中で、組織の一員として働くことができません。従順な社員を演じることはできますが、5年以上はどこかでボロがでてきます。実際には3年がいいところで、そこから徐々に居心地の悪さが大きくなります。
会社員に戻らないのは、自分でやりたいことがあるからというのもありますが、組織の中で活きるタイプではないと自覚をしているから。でもアルバイトを始めてみて、大抵の職場でそれなりに歓迎してもらえている現状を考えると、どんな仕事でも平均点以上にはできます。
反対にどうしても仕事に向かない人もいます。それはアルバイトをしていて気付いたことなのですが、複雑なことになると、どうしていいかわからなくなって手が止まってしまうタイプの人がいるということ。それがかなり深刻な状態になっている人もいます。
私が通っている職場のひとつに農園があるのですが、そこでは苗の葉かきという作業があります。ポットに入った苗の葉っぱを2枚にするだけの作業なのですが、これができない人がいます。そんなわけないだろうと思うかもしれませんが、私も最初はキツネかタヌキに騙されているのだと思いました。
1列になっている苗の置き場で、2人ペアで端から作業を進めていくのですが、私がペアになった人の作業に違和感がありました。ただ手は動いているので、そのまま作業を進めていき、お互いが近くなったところで、残りを私が進めることに。
ところがどこまでやっても、苗に葉っぱが3枚以上残っているんです。明らかにその人が担当したであろう場所になっても、葉っぱが3枚以上残っているどころか、明らかに手を付けていないポットも。ただ、作業をしやすいポットは葉かきがされていて、葉っぱやランナーが入り組んでいる部分がそのまま残っています。
ただ、そのままにしてあるのが1個や2個ではありません。9割以上がそのままで、それでいて作業も進んでいない。そうなると作業内容を理解していないか、どうしていいかわからなくなったかのどちらかで、とはいえ「葉を2枚にする」が理解できないとは思えないので、軽いパニック状態になったと考えるほうが自然です。
確かに「もう嫌だ!」ってなってもおかしくないくらい、ごちゃごちゃしている状態でしたが、本来は誰にでもできる仕事なので、作業が正しくできない理由にはなりません。でも、現実にできていない人がいるわけです。これは、ちょっと大変な状況です。
派遣で雇う人の中にはそういう人がいて、さまざまな職場でおかしな仕事をして回る。その結果、「派遣は……」となるので、日雇い派遣の立場はいつまで経っても弱いままです。そして何よりも、そういう仕事の仕方になってしまう人は、最終的には働ける場所がなくなります。
でも、そんな人でも生きていかなくてはいけないから、働かなくてはいけない。本当はそういう人でも、自分に合った働き方があるはずです。それこそライティングもありますし、在宅でできる仕事はいくらでもあります。ただ、どれもある程度のスキルが必要になります。
葉っぱを2枚にできない人に適した仕事がなんなのかはわかりませんが、少なくとも日雇い派遣で働く人の中にはそういう人がいる。そして受け入れる側は、それを前提に雇わなくてはいけない。いろいろ腑に落ちないところがありますが、これが現代の日本で起きている事実のひとつです。