睡眠で回復できない疲労:ポイント練習は週2回まで

ランナーに限らずアスリートにとって「リカバリー(回復)」というのは大きなテーマのひとつです。運動をすると消耗するように人間の体はできていて、消耗した状態のままトレーニングを行っても効果が低くなるだけでなく、ケガのリスクが上がります。

だからリカバリーを意識することになるのですが、それゆえリカバリーというのは大きなビジネスとなっています。リカバリーを促進するとされているサプリメントやドリンク、マッサージ、ウェアなどさまざまな種類のリカバリーサポートビジネスが展開されています。

これだけたくさんのリカバリービジネスがあるのには、大きな理由があります。それは「疲労」が何なのかがはっきりしていないことです。疲労とはどういう状態なのかを明確にできないから、それに対するアプローチも多様になっていきます。


たとえば昨日お伝えした、交代浴やサウナなどで水風呂に入るというのも、疲労回復のアプローチのひとつと認識されています。血流がよくなって、老廃物が流れ出しやすくなるとか、筋肉に酸素を沢山送れるようになるから、回復が早まるとされていますが、そもそも「疲労」が「よくわからないもの」なので、本当にリカバリーできるのかどうかはわかりません。

ただ、現時点で疲労に関してはっきりしていることがひとつだけあります。それは「寝ることで回復する」ということです。実際に私の知るアスリートの多くが、かなりの睡眠時間をとっており、人によっては1日12時間以上寝ることもあるようです。

この「寝る」ということに対して、その他のリカバリー方法はかなり効果が小さく、睡眠だけしっかりしておけば、それらのリカバリー方法に頼る必要はなくなります。でも現代人は仕事も忙しくて、やりたいこともたくさんあるから睡眠時間を確保できずに、さまざまなリカバリー方法に頼るわけです。


また、睡眠だけでは疲労が抜けないという人もいますが、基本的に睡眠でリカバリーできない疲労というのはオーバートレーニングになります。日本人は努力することが好きで、頑張れば頑張っただけ報われると信じている人が多数います。だからむちゃな練習をして、リカバリーが間に合わずケガをするわけです。

あるサブ3ランナーが、自己ベスト更新のためにポイント練習を2回から3回に増やすという話をしているのを聞いたのですが、これこそ努力至上主義の弊害そのもので、ポイント練習はどう考えても1週間に2回しかできません。正確には3日に1回しかできません。

このため、1週間に3回できる週もありますが、基本的には1ヶ月で10回が限度になります。それを超えて行うとなるとケガのリスクが大幅に上がります。その人がなぜ1週間に3回のポイント練習ができると判断したのかはわかりませんが、おそらくさまざまなリカバリー方法を使えば回復を早められると信じているのでしょう。


でも人間の体はそんなに都合良くできてはいません。どんなにしっかりリカバリーしても、ポイント練習のトレーニング効果を上げるためには中2日でスケジュールを組む必要があります。だからマラソンは体作りに3年かかると言われているわけです。

ランニングの疲労は基本的に睡眠でリカバリーする。睡眠でリカバリーできないほどトレーニングは積まない。これが基本です。そのうえでその他のリカバリー方法を追加するのは自由ですが、睡眠を軽視してその他のリカバリー方法で補うのはNGというか、そんなことはできません。

とはいえ、そういうのはケガをして走れなくならないと覚えないもの。ランニングでケガをしたところで命を落とすようなこともなく、むしろ走れなくなったほうが寿命が伸びるので、オーバートレーニングしている人にアドバイスしたりはしませんが、そろそろ理に適わない無謀なトレーニングはやめるべきなんじゃないかとは思っています。

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