手取り15万円:お金は人生の選択肢を増やすけれど

どれくらいのお金があれば、人間らしい生活を送れるのか。生活保護を基準に考えると、秦野市の場合は、1人暮らしで約11.5万円が最低生活費になります。人間らしい営みはできるけど、あれこれ楽しむ余裕のない金額が11.5万円ということになります。

ただしこのうち約4万円が家賃ですので、家賃を除いた生活費は約7.5万円という計算になります。なぜこんなことをいきなり言い出したのかというと、Xで「手取り15万円で生活できるか」というニュアンスの話題があり、噛み合わない議論が展開されていたのが面白かったから。

手取り15万円で暮らせる派と暮らせない派がいて、暮らせない派の人は暮らせる派の人に対して、「人間らしい暮らしができてない」「いざという時の貯金ができない」と主張します。そして暮らせる派の中には毎月5万円貯金できるし、毎日楽しいという人もいます。


この議論が噛み合わないのは、まず家賃が人によって大きく変わるからです。このブログを読んでくれている人であれば、家賃2万円で驚くことはないかと思いますが、暮らせない派の人からしたら、家賃2万円の普通のアパートがあるという現実を知りません。

もちろん家賃2万円のアパートはタワマンの最上階とは快適さも見える景色も違います。でも、隙間風が入ってくることもなく、ネズミや害虫に悩まされることもありません。私はこれまで、さまざまな物件で暮らしてきましたが、今の家賃2万円のアパートが他の物件より格段に劣るなんてことはありません。

手取り15万円で家賃が2万円、もしくは手取り15万円で家賃が7万円。これでは金銭的な余裕がまったく違います。だから、こういう議論をするときは「手取り−家賃が10万円で人間らしい生活を送れるか」みたいな話にしないと、議論が噛み合うことはありません。


そして「人間らしい暮らし」というのも人それぞれで、友人と盃を交わすことを人生の楽しみとしている人もいれば、お気に入りの作家さんの小説のページをめくることを喜びとしている人もいます。前者はただひたすらにお金が必要になりますが、後者は図書館という存在があります。

お金のかからない趣味というのはいくらでもあり、1ヶ月で1万円程度の出費で楽しめる趣味となると、それこそ無数にあります。お金がないからそれらの趣味を楽しむとなるとそれは「無理している」ことになりますが、本当に好きでやっているなら、それは人間らしい営みになります。

私のように働いているのが好きという人もいます。ランニングだってマラソン大会に出なければ1ヶ月で1万円もかかりません。年間予算を12万円とすれば、1年に1回シューズを買って、1〜2回ほどレースに出られます。他の趣味だって似たようなものです。旅行だけはお金がないとできませんが。


お金があればできることの幅は広がります。たとえば今日の夕ご飯に好きなものを食べられます。それは幸せなことで、羨ましくはなりますが、そうは言っても、食べたものなどすぐに忘れてしまいます。実際に1ヶ月前に何を食べたか覚えていない人がほとんどなはずです。

そして人生の豊かさや幸福度は、相対的な価値観であり、たくさんお金をかければ高まるというものではありません。外食を年1回しかしない家族にとってファミレスでの食事は贅沢であり、幸福度が上がりますが、毎日外食をしている人にとっては日常なので幸福度は上がりません。

貧乏を勧めるわけはありませんが、貧しいからこそ経験できることもあります。そして「人生とは経験すること」だという価値観からすれば、手取り15万円は多くもなく少なくもない金額です。少なくとも私はそれくらいの収入でやりくりしてきましたし、貧しいとは思いますが、面白おかしく生きています。

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