疲労と疲労感:疲労感を消してはいけない理由

マラソンランナーにとって大事なのは「トレーニング・食事・休養」の3つ。ここからさらに重要となる要素が細分化されていきますが、基本となる要素はこの3つしかありません。いいトレーニングをして、体に必要となる栄養とエネルギーを摂り、回復させるための睡眠時間を確保すれば、誰でも速く走れるようになります。

ただ、それぞれを分けて考えるのではなく、いずれもリンクさせる必要があります。筋肉に負荷がかかるトレーニングをしたらたんぱく質を多めに摂り、長い距離を走るトレーニングをするなら、事前に炭水化物を多めに摂るというように、広い視野で「いま何をすべきか」を考えて実行します。

以前も少し話をしましたが、トレーニングの負荷と睡眠の関係も重要です。ポイント練習を取り入れるのであれば、ポイント練習での負荷は、次のポイント練習までに全回復しているように調整しなくてはいけません。そのために十分な睡眠時間を確保できないなら、ポイント練習の負荷を軽くして、トレーニング効果が最大になるようにする。


場合によってはポイント練習翌日や翌々日に休みを入れても構いません。ポイント練習をしない場合も考え方は同じで、次の練習に疲労を残さないことが基本中の基本となります。もしくは1週間単位で全回復させるというのでも構いません。疲労を積み重ねないで、どこかでリセットさせることが大事です。

ここまでは「言われなくてもわかっている」範囲だと思います。実行できるかどうかは別として、休養の重要性もわかっているし、トレーニングも倒れるまで鍛えるなんて人はもう絶滅危惧種です。ただ、ここで問題なのは「疲労と疲労感を混同している人がいる」ということです。

それについては、何度もここで伝えていることなのですが、いまいち伝わっていないところがあるので、定期的に最新の情報にアップデートしつつ言語化していこうと思います。まずはっきりさせておきたいのが「疲労と疲労感は別物」だということです。


疲労を定義することは難しいのですが、ここでは「運動前と比べて、筋肉の出力が低下している状態」としましょう。これに対して疲労感は「疲れている」と感じる状態です。基本的には疲労があると疲労感が出てきます。ところが、疲労状態にあっても、脳を興奮状態もしくはリラックス状態にすることで、疲労を感じさせなくすることができます。

サッカーのワールドカップで、日本が初出場したときに中山雅史選手が骨折をしながらも点を取り、最後までピッチに立っていた話は有名ですが、このように人間は疲労や痛みをなかったものにできます。以前ここで書いたサウナやストレッチも同じで、それらをすることで、疲労していることを感じなくさせているだけです。

血行がよくなって回復が早まるみたいに考えている人もいるかも知れませんが、それらによって筋肉の出力が回復する時間が短くなるわけではありません。乳酸が減るなどの変化はありますが、決して元に戻っているわけではないのです。


でも痛みがないなら、疲労感がないなら、トレーニングを続けられるからいいじゃないかと考えた人もいますよね。トレーニングでケガをするのはそういう人たちです。疲労を感じていなくても、筋肉や腱は損傷しているわけです。そんな状態でトレーニングを積み重ねたらどうなるでしょう。

そうならないために大事なのは、疲労感を誤魔化さないということです。サウナやストレッチによって、疲労感を消してしまうのではなく、疲労感は疲労感として残しておくこと。そして疲れていると感じたなら、いつもよりも長く寝ること。これがオーバートレーニングによるケガを防ぐ方法です。

疲労感を消してトレーニングを積むというのは、「気合で乗り切れ」という根性論とほぼ変わりません。トレーニングはしっかり回復させてから積み重ねてください。正しい努力は報われますが、間違った努力は何も生み出さないどころか、自分を壊してしまうだけです。

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