アドバイスのフリをしたマウント:孤立していく理由

「自分なんかできたから、他の人もできる」SNSなどで時々見かける構文のひとつで、私もこのブログで時々使っています。できるだけハードルを下げたいときにとても便利な言葉で、たとえば「フルマラソンを裸足で走るなんて誰でもできる」を伝えたいときに、「私にできたんだから」と使います。

きっと、それを読んだ人の95%くらいは「いや、あんただからできたんだ」と反論するかと思います。それどころか「なんだ、ただの自慢か」と思われる可能性もあります。私も他の人がこの構文を使った文章を書いているときには、そう感じることが少なくないので。

アドバイスのフリをしたマウント。よく見かけるのが「月間走行距離は短いけどサブ3を達成した」というもの。言いたいことはわかります。月間走行距離だけがマラソンではありませんし、トレーニングは効率的にやるべきだとは私も同意します。でも、この文章には大きな勘違いがあります。


それは「サブ3の難易度は個人差がある」ということです。サブ3はとても難易度が高いチャレンジとされていますが、全員に等しく難しいわけではありません。それぞれ運動経験も違えば、筋肉の質も骨格も違います。そして何よりも、体重が違います。

この構文を使うときに大事なのは、本当はハードルが低いのに、難易度が高いと勘違いされているときに使うということです。本当にハードルが高い場合に使うと、アドバイスのフリをしたマウントになってしまいます。誰にでもできると見せかけて、自慢したいだけ。

そういう意味では裸足のフルマラソンというのも自慢のような気がしなくもないのですが、私がレクチャーして達成できなかった人はいないので、難易度はそこまで高くありません。もっともフルマラソンを走ったことのない人にとっては、ありえない次元の話なのかもしれませんが。


私が裸足でのフルマラソンを語るときには、基本的に裸足ランナーに向けて発信しています。間違ってもSNSで「誰でもできる」なんて書きません。なぜならSNSはオープンな世界であり、そのほとんどがランナーではないから。裸足で走ったことを報告することはあっても「誰にでもできる」とは言いません。

別に、アドバイスのフリをしたマウントを悪いとは思いません。でも、使い方を間違えれば、周りから人がいなくなります。マウントを取られて喜ぶのは犬くらいで、少なくとも人間はイラッとします。それでいて表面的には「そのとおりです」とか「素晴らしいです」と褒めてきます。

それが人間社会といえばそれまでですが、こういうケースでは、淡々と事象だけを書き綴るほうが健全です。自分のスペック(体重・身長・過去の競技歴など)や結果を出すためにやったこと。食事内容など、事実だけをまとめて公開すれば、その人はカリスマになれます。


同じことを語るにしても、伝え方によって受け取られ方がまったく変わってきます。だから「誰が言うか」と大事です。自信満々のひとがこの構文を使うと嫌味になり、誠実そうな人や自信なさげな人が言葉にすることで重みが出てきます。

ちなみに、練習量を減らしてフルマラソンでサブ3達成する方法はあります。でも、きっと多くの人が「これなら月間走行距離300kmのほうが楽」と言うはずです。それもせずに達成できる人もいます。でも、それこそ平均値よりもはるかに高いスペックを持った人だからこそできます。

「やればできる」と言っていた芸人さんがいましたが、正直なところ、かなり無責任な言葉だと思っています。もちろんお笑い的に「そんなわけないやろう」のツッコミ待ちの言葉ではありますが、それを言葉にするなら何をどうすればいいのか、具体的に説明しないと言葉が軽くなってしまいます。

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