マラソン大会にはゲストランナーが呼ばれることが多く、引退したトップランナーにとっては大切な仕事のひとつになっています。ゲストランナーとして呼ばれるかどうかで収入も変わってきますし、何よりもゲストランナーとしてどれくらい評価されているかがはっきりと出ます。
ネームバリューだけあって、その役割をきちんと果たしていない場合、翌年から呼ばれるかことはなくなります。ここでは過去の実績は関係ありません。ただ、現役時代に人気があった選手は、その当時からファンサービスをしっかりしていたり、心を掴むのが上手かったりするので、大抵の選手は人気のゲストランナーになります。
反対に現役時代に「速いけど華がない」とされている選手は、ゲストランナーとして呼ばれても存在すら気づかれないことも珍しくありません。一般のランナーにとって、自分たちの走っているマラソンと陸上競技としてのマラソンは別物で、陸上競技マニアでもない限り、トップランナーの名前も知りません。
そんなゲストランナーに呼ばれるのは、トップアスリートだけではありません。たとえば京都亀岡ハーフマラソンには、ももいろクローバーZの高城れにさんが参加しています。現役のアイドルが他のランナーと一緒に走り、2時間ちょっとでハーフマラソンを完走しています。
芸能人の場合、陸上選手よりも知名度が高く、それでいて華があります。もちろんファンサービスもお手のものです。そこにいるだけで、大会が明るくなるのですが、一緒に走るとなると沿道には多くの人がやってきますし、参加者も気持ちが上がります。
ただ、ランナーの目は厳しく、走れない芸能人ゲストランナーに対しては、冷ややかな目になってしまいます。そういう意味では、ゲストランナーになる芸能人にとってもリスクはあります。とくに高城れにさんのようなアイドルの場合、普段はファンに囲まれているわけで、マラソン大会は完全にアウェイ。
湘南国際マラソンもある俳優さんが走っていたようですが、その方は個人でエントリーされたとのこと。大会側に伝えれば、それこそゲストランナーになれるような方なのに、走ることを純粋に楽しみたかったのでしょう(決して高城れにさんが純粋に楽しんでいないという意味ではありません)。
ただ、マラソンを強みにすればいいのになと思う芸能人やアイドルはいます。とくに乃木坂46のようなグループアイドルは、どうしたって埋もれてしまう人が出てきます。そういう人が「走る」を武器にすれば一人勝ちできてしまいます。アイドルではないですが、井上咲楽さんがいい例です。
ランニングはどんな人でもやればやっただけ結果が出ます。だから大人数に埋もれてしまう人でも、走れる人になれば浮き上がることもできるし、アイドルを卒業してからもランニングタレントとしての道が残ります。走るのが苦手な人だって、フルマラソンくらいなら走れるようになりま(少なくとも私なら走れるように教えられます)」。
知名度のあるグループのメンバーだと、マラソン大会に出ることそのものが制約があるのかもしれません。芸能界には疎いので、ランニングを強みとすることが許されるのかどうかも知りません。ただ、もったいないとは思います。「乃木坂46の〇〇がホノルルマラソン完走」なんて最高のネットニュースになります。
そして、自分もやってみようとなるファンも出てくるわけで、むしろ日本陸連がそういうストーリーを描いてもいいような気がします。有名選手のゲストランナーで集まってくるのは陸上競技大好きなランナーだけです。もっと裾野を広げるために芸能事務所とコラボするのもありです。
実際に大阪マラソンは吉本興業の芸人さんを全面に押し出し、かつての勢いを取り戻した感があります。ゲストランナーなんて誰でもいいし、必要ないという人もいるようですが、マラソンブームが終わった今、初マラソンに挑む人を増やすのはとても大事なこと。その入口として、芸能人が走るというのは戦略的にはありだと思います。