物流倉庫の仕事:空気を読まずに空気を変える

アルバイトとはいえ物流の仕事に携わるようになって感じるのは、日本経済はかなり危ういバランスの上で成り立っているのだということ。少なくとも私が知ってる範囲ではどこも人手不足で、そこで働く人たちが苦労することで成り立っています。

だからインフルエンザやコロナが流行して、スタッフが働けなくなると簡単に破綻しそうになります。一部の物流会社では、それをパワーで乗り切ろうとします。そのような職場ではパワハラのようなことが普通に行われていますが、私はそれを必要悪だと思っています。

なぜなら、そうしないと回らないから。ただ、そういう職場には人が定着しないので、結果的に自分の首を自分で締めることにはなります。パワハラは効果は得られやすいけど劇薬だから、大手物流会社の中には「パワハラ撲滅」を掲げている職場もあります。


私がアルバイトしているのも、パワハラをなくそうと努力し、それがすでに定着しているので基本的に怒号が響いたりはしません。基本的にというのは、限界近くまで追い込まれたときに、人間というのは本性を隠しきれなくなるためです。

怒鳴っても仕方ないのに怒鳴ってしまったり、言い方がキツくなったりするのが人間。そして年末のとんでもない量の物流が目の前にあると、賽の河原での石積みのような終わらない仕事に対してイライラします。でも、パワハラはできないからストレスを溜め込み、職場の空気が澱んでいきます。

これを乗り切る方法は2つしかなく、ひとつはパワーで押し切るという方法。ただ、これは時代にそぐわないとされていて、その場しのぎの方法でしかありません。もうひとつは、笑いを起こすということ。これはなかなか難易度が高い方法です。

すでに空気が澱んでいるわけで、そこで空気感を変えられるなんてM-1王者でもない限り無理かもしれません。でも、それは空気が悪くなった職場の生命線みたいなもので、誰かがやらなくてはいけません。そして、それをやりやすいのが派遣社員です。

内部の人間はお互いに好き嫌いがあったりして、冗談を言っても笑う人もいれば、余計にストレスを溜める人もいます。派遣社員であれば「外の人」だから、それを気にする必要はありません。周りを気にせず、どんどんチャレンジできます。なので私はその役を買って出ることもあります。

あえて空気を読まずに、それでいてみんながクスッとなるような言葉を発する。それだけで、少しだけ空気が緩みます。この方法のいいところは、自分という存在を売り込めるということです。しかも誰とも利害関係がないから、みんなと仲良くなれるわけです。


それでも、根本的な解決にはなりません。物流はすでにパンク状態にあり、そこを改善しないことにはいつか破綻します。仕分けをするのも素人が見様見真似でやるから、荷物の破損リスクが上がります。それでいて時給は最底辺だったりします。

確かに作業だけを見れば「力さえあれば誰にでもできる仕事」。でも、世の中にはもっと楽な仕事がたくさんあります。ほぼ立っているだけで時給1,500円なんていうのも(それはそれで苦痛ですが)。当然ながら人は易い方に流れます。これを変えるには物流の給料を上げるしかありません。

ただそれは物流だけの話ではなく、介護なども同じ。きついのに給料が安く「誰にでもできる」なんて思われがち。人は報われないとモチベーションを保てません。私の場合、「報われる」が他の人と違うから、楽しく働いていますが、睡眠不足だけはなんとかしないいけません。疲れていては空気を変えるひと言も言えませんので。

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